1.21.3 メッセージ(KAVX5137-E)の対処
ここでは,メッセージ(KAVX5137-E)の発生要因,回復手順,およびメッセージ(KAVX5137-E)を回避する方法について説明します。
- この項の構成
- (1) メッセージ(KAVX5137-E)の発生要因
- (2) メッセージ(KAVX5137-E)の回復手順(バックアップサーバでの操作)
- (3) メッセージ(KAVX5137-E)の回復手順(ファイルサーバまたはデータベースサーバでの操作)
- (4) メッセージ(KAVX5137-E)を回避する方法
(1) メッセージ(KAVX5137-E)の発生要因
同じ主ボリュームからバックアップした複数の副ボリュームが同時にバックアップサーバに認識されると,Windowsが重複したディスクSignature(ディスク署名)を変更します。
クラスタソフトウェアにMSCSを使用した場合,ディスクSignatureが書き換わった副ボリュームをリストアしようとすると,MSCSリソースのオンラインへの切り替えに失敗します。例えば,下記の条件をすべて満たす場合では正常にリストアできません。
- クラスタソフトウェアとしてMicrosoft Cluster Serviceを使用している。
- 副ボリュームが複数世代である。
- 副ボリュームをバックアップサーバで使用する構成となっている。
- バックアップサーバのOS(Windows)が副ボリュームのディスクSignatureの重複を検知し,ディスクSignatureを変更した。
- ディスクSignatureが変更された副ボリュームがリストア対象となった。
Protection Managerでは,Microsoft Cluster Serviceクラスタ環境のリストア時や,オフラインにしたリソースのオンライン時に,物理ディスクのディスクSignatureを参照します。物理ディスクのディスクSignatureが,クラスタの記憶しているディスクSignatureと異なっていた場合,メッセージ(KAVX5137-E)が表示されてリストアコマンド※が中断されます。
注※ EX_DRM_FS_RESTORE(drmfsrestoreコマンド),EX_DRM_SQL_RESTORE(drmsqlrestoreコマンド),およびEX_DRM_EXG_RESTORE(drmexgrestoreコマンド)です。
(2) メッセージ(KAVX5137-E)の回復手順(バックアップサーバでの操作)
副ボリュームのディスクSignatureを確認し,ディスクSignatureを更新します。
ディスクSignatureを確認・更新するには:
- 副ボリュームのディスクSignatureを確認します。
drmdevctlコマンドに-sigviewオプションを指定して実行します。
リストア元の副ボリュームについて,現時点のディスクSignature(CUR_DISKID)を確認してください。また,バックアップ時のディスクSignature(BKU_DISKID)が,クラスタが期待する値となっているかも確認してください。
drmdevctlコマンドの実行例を次に示します。
BKServer > drmdevctl 0000000001 -sigview
COPY_GROUP ICE TYPE CUR_DISKID BKU_DISKID
VG01,dev01 Harddisk10 MBR ABCDEF0004 ABCDEF0001
VG01,dev02 Harddisk11 MBR ABCDEF0005 ABCDEF0002
VG01,dev03 Harddisk12 MBR ABCDEF0006 ABCDEF0003
上記の例では,バックアップ取得後にディスクSignatureが変更されたため,現時点のディスクSignature(CUR_DISKID)とバックアップ時のディスクSignature(BKU_DISKID)が異なります。
- 副ボリュームのディスクSignatureを更新します。
drmdevctlコマンドに-sigsetオプションを指定して実行します。
drmdevctlコマンドの実行例を次に示します。
BKServer > drmdevctl 0000000001 -sigset
上記の例では,バックアップ時に記録した署名を使用してディスクSignatureを更新します。
- 副ボリュームのディスクSignatureが正しく更新されたことを確認します。
drmdevctlコマンドに-sigviewオプションを指定して実行します。
別のディスクに同じディスクSignatureが存在する場合など,いったん更新したディスクSignatureがWindowsによって再更新されることがあるため,必ず確認してください。
drmdevctlコマンドの実行例を次に示します。
BKServer > drmdevctl 0000000001 -sigview
COPY_GROUP ICE TYPE CUR_DISKID BKU_DISKID
VG01,dev01 Harddisk10 MBR ABCDEF0001 ABCDEF0001
VG01,dev02 Harddisk11 MBR ABCDEF0002 ABCDEF0002
VG01,dev03 Harddisk12 MBR ABCDEF0003 ABCDEF0003
(3) メッセージ(KAVX5137-E)の回復手順(ファイルサーバまたはデータベースサーバでの操作)
RAID Managerのコマンドを使用して,副ボリュームをリストアします。
副ボリュームをリストアするには:
- クラスタリソースの状態を変更します。
- クラスタリソースがオフライン状態でのリストアを実行した場合
- 物理ディスクリソースが「オフライン」状態または「失敗」状態であることを確認します。
- クラスタリソースがオンライン状態でのリストアを実行した場合
- 物理ディスクリソースを「オンライン(Ext Maintenance, Internal State 'オフライン')」状態にします。
- 物理ディスクリソースを「オンライン」から「オンライン(保守)」に変更するには,次のコマンドを実行してください。
FSServer > CLUSTER RESOURCE "リソース名" /MAINTENANCEMODE:ON
- 物理ディスクリソースを「オンライン(保守)」から「オンライン(Ext Maintenance, Internal State 'オフライン')」に変更するには,次のコマンドを実行してください。※
FSServer > CLUSTER RESOURCE "リソース名" /EXTMAINTENANCEMODE:ON
- RAID Managerのコマンドを使用して,副ボリュームをリストアします。
pairresyncコマンド,およびpairsplitコマンドを実行します。pairresyncコマンドはペア状態が「PSUS-SSUS」になっていることを,pairsplitコマンドはペア状態が「PAIR-PAIR」になっていることを確認してから実行します。
pairresyncコマンド,およびpairsplitコマンドの実行例を次に示します。
FSServer > pairresync -g VG01 -restore
FSServer > pairsplit -g VG01
- クラスタグループをオンラインにします。
- クラスタリソースがオフライン状態でのリストアを実行した場合
- クラスタアドミニストレータを起動して,クラスタグループをオンラインにしてください。
- クラスタリソースがオンライン状態でのリストアを実行した場合
- 物理ディスクリソースを「オンライン」状態にします。
- 物理ディスクリソースを「オンライン(Ext Maintenance, Internal State 'オフライン')」から「オンライン(保守)」に変更するには,次のコマンドを実行してください。※
FSServer > CLUSTER RESOURCE "リソース名" /EXTMAINTENANCEMODE:OFF
- 物理ディスクリソースを「オンライン(保守)」から「オンライン」に変更するには,次のコマンドを実行してください。
FSServer > CLUSTER RESOURCE "リソース名" /MAINTENANCEMODE:OFF
- その後,ディスクの管理を起動して,ディスクを元のドライブまたはフォルダにマウントします。
- DBMSをリストアコマンド実行可能な状態にします。
- バックアップ対象がExchangeデータベースの場合
- システムマネージャを起動して,インフォメーションストアを再マウントします。
- バックアップ対象がSQL Serverデータベースの場合
- コマンドを実行するためのSQL Serverデータベースの条件については,マニュアル「Hitachi Protection Manager Software ユーザーズガイド」を参照してください。
- リストアコマンドを再実行します。
Protection Managerのリストアコマンドを再度実行してください。
注※ CLUSTERコマンドがシステムエラー 997を返した場合でも,数秒間待つと正しい状態に変更されます。
(4) メッセージ(KAVX5137-E)を回避する方法
メッセージ(KAVX5137-E)を回避するために,次のどちらかの方法で運用してください。
- バックアップサーバからすべての副ボリュームを隠ぺいする
すべての副ボリュームを隠ぺいすることで,ディスクSignatureの変更を抑止できます。ただし,バックアップサーバから副ボリュームを隠ぺいする前に,ディスクSignatureが変更されていることがあります。副ボリュームを隠ぺいしたあと,すべての副ボリュームをバックアップ先としてバックアップを取得してください(すべての副ボリュームが上書きされるので,副ボリュームのバックアップデータが必要な場合はテープなどにバックアップしてからバックアップを取得してください)。
バックアップサーバからすべての副ボリュームを隠ぺいする方法については,マニュアル「Hitachi Protection Manager Software ユーザーズガイド」を参照してください。
- リストア前にディスクSignatureを確認・更新する
バックアップサーバからすべての副ボリュームを隠ぺいしない場合,ディスクSignatureの変更は抑止できません。リストア前にディスクSignatureが変更されているか確認し,変更されている場合はディスクSignatureを更新後にリストアを実行するようにしてください。