7.1.1 SOAの概念に基づくサービスインテグレーションの実現

ビジネス環境の変化に合わせて,ビジネス戦略やビジネスプロセスのライフサイクルが短くなってきています。この状況に即応するためには,変化に柔軟に対応できる,拡張性の高い業務システムが必要です。

このような業務システムを実現するための概念が,SOAです。

SOAでは,ビジネス環境の変化に対して,常に新しいアプリケーションを開発して対応するのではなく,既存のアプリケーションを再利用したり組み合わせを変えたりして,新しいサービスとして利用します。既存のアプリケーションを活用するため,短期間で信頼性の高いサービスの提供が可能です。

Cosminexusでは,メッセージフローによって,サービス統合を実現します。

ここでは,それぞれの概要について説明します。また,Cosminexusでのサービス統合の考え方についても説明します。

<この項の構成>
(1) メッセージフローによるサービス統合
(2) サービス統合の考え方

(1) メッセージフローによるサービス統合

Cosminexus サービスプラットフォームは,SOAの概念でサービスの統合(サービスインテグレーション)を実現するための基盤である,エンタープライズ・サービス・バスESB)を構築する製品です。Cosminexusのアプリケーション実行環境の機能を基盤として,信頼性と性能の高いESBを構築できます。

Cosminexus サービスプラットフォームで統合するサービスは,それぞれ独立した,業務上の意味を持つ単位で作成されたものです。Cosminexus サービスプラットフォームは,これらのサービスを,サービス間のメッセージの送受信(メッセージフロー)によって統合します。メッセージフローによって統合されたサービスでは,クライアントから一つのリクエストが送信されると,必要な複数のサービスを実行してそのリクエストにこたえます。これによって,クライアントから見たワンストップサービスを実現します。

Cosminexus サービスプラットフォームでは,統合した個々のサービスに接続するためのインタフェースを公開しています。クライアントは,公開されたインタフェースの情報を基に,サービスを利用するためのアプリケーションを作成できます。

なお,Cosminexus サービスプラットフォームで扱うサービスには,単体サービスと複合サービスがあります。複合サービスは,サービスを複数組み合わせて実行順序を定義したものです。BPELによってビジネスプロセスとして定義します。

Cosminexus サービスプラットフォームでのサービス統合の概要を,次の図に示します。

図7-1 Cosminexus サービスプラットフォームでのサービス統合の概要

[図データ]

ユーザからのリクエストを受け付けたCosminexus サービスプラットフォームは,リクエストの内容に応じて,登録されているサービスの中から適切なサービスを呼び出します。同じサービスが複数登録されている場合は,それぞれのサービスの稼働状況や運用状態に合わせて呼び出し先を決定します。呼び出し先のサービスがビジネスプロセスである場合には,ビジネスプロセスのそれぞれの段階で必要なサービスを順番に呼び出して,処理を実行します。

(2) サービス統合の考え方

ここでは,サービス統合を実施する際の基本的な考え方について説明します。

●サービスの作成単位

SOAの考え方に基づいたサービス統合を実現する場合,まず,サービスをどのような単位で構築するかを検討します。

SOAでは,それぞれが独立しているサービスをつなぎ,必要に応じて組み替えることによって,新しいサービスを柔軟に作り出します。このため,組み替えの対象になるサービスの単位は,業務の変化が発生する単位に近く,かつ独立性が高いものにする必要があります。

●サービス統合の進め方

サービス統合の進め方には,一度にシステム全体を最適化する方法のほか,システム内で優先度が高い業務からサービス化を行い,段階を踏んで最適化を勧めていく方法があります。

レガシーシステムやERPパッケージなどを使用して実現していた業務は,そのままCosminexus サービスプラットフォームのサービスとして利用できます。これによって,既存の資産を生かしたシステムの最適化が実現できます。詳細は,「7.1.2 レガシーシステムやERPパッケージの統合」を参照してください。

また,新しいサービスを作成する場合は,対話型またはオンライン型のアプリケーションとして開発できます。対話型またはオンライン型のアプリケーションは,Cosminexusのアプリケーション開発環境を使用して,効率良く構築できます。詳細は,「6. アプリケーションを開発する」を参照してください。