JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編)
JP1/AJS2 - ManagerからJP1/AJS3 - Managerにバージョンアップした場合は,ディスク使用量やメモリー使用量が増加するため,バージョンアップインストールおよびデータ移行作業の前に適切な見積もりが必要です。
また,データ移行作業が完了するまではJP1/AJS3 - Managerの運用を開始できません。データ移行作業には,データ量などに応じた時間が必要になるため,計画的にバージョンアップインストールおよびデータ移行作業を実施してください。
移行作業を実施する際は,物理ホスト,論理ホストの順に実施してください。
- <この節の構成>
- (1) 移行時の見積もり
- (2) 標準的なデータ移行手順
- (3) 高度な設定をする場合のデータ移行手順
- (4) jajs_migrateコマンドの再実行時の注意事項
- (5) 移行前の環境を削除する手順
- (6) 移行前と移行後のデータベース
- (7) バージョン8の組み込みDBから移行した場合のディスク占有量の見積もり
(1) 移行時の見積もり
移行時には一時ファイルを作成するため,移行前のスケジューラーサービスと同等の容量が必要です。移行時に作成された一時ファイルは,移行後に問題がないことを確認し,削除する必要があります。ファイルの格納場所については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス2 2. セットアップコマンド jajs_migrate」を参照してください。
また,移行後の環境について事前に見積もっておく必要があります。見積もりの詳細については,「3.2 システム性能を見積もる」を参照してください。
(2) 標準的なデータ移行手順
標準的なデータ移行作業の流れは次のとおりです。
図8-5 データ移行作業の流れ(標準)
標準的なデータ移行作業の手順を次に示します。
- 注意事項
- 論理ホスト環境は,この手順では移行できません。論理ホスト環境の移行手順については,「(3) 高度な設定をする場合のデータ移行手順」,およびマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド1 2.2.2 JP1/AJS3シリーズプログラムをインストールする」(Windowsの場合)またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド1 12.2.1 インストール時の注意事項」(UNIXの場合)を参照してください。
- JP1/AJS3サービスを停止する。
UNIX環境の場合,サービス停止後にajsshmdelコマンドを実行してください。
ajsshmdelコマンドのパスは,「/opt/jp1ajs2/bin/ajsshmdel」です。
実行例を次に示します。
shの場合
cshの場合
/opt/jp1ajs2/bin/ajsshmdel >/dev/null 2>&1
なお,UNIXの場合は,サービス停止後にajsshmdelコマンドを実行しないでjajs_migrateコマンドを実行すると,メッセージKAVS0549-Eが出力され,コマンドが異常終了します。
/opt/jp1ajs2/bin/ajsshmdel >&/dev/null
- jajs_migrateコマンドを実行する。
実行例を次に示します。
jajs_migrateコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス2 2. セットアップコマンド jajs_migrate」を参照してください。
jajs_migrate -convert -u 5
- 注意事項
- JP1/AJS3 - Managerをクラスタ構成で使用している場合は,すべての論理ホストに対してjajs_migrateコマンドを実行してください。
- 移行前のスケジューラーデータベースに組み込みDBを使用している場合は,環境変数の設定が必要です。詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス2 2. セットアップコマンド jajs_migrate」の注意事項を参照してください。
- jajs_migrateコマンドの正常終了後,警告メッセージが出力されていないか確認してください。警告メッセージが出力されている場合は,出力メッセージの対処方法に従ってください。
- JP1/AJS3サービスを起動する。
(3) 高度な設定をする場合のデータ移行手順
高度な設定をする場合のデータ移行作業の流れは次のとおりです。
図8-6 データ移行作業の流れ(高度な設定)
高度な設定をする場合のデータ移行作業の手順を次に示します。
- JP1/AJS3サービスを停止する。
UNIX環境の場合,サービス停止後にajsshmdelコマンドを実行してください。ajsshmdelコマンドのパスは,「/opt/jp1ajs2/bin/ajsshmdel」です。
実行例を次に示します。
shの場合
cshの場合
/opt/jp1ajs2/bin/ajsshmdel >/dev/null 2>&1
なお,UNIXの場合は,サービス停止後にajsshmdelコマンドを実行しないでjajs_migrateコマンドを実行すると,メッセージKAVS0549-Eが出力され,コマンドが異常終了します。
/opt/jp1ajs2/bin/ajsshmdel >&/dev/null
- ajscnvdbexportコマンドを実行し,データベース情報を退避する。
実行例を次に示します。
移行前の組み込みDBに対して操作するため,移行前のデータベースに組み込みDBを使用している場合は,次の環境変数に設定を追加してからコマンドを実行してください。
ajscnvdbexport -F AJSROOT1 -b D:\workdir
- HP-UXの場合
- SHLIB_PATH=移行前の組み込みDBのインストール先ディレクトリ/client/lib
- SolarisまたはLinuxの場合
- LD_LIBRARY_PATH=移行前の組み込みDBのインストール先ディレクトリ/client/lib
- AIXの場合
- LIBPATH=移行前の組み込みDBのインストール先ディレクトリ/client/lib
ajscnvdbexportコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス2 2. セットアップコマンド ajscnvdbexport」を参照してください。
- ajsembdbinstlコマンドを実行し,JP1/AJS3のデータベースをインストールする。
実行例を次に示します。
ajsembdbinstlコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス2 2. セットアップコマンド ajsembdbinstl」を参照してください。
ajsembdbinstl -s "C:\Program Files\HITACHI\JP1AJS2\tools\AJS3DB" -id _JF0
- 注意事項
- 論理ホストに組み込みDBをインストールする場合,ajsembdbinstlコマンドの-idオプションには「_JF1」以降の値を指定してください。
- ajsembdbbuildコマンドを実行し,データベース環境を構築する。
実行例を次に示します。
ajsembdbbuildコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス2 2. セットアップコマンド ajsembdbbuild」を参照してください。
ajsembdbbuild -s -d "D:\database\RDArea_JF0,D:\database\SYSArea_JF0" -p 22220 -i "C:\Program Files\HITACHI\JP1AJS2\embdb\_JF0" -id _JF0
- 注意事項
- UNIX版の場合,該当ホスト上に初めて構築するデータベース環境(ajsembdbbuildコマンドの-iオプション指定値)は,/opt/jp1ajs2/embdb/_JF0に構築してください。
- ajsembdbsetupコマンドを実行し,データベース環境をセットアップする。
実行例を次に示します。
ajsembdbsetupコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス2 2. セットアップコマンド ajsembdbsetup」を参照してください。
ajsembdbsetup -F AJSROOT1 -p 22220 -id _JF0 -ru s -convert
- ajscnvdbimportコマンドを実行し,データベース情報を移行する。
実行例を次に示します。
ajscnvdbimportコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス2 2. セットアップコマンド ajscnvdbimport」を参照してください。
ajscnvdbimport -F AJSROOT1 -b D:\workdir
- jajs_migrateコマンドを実行する。
実行例を次に示します。
jajs_migrateコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス2 2. セットアップコマンド jajs_migrate」を参照してください。
jajs_migrate -convert -S
- 注意事項
- JP1/AJS3 - Managerをクラスタ構成で使用している場合は,すべての論理ホストに対してjajs_migrateコマンドを実行してください。
- JP1/AJS3サービスを起動する。
(4) jajs_migrateコマンドの再実行時の注意事項
jajs_migrateコマンドを再実行する場合,次について注意が必要です。
- 各スケジューラーサービスのデータベースディレクトリにDBBKUPディレクトリが作成されます。ディレクトリ内にファイルが格納されている場合は,DBBKUPディレクトリの内容をデータベースディレクトリに配置してください。
- バージョン8で使用していた組み込みDBの状態をajsembdbstatusコマンドに-s ustを指定して確認し,STOP状態の場合はajsembdbstartコマンドでONLINE状態にしてください。
- 標準エラー出力に「KAVS0550-E JP1/AJS3の標準構成への移行処理でエラーが発生しました : jpoman_convert_to_multi 8」が出力され,jajs_migrateコマンドが異常終了した場合,次に示すディレクトリまたはファイルを削除してからjajs_migrateコマンドを再実行してください。
- Windowsの場合
- JP1/AJS2 - Managerのインストール先フォルダ\log\EV_Convert_Log.log
- JP1/AJS2 - Managerのインストール先フォルダ\tmp\EVaction_backup
- 共有フォルダ名\jp1ajs2\log\EV_Convert_Log.log
- 共有フォルダ名\jp1ajs2\tmp\EVaction_backup
- UNIXの場合
- /var/opt/jp1ajs2/log/EV_Convert_Log.log
- /var/opt/jp1ajs2/tmp/EVaction_backup
- 共有ディスク名/jp1ajs2/log/EV_Convert_Log.log
- 共有ディスク名/jp1ajs2/tmp/EVaction_backup
(5) 移行前の環境を削除する手順
移行前に組み込みDBまたはHiRDBをスケジューラーサービスのデータベースとして使用していた場合,移行完了後に必要に応じて削除する必要があります。各バージョンのマニュアルの手順に従ってデータベースをアンインストールしてください。
なお,UNIXの場合はajsembdbunsetコマンド実行したあとに次のコマンドを実行してください。
/opt/HiRDB_J/bin/pdesetup -u 組み込みDB運用ディレクトリ
(6) 移行前と移行後のデータベース
JP1/AJS3 - Managerが標準構成の場合,スケジューラーサービスのデータベースは組み込みDBに格納されます。
移行前にJP1/AJS2 - ManagerのスケジューラーサービスのデータベースとしてISAM,HiRDB,またはバージョン7のJP1/AJS2 - Managerで構築された組み込みDBを使用している場合,JP1/AJS3 - Managerのスケジューラーサービスのデータベースに移行すると,jajs_migrateコマンドが自動的に一つの組み込みDBに対して四つのスケジューラーサービスのデータを格納します。
移行前にバージョン8のJP1/AJS2 - Managerで構築された組み込みDBを使用している場合,JP1/AJS3 - Managerのスケジューラーサービスのデータベースに移行すると,一つの組み込みDBに対して複数のスケジューラーサービスのデータベースとして格納されている状態を引き継ぎます。
移行後のスケジューラーサービスのデータベースが格納される組み込みDBを変更したい場合は,「(3) 高度な設定をする場合のデータ移行手順」の手順を実行するか,またはjajs_migrateコマンドに-uオプションを指定して移行してください。
移行前と移行後のデータベースの構成例を次に示します。
(例1)移行前に単一のスケジューラーサービスで運用している場合
移行前 移行後 サービス名 DB種別 サービス名 セットアップ識別子 AJSROOT1 ISAM AJSROOT1 _JF0
(例2)移行前に複数のスケジューラーサービスで運用している場合
移行前 移行後 サービス名 DB種別 サービス名 セットアップ識別子 AJSROOT1 ISAM AJSROOT1 _JF0 AJSROOT2 ISAM AJSROOT2 AJSROOT3 ISAM AJSROOT3 AJSROOT4 ISAM AJSROOT4 AJSROOT5 ISAM AJSROOT5 _JF1 AJSROOT6 ISAM AJSROOT6 AJSROOT7 ISAM AJSROOT7
(例3)移行前に複数のスケジューラーサービスで運用している場合(ISAM,HiRDB,組み込みDB(V7)混在環境)
移行前 移行後 サービス名 DB種別 サービス名 セットアップ識別子 AJSROOT1 ISAM AJSROOT1 _JF0 AJSROOT2 HiRDB AJSROOT2 AJSROOT3 HiRDB AJSROOT3 AJSROOT4 組み込みDB(V7) AJSROOT4 AJSROOT5 組み込みDB(V7) AJSROOT5 _JF1 AJSROOT6 ISAM AJSROOT6 AJSROOT7 ISAM AJSROOT7
(例4)移行前に複数のスケジューラーサービスで運用している場合(ISAM,組み込みDB(V8)混在環境)
移行前 移行後 サービス名 DB種別 サービス名 セットアップ識別子 AJSROOT1 ISAM AJSROOT1 _JF1 AJSROOT2 組み込みDB(V8) _JAA AJSROOT2 _JF0
(例5)移行前に複数のスケジューラーサービスで運用している場合(ISAM,HiRDB,組み込みDB(V7),組み込みDB(V8)混在環境)
移行前 移行後 サービス名 DB種別 サービス名 セットアップ識別子 AJSROOT1 ISAM AJSROOT1 _JF2 AJSROOT2 組み込みDB(V8) _JA0 AJSROOT2 _JF0 AJSROOT3 HiRDB AJSROOT3 _JF2 AJSROOT4 組み込みDB(V8) _JA0 AJSROOT4 _JF0 AJSROOT5 組み込みDB(V7) AJSROOT5 _JF2 AJSROOT6 組み込みDB(V8) _JA1 AJSROOT6 _JF1 AJSROOT7 ISAM AJSROOT7 _JF2 AJSROOT8 組み込みDB(V7) AJSROOT8 _JF3 AJSROOT9 組み込みDB(V8) _JA1 AJSROOT9 _JF1 AJSROOTA ISAM AJSROOTA _JF3
(7) バージョン8の組み込みDBから移行した場合のディスク占有量の見積もり
バージョン8の組み込みDBから移行した場合,移行方法によって次のディスク占有量が必要となります。
(a) 標準的な移行
移行時には,次のディスク占有量が必要となります。
(50 + (490 + a))*↑b/c↑ + d(単位:メガバイト)
- a:jajs_migrateコマンドの-sオプションに指定した規模による変数
- データベースの規模によって,次のどれかの値を代入します。
- l:20,700
- m:4,200
- s:520(デフォルト値)
- b:スケジューラーサービス数
- c:jajs_migrateコマンドの-uオプションに指定した値(デフォルトは4)
- d:移行前のすべてのスケジューラーサービスのデータベースサイズ
- ISAMの場合:ISAMファイルの総サイズ
- 組み込みDBの場合:ajsembdbbuildコマンドに指定した規模による変数
データベースの規模によって,次のどれかの値を代入します。
-l:1,600(デフォルト値)
-m:800
-s:300
データベース領域を拡張している場合にはそのサイズも加算してください。
- HiRDBの場合:HiRDB簡易セットアップスクリプトで作成されるサイズ
ajshirdbsetupl:288
ajshirdbsetupm:72
ajshirdbsetups:18
ajshirdbsetupsfm1:288
データベース領域を拡張している場合にはそのサイズも加算してください。
- なお,dに代入する値の分だけ,jajs_migrateコマンドの-Tオプションで指定するディレクトリがあるディスクを占有します。移行完了後,運用時には不要な情報となりますので削除してください。
(b) 高度な設定を行った移行の場合
高度な設定を行った移行では,ajsembdbbuildコマンドを実行する際に,移行前のデータベース容量や運用によって規模を決定する必要があります。
一つの組み込みDB環境を構築する際に必要な容量については,「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド1 付録C 組み込みDBの高度なセットアップ」を参照してください。
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