4.2 対象システム,プロセスの決定と体制作り

JP1/IM - Service Supportを使って,サービスサポートに沿った運用を実施する場合,まず,どのシステムを対象とするか,また,どのプロセスを用いるかを決める必要があります。次に,各プロセスで,だれが,どのような作業をするのか,作業分担と作業の流れを決める必要があります。

なお,ステータスをカスタマイズすることで,運用に合わせた案件の処理ルートを作成することもできます。ステータスのカスタマイズについて検討する場合については,「4.3 案件のステータスの検討」を参照してください。

また,この節で説明しているステータスはデフォルトのものです。ステータスをカスタマイズする場合は,カスタマイズ後のステータスに置き換えてお読みください。

ここでは,JP1/IM - Service Supportを使って,あるシステムの運用を実施することを想定して説明します。実際にJP1/IM - Service Supportで環境を構築する際の参考にしてください。

まず,次の図に示すように,JP1/IM - Service Supportの管理対象となるシステムに対して,どのようなプロセスで案件を解決していくかを検討します。

図4-2 対象システムに対応するプロセスの検討

[図データ]

次に,案件の状況を確認する作業担当と,その作業内容を次の表に示すように細かく検討します。

表4-1 案件の状況を確認する作業担当,作業内容の検討

担当者作業内容作業内容詳細
情報システム管理者システムを横断した案件状況の確認と対策システムを横断して案件の状況を管理する。案件の滞留しているシステムの問題解決を図る。また,システム全体の状況を集計して評価し,運用を最適化する方法を検討する。
作業状況管理者案件の状況管理主に日程を管理するために,担当しているシステムでの案件の処理状況を確認する。問題のあるプロセスをフォローする。
対象システム管理者システム内の案件状況の確認と対策担当しているシステム内の各プロセスを管理する。案件の滞留しているプロセスの問題解決を図る。

また,各プロセス内での案件の処理の流れを作業担当,作業内容を含めて細かく検討します。

表4-2 各プロセス内の処理の流れ,作業担当,作業内容の検討

プロセス担当者作業内容作業内容詳細
(「 」はキーワード)
案件の
ステータス
インシデント管理インシデント担当者インシデント作成ユーザーからの問い合わせやシステム障害の発生を管理するため,インシデントを作成する。
インシデント管理プロセスの[案件作成]画面でインシデント案件を作成する。
受付
過去の事例検索,調査過去同様の事例がないか検索する。同様の事例がある場合「関連案件」の設定をする。
また,調査状況に合わせて案件を編集する。
調査中
エスカレーション長期の対策が必要な場合,問題管理へエスカレーションする。
担当者には問題管理担当者を設定する。
対応依頼中
インシデントの調査結果記入調査結果を「回避策」「解決策」に記入する。調査中
承認依頼インシデント管理者にインシデント内容について承認依頼を実施する。依頼内容を「フリー記入欄」に記入する。
担当者をインシデント管理者にして,ステータスを審議中に変更する。
審議中
インシデント管理者インシデントの承認インシデントの内容を確認する。
ステータスを承認済みにして,担当者をインシデント担当に変更する。
承認済み
インシデント担当者インシデントのクローズインシデント担当は,必要に応じて案件の作業履歴を確認し,問い合わせ者に随時報告する。
ステータスが承認済みとなった時点で,問い合わせ者に正式回答する。
「結果」を記入して案件をクローズする。
クローズ
問題管理問題管理担当者問題点作成システム障害,問い合わせなどから傾向を分析し,問題点を作成する。
問題管理プロセスの[案件作成]画面で問題点を作成する。
受付
調査作成した問題点,またはインシデント管理からエスカレーションされた問題点を調査する。
  • 必要に応じて過去の問題点を検索する。
  • 「機器情報」などのシステムの構成情報を参照する。
  • 障害調査時には,ログなどを添付資料として登録する。
上記の調査結果から「根本原因」「解決策」などを記入する。
調査中
承認依頼問題管理者に調査内容や解決策の承認依頼を実施する。
依頼内容を「フリー記入欄」に記入する。
担当者を問題管理者にして,ステータスを審議中に変更する。
審議中
問題管理者承認問題点の内容を確認する。
担当者を問題管理担当にして,ステータスを承認済みに変更する。
承認済み
問題管理担当者エスカレーション問題点に関連してシステム変更作業が必要な場合は,変更管理へエスカレーションする。
担当者には変更管理者を設定する。
対応依頼中
クローズ問題案件の最終的な結果を記入して,問題点のステータスをクローズに変更する(必要に応じてクローズの前に再度承認を依頼する)。クローズ
変更管理変更管理者変更点作成システム変更作業を変更点として作成する。
変更管理プロセスの[案件作成]画面で変更点を作成する。
受付
計画依頼作成した変更点,またはエスカレーションされてきた変更点の内容を確認する。
「フリー記入欄」に計画作成の旨記入し,担当者をCABメンバーに変更する。
受付
CABメンバー計画作成影響評価と変更計画を作成する。計画中
承認依頼担当者をCAB代表にして,ステータスを審議中に変更する。審議中
CAB代表承認変更計画の内容を確認し,必要に応じてCAB会議を開催する。
計画の合議が取れた時点で,変更点のステータスを承認済みに変更する。
承認済み
エスカレーションリリース管理に作業を依頼する場合は,リリース管理へエスカレーションする。
担当者にはリリース管理者を設定する。
対応依頼中
変更管理者レビューリリース完了から一定期間後,関係者を集めてレビューを実施する。レビュー中
クローズ結果を記入して変更点をクローズする。クローズ
リリース管理リリース管理者リリース案件作成リリース作業の案件を作成する。
リリース管理プロセスの[案件作成]画面で変更点を作成する。リリース計画策定のため「フリー記入欄」に依頼事項を記入する。
担当者をリリース担当者(計画立案者)に変更する。
受付
リリース担当者
(計画立案者)
計画作成リリース計画を作成する。計画中
承認依頼リリース計画の承認をもらうため担当者をリリース管理者にして,ステータスを審議中に変更する。審議中
リリース管理者承認計画の内容を確認する。担当者をリリース担当者(調達者)にして,ステータスを承認済みに変更する。承認済み
リリース担当者
(調達者)
ハードウェア,ソフトウェアの調達リリース案件の内容を確認し,必要となるソフトウェア,ハードウェアを調達する。
担当者をリリース担当者(実装チーム)に変更する。
承認済み
リリース担当者
(実装チーム)
リリース作業の実施,構成情報の更新依頼リリース作業を実施する。
「作業結果報告」に記入し,担当者を構成変更担当者に変更,対応を依頼する。
対応依頼中
構成変更担当者構成情報の更新「作業結果報告」に基づいて,構成情報を更新する。担当者をリリース管理者に変更する。承認済み
リリース管理者クローズリリース案件の作業内容を確認し,リリース案件をクローズする。クローズ

以上のような検討をした上で,各プロセスの,各作業で扱う情報を,管理が必要な項目(表4-2で出現したキーワードなど)として洗い出します。

次に,JP1/IM - Service Supportの設定項目と比較し,名称の変更や追加が必要な項目を整理します。

<この節の構成>
4.2.1 ユーザー,ロールの設計
4.2.2 対象システム,プロセスワークボードの設計
4.2.3 アクセス権の割り当ての設計