1.3.3 パフォーマンス監視の例

<この項の構成>
(1) SAPシステムの応答時間
(2) SAPバッファの監視
(3) SAPメモリーの監視
(4) SAPシステムログ,CCMSアラートの監視

(1) SAPシステムの応答時間

SAPシステム全体のパフォーマンス傾向を確認するためにSAPシステムの応答時間を監視します。

(a) 応答時間に関連するレコードとフィールド

応答時間に関連するレコードとフィールドを次の表に示します。

表1-1 応答時間に関連するレコードとフィールド

使用レコード使用フィールド値の見方(例)
PIまたはPI_DIAResponseTimeダイアログステップの処理時間の平均値。
DBRequestTime論理データベース要求を処理するための平均時間。
QueueTimeディスパッチャー待ち行列での平均待ち時間。

(b) 監視方法

ダイアログの応答時間の監視
SAPシステムでのダイアログの応答時間は,監視テンプレートで提供している「Dialog ResponseTimeアラーム」を使用して監視できます。
ResponseTimeがしきい値以上の場合,SAPシステム全体のパフォーマンスが低下している可能性があります。SAPシステム全体の負荷状況やデータベース依頼時間を監視してボトルネックを確認します。
SAPシステム全体の負荷状況の監視
SAPシステム全体の負荷状況は,監視テンプレートで提供している「Dialog ResponseTimeレポート(フィールド名: QueueTime)」を使用して監視できます。
QueueTimeの値が高い(ResponseTimeの値の10%を超える)場合,SAPシステム全体での負荷が高くなっている可能性があります。
データベース依頼時間の監視
データベース依頼時間は,監視テンプレートで提供している「Dialog ResponseTime レポート(フィールド名: DBRequestTime)」を使用して監視できます。
DBRequestTimeの値が高い(ResponseTime - QueueTimeの値の40%を超える)場合,運用方法,アプリケーションサーバでのバッファ,SQL文(ABAP)の最適化,またはデータベースサーバに問題がある可能性があります。

(2) SAPバッファの監視

効率的にSAPシステムが運用されていることを確認するために,SAPシステム固有のSAPバッファを監視します。

効率よくSAPバッファを使用することで,定型業務など実行する機会が多い業務の応答時間の短縮を図ることができます。

(a) SAPバッファに関連するレコードとフィールド

SAPバッファに関連するレコードとフィールドを次の表に示します。

表1-2 SAPバッファに関連するレコードとフィールド

使用レコード使用フィールド値の見方(例)
PIまたはPI_BUFFProgram HitRatio %プログラムがProgramバッファに存在するため,データベースにアクセスせずに済んだ問い合わせの割合(バッファのヒット率)。
CUA HitRatio %メニュー情報がCUAバッファに存在するため,データベースにアクセスせずに済んだ問い合わせの割合(バッファのヒット率)。
GenericKey HitRatio %テーブルのデータ(複数レコード)がGeneric Keyバッファに存在するため,データベースにアクセスせずに済んだ問い合わせの割合(バッファのヒット率)。
SingleRecord HitRatio %テーブルのデータ(1レコード)がSingle recordバッファに存在するため,データベースにアクセスせずに済んだ問い合わせの割合(バッファのヒット率)。
PI_BUFFProgram SwapProgramバッファで発生した,1分ごとのバッファフルによるスワップ回数。値が0であることが望ましい。
CUA SwapCUAバッファで発生した,1分ごとのバッファフルによるスワップ回数。値が0であることが望ましい。
GenericKey SwapGeneric keyバッファで発生した,1分ごとのバッファフルによるスワップ回数。値が0であることが望ましい。
SingleRecord SwapSingle recordバッファで発生した,1分ごとのバッファフルによるスワップ回数。値が0であることが望ましい。

(b) 監視方法

Programバッファの監視
Programバッファのヒット率およびスワップ回数を監視できます。
Programバッファのヒット率は,監視テンプレートで提供している「SAP Buffer Hitratioレポート(フィールド名: Program HitRatio %)」を使用して監視できます。この値が低い(80%未満)場合は,定型業務以外のユーザー依頼が増加している可能性があります。
Programバッファで発生したスワップ回数は,監視テンプレートで提供している「SAP Buffer Hitratioレポート(フィールド名: Program Swap)」を使用して監視できます。この値が0よりも大きい場合には,Programバッファのサイズが小さい可能性があります。
メニュー情報のバッファの監視
メニュー情報のバッファヒット率および,スワップ回数を監視できます。
メニュー情報のバッファヒット率は,監視テンプレートで提供している「SAP Buffer Hitratioレポート(フィールド名: CUA HitRatio %)」を使用して監視できます。この値が低い(80%未満)場合は,定型業務以外でのメニュー操作が増加している可能性があります。
メニュー情報のスワップ回数は,監視テンプレートで提供している「SAP Buffer Hitratioレポート(フィールド名: CUA Swap)」を使用して監視できます。この値が0よりも大きい場合には,CUAバッファのサイズが小さい可能性があります。
テーブルデータのバッファの監視
テーブルデータのバッファヒット率およびスワップ回数を監視できます。
テーブルデータのバッファヒット率は,監視テンプレートで提供している「SAP Buffer Hitratioレポート(フィールド名: GenericKey HitRatio %)」および「「SAP Buffer Hitratioレポート(フィールド名: SingleRecord HitRatio %)」を使用して監視できます。この値が低い(80%未満)場合は,Generic keyバッファおよびSingle recordバッファのサイズが小さいか,またはGeneric Keyバッファへのテーブル割り当て方法に問題がある可能性があります。
テーブルデータのバッファで発生したスワップ回数は,監視テンプレートで提供している「SAP Buffer Hitratioレポート(フィールド名GenericKey Swap)」および「SAP Buffer Hitratioレポート(フィールド名SingleRecord Swap)」を使用して監視できます。この値が0よりも大きい場合には,Generic keyバッファおよびSingle recordバッファのサイズが小さい可能性があります。

(3) SAPメモリーの監視

SAPメモリーの領域不足によって発生する,SAPシステム全体でパフォーマンスの低下の傾向を確認するためにSAPシステム固有のSAPメモリーを監視します。

(a) SAPメモリーに関連するレコードとフィールド

SAPメモリーに関連するレコードとフィールドを次の表に示します。

表1-3 SAPメモリーに関連するレコードとフィールド

使用レコード使用フィールド値の見方(例)
PIまたはPI_MEMEsAct %現在の,拡張メモリーの使用率。
HeapAct %現在の,ヒープ領域の使用率。
PrivWpNoPRIVモードになったワークプロセス数。
R3PagingUsed %ページング領域の使用率。
R3RollUsed %ロール領域の使用率。

(b) 監視方法

SAPメモリーの拡張メモリー使用率の監視
SAPメモリーの拡張メモリー使用率は,監視テンプレートで提供している「Extended Memoryアラーム」を使用して監視できます。
Extended Memoryが警告の場合,拡張メモリーの領域不足の可能性があります。
SAPメモリーのヒープ領域使用率の監視
SAPメモリーのヒープ領域使用率は,監視テンプレートで提供している「Heap Memoryアラーム」を使用して監視できます。
Heap Memoryが警告の場合,ヒープ領域の領域不足の可能性があります。または,ダイアログのワークプロセスがショートダンプを発生するおそれがあります。
SAPメモリーのページング領域使用率の監視
SAPメモリーのページング領域使用率は,監視テンプレートで提供している「Paging Areaアラーム」を使用して監視できます。
Paging Areaが警告の場合,ページング領域の領域不足の可能性があります。
SAPメモリーのロール領域使用率の監視
SAPメモリーのロール領域使用率は,監視テンプレートで提供している「Roll Areaアラーム」を使用して監視できます。
Roll Areaが警告の場合,ロール領域の領域不足の可能性があります。または,ダイアログのワークプロセスが「PRIV」モードとなるおそれがあります。
「PRIV」モードになっているワークプロセス数は,監視テンプレートで提供している「SAP Memory Detailドリルダウンレポート(フィールド名: PrivWpNo)」を使用して確認できます。この値が1以上の場合,ディスパッチャーでの待ち時間が増加している可能性があります。

(4) SAPシステムログ,CCMSアラートの監視

SAPシステムは,発生したイベントおよび障害情報をシステムログに出力しています。

また,システムの運用管理や負荷分析をするCCMS(Computer Center Management System)が備わっています。

PFM - Agent for Enterprise Applicationsでは,システムログやCCMSの警告モニター内で発生した警告(アラート情報)を定期的にテキストファイルに出力できます。

テキストファイルに出力された情報は,ほかのプログラム(JP1/Baseのログトラップ機能など)と連携することでSAPシステムの状態の監視に利用できます。

(a) 監視方法

システムログの監視
システムログ情報抽出機能を使用すると,SAPシステムで発生したイベントおよび障害を記録するシステムログ情報を定期的にテキストファイルに出力できます。
出力される内容を次に示します。
  • メッセージ記録時刻
  • メッセージを記録したサーバ
  • メッセージを記録したユーザー
  • メッセージを記録したプログラム
  • メッセージ番号
  • メッセージ
詳細は,「5. システムログ情報の抽出」を参照してください。
CCMSアラート情報の監視
CCMSアラート情報抽出機能を使用すると,CCMSの警告モニター内で発生する警告(アラート情報)を定期的にテキストファイルに出力できます。
出力される内容を次に示します。
  • アラートID
  • アラートに関連づけられているMTEのID
  • アラートの重要度
  • 一般プロパティ
  • メッセージ
詳細は,「6. CCMSアラート情報の抽出」を参照してください。