マネージャーホストに登録するエージェントホストの情報として,次のことについて検討してください。
(1) 実行エージェント名と実行ホスト名の割り当て
マネージャーホストに登録するエージェントホストの情報として,エージェントホストの論理的な名称である実行エージェント名と物理的な実行ホスト名を登録します。1実行エージェントに対して1台の実行ホストを割り当てます。1台のマネージャーホストに登録できる実行エージェントの数は,最大で1,024です。
ジョブやジョブネットには,実行先として実行エージェント名を定義します。マネージャーホストは,登録されている実行エージェント情報を参照し,ジョブやジョブネットに定義された実行エージェント名に対応する実行ホストにジョブを配信します。これによって,業務の拡大・縮小によるエージェントホストの構成変更などの場合に,ジョブやジョブネットの定義を変更することなく,マネージャーホストに登録されている実行エージェントの情報を変更するだけでJP1/AJS3の運用を継続できます。
(2) ジョブの実行多重度
ジョブ実行先となるエージェントホストのリソースに応じて,同時実行ジョブ数(ジョブ実行多重度)を制限できます。ジョブ実行多重度で同時実行数を制限できるジョブ種別は,UNIXジョブ,PCジョブ,アクションジョブ,カスタムジョブ,および引き継ぎ情報設定ジョブです。
ジョブ実行多重度は,時間帯(30分単位)を指定して設定できます。デフォルトでは,「00:00-00:00=5」(終日,ジョブ実行多重度5)が設定されています。
例えば,「08:00-17:30=5」と指定した場合,8:00~17:30の間は五つまでジョブを同時に実行できます。このように,時間帯によってジョブの実行多重度を増減させることで負荷を分散させることもできます。
なお,ジョブの実行数がジョブ実行多重度を超えた場合,ジョブはマネージャーホストに滞留します。
(3) デフォルト実行エージェントについて
マネージャーホストには,自ホストをエージェントホストとしたエージェント情報がデフォルトで定義されています。このエージェントをデフォルト実行エージェントといいます。
デフォルト実行エージェントとして定義されている内容を次に示します。
表2-20 デフォルト実行エージェントとして定義されている内容
項番 | 項目 | 設定値 |
---|---|---|
1 | 実行エージェント名 | @SYSTEM |
2 | 実行ホスト名 | マネージャーホスト名 |
3 | ジョブ実行多重度 | 5(00:00-00:00=5) |
4 | 受付配信制限 | ジョブを受け付け,実行ホストに配信する。 |
マネージャーホストでジョブを実行したい場合は,このデフォルト実行エージェントを使用してジョブを実行できます。また,ジョブやジョブネットの定義で実行エージェントの指定を省略した場合も,このデフォルト実行エージェントでジョブが実行されます。
デフォルト実行エージェントの定義内容を変更する場合は,ajsagtaltコマンドを使用します。ajsagtaltコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス1 2. コマンド ajsagtalt」を参照してください。
(4) 実行エージェントの追加について
セットアップ直後は,マネージャーホストにデフォルトの実行エージェントが作成されただけの状態であるため,ジョブを実行させるエージェントホスト分の実行エージェントを追加する必要があります。
実行エージェントは,ajsagtaddコマンドを使用して追加します。また,複数の実行エージェントを一括して追加することもできます。実行エージェントの追加方法については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド1 4.1 実行エージェントの設定」を参照してください。複数の実行エージェントを一括して追加する場合は,「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス1 2. コマンド ajsagtadd」の-fオプションの説明を参照してください。
(5) エージェント自動定義機能について
エージェント自動定義機能を有効にすると,ジョブの詳細定義で指定した実行エージェント名と同名の実行エージェント(実行エージェント名と実行ホスト名の割り当ての定義)が自動的にマネージャーホストに追加されます。
エージェント自動定義機能の設定については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド2 2.3 ジョブ実行環境設定」を参照してください。
(6) 実行エージェント制限について
実行エージェント制限を使用すると,ユニットごとに,ジョブの実行を許可する実行エージェントを設定できます。
実行を許可する実行エージェントを,実行エージェントプロファイルという運用プロファイルに設定しておくことで,誤った実行エージェントでジョブが実行されるのを防ぐことができます。
実行エージェントプロファイルの設定手順については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド1 4.3.1 実行エージェントプロファイルの設定手順」(Windowsの場合)またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド1 14.3.1 実行エージェントプロファイルの設定手順」(UNIXの場合)を参照してください。
(a) 実行エージェント制限の概要
実行エージェントプロファイルを有効に設定している場合,ジョブの詳細定義で指定した実行エージェントが実行エージェントプロファイルに設定されているかどうか,次のタイミングで確認されます。
実行エージェントプロファイルに設定していない実行エージェントを指定していた場合,定義エラーまたはジョブ実行時に「起動失敗」状態になります。
実行エージェント制限を使用した例を,次の図に示します。
図2-27 実行エージェント制限の使用例
この図の例では,ジョブネットnet1配下のジョブの実行を許可する実行エージェントとしてAGT1を,ジョブネットnet2配下のジョブの実行を許可する実行エージェントとしてAGT2を,実行エージェントプロファイルに設定しています。/net1/job1および/net2/job1は,許可されている実行エージェントを指定しているため実行されます。/net1/job2は,許可されていない実行エージェントAGT2を指定しているため,ジョブの実行が抑止されます。/net2/job2は,実行エージェントを省略したことによって,マネージャーホスト上(デフォルト実行エージェント)でジョブを実行しようとするため,ジョブの実行が抑止されます。ユニット定義時に実行エージェントを省略し,マネージャーホスト上でジョブを実行させたい場合は,デフォルト実行エージェント名を実行エージェントプロファイルに設定する必要があります。
なお,実行エージェントプロファイルに設定していないユニットについては,実行エージェント制限の確認は行われません。
●対象ユニット
ユニットの詳細定義で指定した実行エージェントが,実行エージェントプロファイルに設定されているかどうか確認されるように設定できるユニットは,次のとおりです。
●実行エージェントの確認方法
実行エージェント制限では,JP1/AJS3 - Viewでのユニット定義時,ajschkdefコマンドでの定義内容の事前チェック時,およびジョブ実行時に,実行エージェントの確認が実施されます。
それぞれの場合での確認方法について,次に説明します。
(b) 許可する実行エージェント
実行エージェントプロファイルに複数の階層でユニットを指定する場合,下位ユニットで指定する実行エージェントは,上位のすべてのユニットで許可されている必要があります。
実行エージェントプロファイルの設定と,許可する実行エージェントの関係を,次の図に示します。
図2-28 実行エージェントプロファイルの設定と許可する実行エージェント
この図の例では,ジョブAはスケジューラーサービス,ルートジョブネットA,およびネストジョブネットAのすべてで許可している実行エージェントAG1でだけ実行できます。ジョブDは,上位のユニットすべてで許可している実行エージェントがないため,定義およびジョブの実行ができません。このような記載をした実行エージェントプロファイルは,実行エージェント制限を有効にしようとした時に構文エラーとして扱われます。
なお,複数の階層のユニットに許可する実行エージェントを設定する場合,実行エージェントの確認処理による業務への影響を抑えるために,次の階層までの設定にすることを推奨します。
●自ホストでの実行を許可する場合
「@SYSTEM」を設定します。ただし,自ホスト名と同じ名前の実行エージェントを許可したいときは,その実行エージェント名を設定します。
キューレスジョブで自ホストでの実行を許可したいときは,自ホスト名を設定します。ここでいう自ホスト名とは,次の方法で確認できる名前です。
●ユニットの実行エージェントに実行エージェントグループを指定する場合
ユニットの実行エージェントに実行エージェントグループを指定する場合,実行エージェントプロファイルに,実行を許可する実行エージェントグループ名を設定します。
実行エージェントプロファイルに実行エージェントグループを設定した場合の例を次の図に示します。
図2-29 実行エージェントプロファイルに実行エージェントグループを設定した場合
この図の例では,/Grp1/net1/配下のジョブの実行エージェントに,「AGTGRP1」を指定したときと「AGT1」を指定したときでは,どちらも実際の実行先は実行エージェントAGT1(実行ホストhost1)です。ただし,実行エージェントプロファイルには「AGT1」が設定されていないため,ジョブの実行エージェントに「AGT1」を指定した場合は実行エージェントの確認でエラーになります。
●ユニットの実行エージェントにマクロ変数名を指定する場合
ユニットの実行エージェントにマクロ変数名を指定する場合,実行エージェント制限を確認するタイミングの設定に従って,許可する実行先として実行エージェントプロファイルに実行エージェント名またはマクロ変数名を設定します。
マクロ変数名を指定する場合に実行エージェントプロファイルに設定する内容を,次の表に示します。
表2-21 マクロ変数名を指定する場合の実行エージェントプロファイルの設定
項番 | ユニット定義時の制限確認(View) | ジョブ実行時の制限確認(JobExec) | 定義または実行を 許可する実行先 |
---|---|---|---|
1 | しない(off) | する(on) | 実行エージェント名 |
2 | する(on) | しない(off) | マクロ変数名 |
3 | する(on) | する(on) |
|
なお,項番1または項番2の組み合わせで,実行エージェントプロファイルを設定することを推奨します。
●キューレスジョブの場合
キューレスジョブに対して実行エージェント制限を使用する場合,実行エージェントプロファイルには,キューレスジョブの実行先となるホスト名を設定します。
(c) 注意事項