2.2.2 ビジネスプロセス定義の構成
ビジネスプロセスは,業務の流れに合わせて幾つかの要素を組み合わせた構成になります。1つのビジネスプロセスは,ソースノードで開始し,シンクノードで終了するように定義します。ソースノードとシンクノードの間には,実際の業務にあわせて業務ステップ,作業,制御ノード,アロー,振り分けルール名,データ条件といった要素を定義します。
ビジネスプロセス定義の構成を次の図に示します。
ビジネスプロセス定義の主な構成要素について次に説明します。
(1) ソースノード
ビジネスプロセスの開始点を表すものです。ビジネスプロセスに1つ設定します。
(2) シンクノード
ビジネスプロセスの終了点を表すものです。ビジネスプロセスに1つ設定します。
(3) 業務ステップ(業務状態)
業務の状態を示し,ある状態で実行可能な作業の集合として定義されるものです(ただし,運用上,作業を1つも含まない業務ステップもあります)。業務ステップは,通常これらの作業群がすべて完了することで「完了」となりますが,データ条件として記述された完了条件を別に持つことができます。
「2.1 ワーク管理システムによる業務の流れ」の例では,「引合提案中」,「見積中」,「受注処理待ち」,「売掛中」,「請求中」,「納品待ち」および「納品確認待ち」がそれぞれ業務ステップとなります。
業務ステップの概念を次の図に示します。
(4) 作業
ある業務ステップで実行する具体的な処理です。作業では,処理を実行する作業者の情報を振り分けルール名として持ちます。振り分けルール名を基に,別途定義されている振り分けルール定義を呼び出し,作業者データベースなどを検索することで作業者を特定します。
「2.1 ワーク管理システムによる業務の流れ」の例では,「見積中」の業務ステップで実行する「見積書作成」という処理などが作業となります。
作業の概念を次の図に示します。
なお,ワーク管理システムでは,組み込み作業を提供しています。組み込み作業とは,ワーク管理システムの基本的な機能を組み合わせることで実現するような複雑な処理を1つの作業としてまとめたものです。また,組み込み作業は,ワーク管理システムが作業者となって実行される以外は,通常の作業と同様の動作になります。
ワーク管理システムで提供している組み込み作業は,並列作業です。
並列作業は,案件内容に応じて,複数担当者に作業を振り分ける場合などに使用します。並列作業をビジネスプロセスに定義しておくことで,案件の実行時に複数の作業が自動的に生成されます。生成される作業数は,案件の実行時に決まります。
(5) 制御ノード
案件の流れを制御するノードです。制御ノードには,分岐ノード,分業ノード,先着ノードおよび待合ノードの4種類があります。
- ●分岐ノード
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次の業務ステップとしてあらかじめ定義された複数の業務ステップから,条件に従って1つの業務ステップを選択し,開始します。
- ●分業ノード
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次の業務ステップとしてあらかじめ定義された複数の業務ステップをすべて開始します。
- ●先着ノード
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直前の業務ステップとしてあらかじめ定義された複数の業務ステップのうち,どれか1つが完了した時点で次の業務ステップを開始します。
- ●待合ノード
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直前の業務ステップとしてあらかじめ定義された複数の業務ステップのうち,すべてが完了した時点で次の業務ステップを開始します。
「2.1 ワーク管理システムによる業務の流れ」の例では,受注登録後,「売掛中」と「納品待ち」の2つの業務ステップに処理が分かれます。この制御は,分業ノードで実行しています。
制御ノードの概念を次の図に示します。
(6) アロー
業務ステップおよびノード間の遷移を規定するためのものです。アローは,遷移元や遷移先となる業務ステップの情報を持ちます。
「2.1 ワーク管理システムによる業務の流れ」の「引合提案中」から「見積中」へのアローでは,遷移元が「引合提案中」,遷移先は「見積中」に当たります。
アローの概念を次の図に示します。
(7) 振り分けルール名
作業者を決定するためのルールの名称です。作業の実行時には,この名称で示された振り分けルール定義が呼び出されます。振り分けルール定義によって作業者データベースが検索され,作業者が決定されます。
「2.1 ワーク管理システムによる業務の流れ」の例では,「売掛中」の業務ステップで「請求書作成」という作業を実行します。この作業の作業者は,例えば次のように決定されます。
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「請求書作成」作業には,「請求書作成者」という振り分けルール名が記述されているとします。
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作業時には,振り分けルール名を基に「請求書作成者」という振り分けルール定義が呼び出されます。振り分けルール定義「請求書作成者」には,「請求金額が1,000万円以上ならば経理課課長,500万円以上1,000万円未満ならば経理課主任,500万円未満ならば経理課担当者」というルールが定義されているとします。
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振り分けルール定義「請求書作成者」に基づいて作業者データベースを検索し,「請求書作成」作業の作業者が決定されます。
振り分けルール名の概念を次の図に示します。
振り分けルール定義については,「2.3 振り分けルール定義」を参照してください。
(8) データ条件
分岐ノードでの案件の流れを規定したり,業務ステップや作業の発生・完了を制御したりする条件です。データ条件は,業務データベースなどを参照することで評価されます。
「2.1 ワーク管理システムによる業務の流れ」の例では,「見積中」の業務ステップで「見積書作成」という作業を実行します。この作業の発生は,例えば次のように制御されます。
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「見積書作成」作業の発生条件として「見積No.=入力」が記述されているとします。
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業務ステップの開始時などに,発生条件に基づいて業務データベースを参照し,該当案件の見積No.が入力されていれば,「見積書作成」作業が発生します。
データ条件の概念を次の図に示します。