(1) インストールを始める前に
インストールおよびセットアップを開始する前に前提条件,必要な情報,および注意事項について説明します。
(a) 前提条件
PFM - Agent for Enterprise Applicationsをクラスタシステムで使用する場合,次に示す前提条件があります。
●クラスタシステム
次の条件が整っていることを確認してください。
●共有ディスク
次の条件が整っていることを確認してください。
●論理ホスト名,論理IPアドレス
次の条件が整っていることを確認してください。
(b) 論理ホスト運用するPFM - Agent for Enterprise Applicationsのセットアップに必要な情報
論理ホスト運用するPFM - Agent for Enterprise Applicationsをセットアップするには,通常のPFM - Agent for Enterprise Applicationsのセットアップで必要になる環境情報に加えて,次の表の情報が必要です。
表4-15 論理ホスト運用のPFM - Agent for Enterprise Applicationsのセットアップに必要な情報
項目 | 例 |
---|---|
論理ホスト名 | jp1-halr3 |
論理IPアドレス | 172.16.92.100 |
共有ディスク | /jp1 |
なお,一つの論理ホストで論理ホスト運用するPerformance Managementのプログラムが複数ある場合も,同じ共有ディスクのディレクトリを使用します。
共有ディスクに必要な容量については,「付録A システム見積もり」を参照してください。
(c) PFM - Agent for Enterprise Applicationsで論理ホストをフェールオーバーさせる場合の注意事項
PFM - Agent for Enterprise Applicationsを論理ホスト運用するシステム構成の場合,PFM - Agent for Enterprise Applicationsの障害によって論理ホスト全体をフェールオーバーさせるかどうかを検討してください。
PFM - Agent for Enterprise Applicationsの障害で論理ホスト全体をフェールオーバーさせると,PFM - Agent for Enterprise Applicationsが監視対象としている同じ論理ホストで運用する業務アプリケーションもフェールオーバーすることになり,業務に影響を与える可能性があります。
通常は,PFM - Agent for Enterprise Applicationsに異常が発生しても,SAPシステムの動作に影響がないように,次のどちらかのようにクラスタソフトで設定することをお勧めします。
(d) 論理ホスト運用時のバージョンアップに関する注意事項
論理ホスト運用のPFM - Agent for Enterprise Applicationsをバージョンアップする場合は,実行系ノードまたは待機系ノードのどちらか一方で,共有ディスクをオンラインにする必要があります。
(2) インストールから運用開始までの流れ
クラスタシステムで,論理ホスト運用するPFM - Agent for Enterprise Applicationsのインストールおよびセットアップの流れを次の図に示します。
図4-10 クラスタシステムで論理ホスト運用するPFM - Agent for Enterprise Applicationsのインストールおよびセットアップの流れ(UNIXの場合)
(3) インストール
実行系ノードおよび待機系ノードにPFM - Agent for Enterprise Applicationsをインストールします。
インストール先はローカルディスクです。共有ディスクにはインストールしないでください。
インストール手順は非クラスタシステムの場合と同じです。インストール手順については,「3.1.3 インストール手順」を参照してください。
(4) セットアップ
ここでは,クラスタシステムでPerformance Managementを運用するための,セットアップについて説明します。
(a) PFM - Agent for Enterprise Applicationsを登録する
Performance Managementシステムに,PFM - Agent for Enterprise Applicationsを追加する場合には,PFM - Agent for Enterprise Applicationsを登録するためのセットアップが必要です。
PFM - Managerのバージョンが08-50以降の場合,PFM - Agentの登録は自動で行われるため,ここで説明する手順は不要です。ただし,PFM - Managerのリリースノートに記載されていないデータモデルバージョンのPFM - Agentは手動で登録する必要があります。なお,PFM - Agent for Enterprise Applicationsのデータモデルのバージョンについては,「付録I バージョン互換」を参照してください。
PFM - Agent for Enterprise Applicationsの登録は,PFM - ManagerおよびPFM - Web Consoleで実施します。PFM - Agent for Enterprise Applicationsを登録する手順は非クラスタシステムの場合と同じです。手順については,「3.1.4(2) PFM - Agent for Enterprise Applicationsの登録」を参照してください。
(b) 実行系ノードの論理ホスト環境をセットアップする
実行系ノードで,PFM - Agent for Enterprise Applicationsの論理ホスト環境をセットアップします。
●共有ディスクをマウントする
共有ディスクがマウントされていることを確認します。共有ディスクがマウントされていない場合は,共有ディスクをマウントしてください。
●PFM - Agent for Enterprise Applicationsの論理ホスト環境をセットアップする
jpcconf ha setup(jpchasetup create)コマンドを実行して論理ホスト環境を作成します。コマンドを実行すると,共有ディスクに必要なデータがコピーされ,論理ホスト用の定義を設定して,論理ホスト環境が作成されます。
手順を次に示します。
jpcconf ha setup -key EAP -lhost jp1-halr3 -d /jp1(jpchasetup create agtm -lhost jp1-halr3 -d /jp1)
jpcconf ha list -key all(jpchasetup list)
●接続先PFM - Managerを設定する
jpcconf mgrhost define(jpcnshostname)コマンドを実行して,PFM - Agent for Enterprise Applicationsを管理するPFM - Managerを設定します。
jpcconf mgrhost define -host jp1-hal -lhost jp1-halr3(jpcnshostname -s jp1-hal -lhost jp1-halr3)
●インスタンス環境を設定する
jpcconf inst setup(jpcinssetup)コマンドを実行して,PFM - Agent for Enterprise Applicationsのインスタンス環境を設定します。
jpcconf inst setup -key EAP -lhost jp1-halr3 -inst o246bci_SD5_00(jpcinssetup agtm -lhost jp1-halr3 -inst o246bci_SD5_00)
●その他のPerformance Managementのプログラムの論理ホスト環境をセットアップする
PFM - Agent for Enterprise Applicationsのほかに,同じ論理ホストにセットアップするPFM - ManagerやPFM - Agentがある場合は,この段階でセットアップしてください。
セットアップ手順については,マニュアル「JP1/Performance Management 運用ガイド」の,クラスタシステムでの構築と運用について説明している章,または各PFM - Agentマニュアルの,クラスタシステムでの運用について説明している章を参照してください。
●ポート番号を設定する
ファイアウォールがあるネットワーク環境でPerformance Managementのプログラムを運用する場合だけに必要な設定です。ファイアウォール経由でPerformance Managementのプログラム間の通信をする場合には,jpcconf port(jpcnsconfig port)コマンドを使用してポート番号を設定します。
ポート番号の設定方法については,マニュアル「JP1/Performance Management 設計・構築ガイド」の,インストールとセットアップについて説明している章,およびクラスタシステムでの構築と運用について説明している章を参照してください。
●IPアドレスを設定する
複数のLANに接続されたネットワーク環境でPerformance Managementを運用するときに使用するIPアドレスを指定したい場合は,IPアドレスの設定をします。IPアドレスを設定したい場合は,jpchostsファイルの内容を直接編集します。
IPアドレスの設定方法については,マニュアル「JP1/Performance Management 設計・構築ガイド」のインストールとセットアップについて説明している章を参照してください。
●ログのファイルサイズ変更
Performance Managementの稼働状況を,Performance Management独自のログファイルに出力します。このログファイルを「共通メッセージログ」と呼びます。共通メッセージログは,デフォルトで2,048キロバイトのファイルが2個使用されます。このファイルサイズを変更したい場合にだけ,必要な設定です。
詳細については,マニュアル「JP1/Performance Management 設計・構築ガイド」の,インストールとセットアップについて説明している章を参照してください。
●パフォーマンスデータの格納先の変更
PFM - Agentで管理されるパフォーマンスデータを格納するデータベースの保存先,バックアップ先,エクスポート先,またはインポート先のディレクトリを変更したい場合にだけ必要な設定です。
設定方法については,「3.4.1 パフォーマンスデータの格納先の変更」を参照してください。
●動作ログ出力の設定
アラーム発生時に動作ログを出力したい場合に必要な設定です。動作ログとは,システム負荷などのしきい値オーバーに関するアラーム機能と連動して出力される履歴情報です。
設定方法については,「付録J 動作ログの出力」を参照してください。
●論理ホスト環境定義をエクスポートする
PFM - Agent for Enterprise Applicationsの論理ホスト環境が作成できたら,環境定義をファイルにエクスポートします。エクスポートでは,その論理ホストにセットアップされているPerformance Managementのプログラムの定義情報を一括してファイル出力します。同じ論理ホストにほかのPerformance Managementのプログラムをセットアップする場合は,セットアップが一とおり済んだあとにエクスポートしてください。
論理ホスト環境定義をエクスポートする手順を次に示します。
jpcconf ha export -f lhostexp.txt(jpchasetup export -f lhostexp.txt)
●論理ホスト環境定義ファイルを待機系ノードにコピーする
「4.3.4(4)(b) 実行系ノードの論理ホスト環境をセットアップする」の「● 論理ホスト環境定義をエクスポートする」でエクスポートした論理ホスト環境定義ファイルを,実行系ノードから待機系ノードにコピーします。
●共有ディスクをアンマウントする
ファイルシステムをアンマウントして,作業を終了します。なお,その共有ディスクを続けて使用する場合は,ファイルシステムをアンマウントする必要はありません。
(c) 待機系の論理ホスト環境をセットアップする
待機系ノードで,PFM - Agent for Enterprise Applicationsの論理ホスト環境をセットアップします。
●論理ホスト環境定義をインポートする
実行系ノードからコピーしたエクスポートファイルを,待機系ノードにインポートします。
実行系ノードで作成した論理ホストのPerformance Managementのプログラムを,待機系ノードで実行するための設定には,jpchasetup importコマンドを使用します。一つの論理ホストに複数のPerformance Managementのプログラムがセットアップされている場合は,一括してインポートされます。
なお,このコマンドを実行するときには,共有ディスクをマウントしておく必要はありません。
jpcconf ha import -f lhostexp.txt(jpchasetup import -f lhostexp.txt)
jpcconf ha list -key all(jpchasetup list all)
(d) クラスタソフトへ登録する
Performance Managementのプログラムを論理ホスト環境で運用する場合は,クラスタソフトに登録して,クラスタソフトからの制御でPerformance Managementのプログラムを起動したり停止したりするように環境設定します。
ここでは,PFM - Agent for Enterprise Applicationsをクラスタソフトに登録するときに設定する内容を説明します。
●クラスタソフトへPFM - Agent for Enterprise Applicationsを登録する
一般にUNIXのクラスタソフトに,アプリケーションを登録する場合に必要な項目は「起動」「停止」「動作監視」「強制停止」の四つがあります。
PFM - Agent for Enterprise Applicationsでの設定方法を次の表に示します。
表4-16 クラスタソフトに登録するPFM - Agent for Enterprise Applicationsの制御方法
項目 | 説明 |
---|---|
起動 | 次のコマンドを順に実行して,PFM - Agent for Enterprise Applicationsを起動する。 /opt/jp1pc/tools/jpcspm start(jpcstart) -key AH -lhost=論理ホスト名 |
停止 | 次のコマンドを順に実行して,PFM - Agent for Enterprise Applicationsを停止する。 /opt/jp1pc/tools/jpcspm stop -key EAP -lhost 論理ホスト名 inst インスタンス名(jpcstop agtm lhost=論理ホスト名 inst=インスタンス名) なお,障害などでサービスが停止しているときは,jpcspm stop(jpcstop)コマンドの戻り値が3になる。この場合はサービスが停止されているので,正常終了と扱う。戻り値で実行結果を判定するクラスタソフトの場合は,戻り値を0にするなどで対応すること。 |
動作監視 | 次のプロセスが動作していることを,psコマンドで確認する。 ps -ef | grep "プロセス名 論理ホスト名" | grep -v "grep 監視対象のプロセス" 監視対象のプロセスは,次のとおり。jpcagtm,agtm/jpcsto,jpcah プロセス名については,「付録D プロセス一覧」またはマニュアル「JP1/Performance Management リファレンス」を参照のこと。なお,運用中にメンテナンスなどでPerformance Managementを一時的に停止する場合を想定して,動作監視を抑止する方法(例えば,メンテナンス中のファイルがあると監視をしないなど)を用意しておくことをお勧めします。 |
強制停止 | 強制停止が必要な場合は,次のコマンドを実行する。 /opt/jp1pc/tools/jpcspm stop(jpcstop) -key all -lhost=論理ホスト名 -kill=immediate 第一引数のサービスキーに指定できるのは,allだけである。
|
(e) 起動・停止の確認
クラスタソフトからの操作で,Performance Managementのプログラムの起動および停止を各ノードで実行し,正常に動作することを確認してください。
(f) クラスタシステムでの環境を設定する
Performance Managementのプログラムのセットアップ終了後,PFM - Web Consoleから,運用に合わせて監視対象の稼働状況についてのレポートを表示できるようにしたり,監視対象で問題が発生したときにユーザーに通知できるようにしたりするために,Performance Managementのプログラムの環境を設定します。
Performance Managementのプログラムの環境の設定方法については,マニュアル「JP1/Performance Management 運用ガイド」の,クラスタシステムでの構築と運用について説明している章を参照してください。