1.1.8 ネットワーク環境の設定について

DPMで管理するネットワークが以下のハードウェア/ソフトウェア環境を満たしていることを確認してください。満たしていない場合は設定を変更してください。

ハードウェア環境
LAN構成管理サーバと管理対象となるコンピュータ間が100Mbps以上のLANで接続されていること
その他
  • 自己診断機能STP(Spanning Tree Protocol)をサポートしているスイッチ/ルータをご使用の場合は,コンピュータを接続するポートのSTPはOFFにしてください。一般的にSTPのチェックには30~60秒程度の時間が必要となり,この期間はネットワーク通信ができません。電源をONにしてからネットワークブートするまでの間隔が短い機種の場合は,正しくネットワークブートすることができなくなります。
    また,コンピュータ以外を接続しているポートにSTPを設定されている場合でも,ネットワーク障害等で運用中のLAN経路が切断されると,新たな経路を検索するのに同様の時間が必要になりますので,このタイミングでは通信ができなくなります。
  • DPMは「Speed」「Duplex」は「Auto」の設定でネゴシエーションします。スイッチの設定も「Speed」「Duplex」は「Auto」の設定にしてください。
    ただしBladeSymphony BS320 1GbpsLANスイッチモジュールの「Speed」「Duplex」の設定については,LANスイッチモジュールで決められている設定内容にしてください。LANスイッチモジュールの設定内容についてはハードウェア添付のユーザーズガイドに記述されています。
ソフトウェア環境
DHCPサーバDHCPサーバは必須になります。
「DHCPサーバを使用しない」設定を行わないでください。
サードパーティ製DHCPサーバソフトを管理サーバ for DPMと同じ装置にインストールして使用することはできません。同じ装置にDHCPサーバを設置する場合は,Windows標準のDHCPサーバを使用してください。
NFSサーバDPMを用いてRed Hat Enterprise LinuxのOSクリアインストールを行うにはNFSサーバが必要になります。Red Hat Enterprise Linuxのインストールを行わない場合は必要ありません。
【重要!】
DHCPサーバは,管理サーバ上に構築したものを使用することも,別のコンピュータに構築したものを使用することもできますが,管理サーバ上に構築したものを使用する場合は,そのDHCPサーバは同一ネットワーク内で唯一のDHCPサーバでなければなりません。別のコンピュータ上に構築したDHCPサーバを使用する場合は,同一ネットワーク内にDHCPサーバが何台構築されていても結構です。
【ヒント】
DHCPサーバは管理サーバ for DPMをインストールする前に設定することをお薦めします。管理サーバ for DPMのインストール後にDHCPサーバを設定する場合は,「1.3.3 DHCPサーバの設定」をご覧ください。
【注意!】
  • ネットワークに正しく接続していない場合,DPMのサービスが正しく開始できません。
  • ネットワークにWINSサーバを構築している環境において,管理サーバで WINSサーバを使用する設定にする場合は,コンピュータ側でも同じくWINSサーバを使用する設定にしてください。この設定を行わない場合,管理サーバではコンピュータのアドレス解決が行えないため,シナリオ実行などが失敗する場合があります。
  • 複数のLANボードに対して同一セグメントのIPアドレスを割り振る設定の場合,LANケーブルを接続していないLANボードがある状態では通信できなくなることがあります。LANケーブルを接続していないLANボードは,固定IPを割り当てずDHCP設定とするか,未設定とすることを推奨します。
  • スイッチングHUB以外のHUB(スタッカブルHUBなど)を使用した場合に,他の管理対象コンピュータをバックアップ中にIPF版のコンピュータへバックアップまたは,リストアを行うと失敗する場合があります。
  • 他のアプリケーション等により,TFTPポート,あるいは本章に示す通信ポートが使用中の場合,DPMが正常動作しない可能性があります。
    DPMインストール前に,他のアプリケーションによるポートの使用状況を確認してください。
  • 管理サーバとDHCPサーバをそれぞれ別のコンピュータに構築し,かつ管理サーバと管理対象コンピュータが別セグメントになる場合,ルータの設定によって,PXEブート,シナリオ実行が正常に行えない場合があります。
    管理サーバからのユニキャストDHCPパケットが管理サーバ,ターゲット間で正常に通信できるように,ルータの設定を行ってください。
【ヒント】
DHCPサーバやネットワーク構成に問題がある場合,ネットワークブート中に次のメッセージが数秒間表示され,DPMのシナリオ実行がエラーとなります。
 PXE-E51: No DHCP or proxyDHCP offers were received.
このメッセージが表示された場合は,DHCPサーバがコンピュータに対してIPアドレスを割り振ることができるかを確認してください。特に以下の点に注意してください。
  • DHCPサーバのスコープが正しく設定されているか
  • DHCPサーバが管理するIPアドレスが枯渇していないか
  • ルータやスイッチでSTPが設定されていないか
DHCPサーバの設定方法
Windows Server 2003上でのDHCPサービスの設定方法について説明します。
<DHCP(動的ホスト構成プロトコル)のインストール手順>
DHCPサービスがインストールされていない場合は,以下の手順で,DHCPサービスをインストールしてください。
  1. 「スタート」メニュー(または「スタート」メニュー→「設定」)→「コントロールパネル」→「プログラムの追加と削除」を選択します。
  2. 「Windowsコンポーネントの追加と削除」をクリックし,「Windowsコンポーネントウィザード」を起動します。
  3. 「ネットワークサービス」をクリックし,「詳細」をクリックします。
  4. 「動的ホスト構成プロトコル(DHCP)」にチェックを入れ,「OK」ボタンをクリックします。
  5. 「Windowsコンポーネントウィザード」に戻るので,「次へ」ボタンをクリックします。
    インストールが開始されます。
  6. インストール終了後,「完了」ボタンをクリックします。

以上で,DHCPサービスのインストールは完了です。

<DHCPの設定手順>
  1. 「スタート」メニュー(または「スタート」メニュー→「設定」)→「コントロールパネル」→「管理ツール」→「DHCP」を開きます。
  2. コンソールツリーでDHCPを右クリックして,「サーバの追加」をクリックします。
  3. 「サーバの追加」が開くので,DHCPサーバにしたいサーバのコンピュータ名を入力するか「参照」から選択し「OK」ボタンをクリックします。
  4. コンソールツリーに追加したサーバが表示されるので,追加したサーバを右クリックして「新しいスコープ」をクリックします。
  5. 「新しいスコープ」ウィザードが開くので,「次へ」ボタンをクリックします。
  6. 「スコープ名」が表示されるので,名前と説明を入力し「次へ」ボタンをクリックします。
  7. 「IPアドレスの範囲」が表示されるので,開始IPアドレスと終了IPアドレスを設定し「次へ」ボタンをクリックします。
    【ヒント】
    • サブネットマスクは,ネットワーク/サブネットIDとホストIDの数を変更したい場合に設定してください。
    • このIPアドレスは,DPMでネットワークブートするとき(例えば,バックアップ時)に,一時的に使用するものです。
    • IPアドレスはDPMで管理するコンピュータの台数分用意してください。DPMで管理するコンピュータ以外にもDHCPからIPを取得する場合は,その台数分も追加してください。
  8. 「除外の追加」が表示されるので,除外したいIPアドレスの範囲を入力して「次へ」ボタンをクリックします。
  9. 「リース期間」が表示されるので,IPアドレスをリースしたい期間を設定して「次へ」ボタンをクリックします。
    【ヒント】
    通常はデフォルトの8日間で問題ありません。
  10. 「DHCPオプションの構成」が表示されるので,このスコープのDHCPオプションを今すぐ構成する場合は,「今すぐオプションを構成する」を選択して「次へ」ボタンをクリックします。後で構成する場合は,「後でオプションを構成する」を選択して「次へ」ボタンをクリックします。
    【ヒント】
    必要なオプションがある場合は,追加してください

以上でDHCPの設定は完了です。

<DHCPサーバ構築時のご注意>
Windows 2000 Server,Windows Server 2003,Windows Server 2008標準添付のDHCPサービス以外を使用してDHCPサーバを構築する場合は,次の点に注意してください。
  • 固定アドレスの使用
    例えばLinuxを使ってDHCPサーバを構築する場合,/etc/dhcpd.confに固定アドレスの指定が必要になる場合があります。
    固定アドレスとは,管理対象となるコンピュータのMACアドレスと,リース予定のIPアドレスの組をあらかじめDHCPサーバに登録しておくことにより,コンピュータからのアドレス要求に対してDHCPサーバが固定のIPアドレスをリースする仕組みのことです。
    固定アドレスの記述がない場合,DHCPサーバからの応答遅延が発生する場合があり,その場合PXE起動(ネットワーク起動)が失敗し,その影響でDPMが正常に動作できません。Linux以外のUNIX系OSについても,同様に固定アドレスが必要になる場合があります。
    以下は,MACアドレス(12:34:56:78:9A:BC)のホストに固定アドレス(192.168.0.32)を指定した場合の/etc/dhcpd.confの例です。

subnet 192.168.0.0 netmask 255.255.255.0 {
       ...
       ...
       host computer-name {
       hardware ethernet 12:34:56:78:9A:BC;
       fixed-address 192.168.0.32;
       }
}

【注意!】
サードパーティ製DHCPサーバソフトを「管理サーバ for DPM」と同じ装置にインストールして使用することはできません。別々の装置で使用する場合は,お使いになるDHCPサーバソフトがネットワークブート(PXEブート)に対してIPアドレスを正しくリースすることができるか事前に十分な確認を行ってください。

ルータを越えた複数のサブネットのコンピュータをDPMで管理するには,あらかじめルータかスイッチに以下の設定をしてください。

【ヒント】
  • ルータの設定はDPMのインストール後でも行うことができます。
  • 別セグメントのコンピュータを管理する場合は,DHCPサーバで別セグメント用のIPアドレスをリースできるスコープを作成してください。
    項目プロトコルポート番号
    電源ONUDP5561
    シャットダウンTCP56010
    生存確認(電源ON/OFF状態の確認)ICMP
    ネットワークブートUDP67,68,69,4011
    TCP56022,56030
    Windows OSクリアインストール/ディスク複製インストール※1※2※3TCP56023
    Linux OSクリアインストール※3※4TCP111,1048,2049
    UDP111,1048,2049
    リストア※1※3TCP56020,56023
    UDP56021
    バックアップ※1※3TCP56020,56023
    ディスク構成チェック※1※3TCP56023
    リモートアップデートによるサービスパック/HotFix/Linuxパッチファイルの適用※3TCP56000
    UDP56001
    コンピュータのOS/HotFix情報取得,シナリオ実行終了検知TCP56011
    管理対象コンピュータからのシナリオ実行※1UDP56040,56041
    自動更新要求TCP56024,56028
    自動更新通知TCP56025
    イメージビルダー(リモートコンソール)TCP56023
    WebコンソールとWebサーバの通信HTTP8080
    Webサーバから管理サーバへのアクセスTCP56050
    管理サーバからデータベースサーバへのアクセスTCP56070
    データベース動的ポート確認TCP1433,1434
    UDP1433,1434
    コマンドライン用コンピュータとWebサーバの通信HTTP8080
    Webサーバ(Tomcatの内部処理用のポート)TCP8005
    AJP8009
    HTTPS8443
※1 ネットワークブートの項目に記載されているプロトコルとポート番号も追加で必要となります。
※2 ディスク複製インストールの場合は,リストアの項目に記載されているプロトコルとポート番号も,追加で必要となります。
※3 管理サーバの詳細設定で「クライアントサービス for DPMを用いた運用を行う」にチェックした場合,コンピュータのOS/HotFix情報取得,シナリオ実行終了検知の項目に記載されているプロトコルとポートも追加で必要となります。
※4 ポート番号(1048)は動的に変更される場合があります。もし通信に失敗する場合は,“rpcinfo -p”コマンドでmountd(NFS mount daemon)サービスが使用するポート番号を確認し,そのポートを開放するようにしてください。この方法によっても改善されない場合は,Windowsファイアウォールの設定を無効にしてください。
【注意!】
管理するコンピュータにDPM01-XXの「クライアントサービス for DPM」がインストールされているか,または,どのバージョンもインストールされていない場合,生存確認(電源ON/OFF状態の確認),サービスパック/HotFix/Linuxパッチファイルの適用はDPMで登録されている「コンピュータ名」で通信を行います。
「コンピュータ名」で通信ができるようにネットワーク環境を設定してください。
また,「クライアントサービス for DPM」がDPM06-00以降の場合は,コンピュータが起動するタイミングで管理サーバにIPアドレスが登録され,IPアドレスによる管理が行われます。そのためIPアドレスで通信できるように設定してください。
【ヒント】
ルータとスイッチの設定については,購入元にお問い合わせください。

以下にDPMが通信で使用するプロトコル,ポート番号の詳細を示します。

以降の表では上部から下部へ通信が流れる様子を記述しています。

 

Windows 2000 Server,Windows Server 2003,またはWindows Server 2008を用いてソフトウェアルーティングをされている場合は,以下の手順でマルチキャストプロトコルの設定とDHCPリレーエージェントの設定ができます。

<マルチキャストプロトコルの設定手順>
DHCPサービスをインストールしてください。DHCPサービスのインストール方法についてはDHCP(動的ホスト構成プロトコル)のインストール手順を参照してください。
  1. 「スタート」メニュー(または「スタート」メニュー→「設定」)→「コントロールパネル」→「管理ツール」→「DHCP」を開きます。
  2. コンソールツリーでルータを右クリックし,「新しいマルチキャストスコープ」をクリックします。
  3. 「新しいマルチキャストスコープ」ウィザードが開くので,「次へ」ボタンをクリックします。
  4. 「マルチキャストスコープ名」が表示されるので,名前と説明を入力し「次へ」ボタンをクリックします。
  5. 「IPアドレスの範囲」が表示されるので,開始IPアドレスと終了IPアドレスを設定し「次へ」ボタンをクリックします。
    【ヒント】
    • バックアップ/リストアおよびリモートアップデートで使用できるマルチキャストアドレスは,224.0.0.0~239.255.255.255の範囲内で指定できます。ただし,実際のネットワーク上で使用できるマルチキャストアドレスは,以下の範囲で指定されることを強く推奨します。

       239.192.0.0~239.251.255.255

    • TTL(Time To Live)の設定は「16」としてください。
  6. 「除外の追加」が表示されるので,何も設定せず「次へ」ボタンをクリックします。
  7. 「リースの期間」が表示されるので,そのまま「次へ」ボタンをクリックします。
  8. 「利用可能なマルチキャストスコープ」が表示されるので,「次へ」ボタンをクリックします。
  9. 「新マルチキャストスコープウィザードの完了」が表示されるので,「完了」ボタンをクリックします。
  10. 「スタート」メニュー(または「スタート」メニュー→「設定」)→「コントロールパネル」→「管理ツール」→「ルーティングとリモートアクセス」を開きます。
  11. コンソールツリーで「IPルーティング」の「全般」を右クリックし,「新しいルーティングプロトコル」をクリックします。
  12. 「新しいルーティング プロトコル」ダイアログ ボックスで,「IGMP Version 2,ルータとプロキシ」を選択し,「OK」ボタンをクリックします。
  13. コンソールツリーで,「IGMP」をクリックします。
  14. 「IGMP」を右クリックし,「新しいインターフェイス」をクリックします。
  15. 「インターフェイス」で有効にするインターフェイスを選択し,「OK」ボタンをクリックします。
    【ヒント】
    インターフェイスの「内部」の設定も有効にしてください。
  16. 「IGMPのプロパティ-<選択したインターフェイス>のプロパティ」が表示されるので,「IGMPを有効にする」のチェックボックスにチェックが入っていることを確認し,「モード」がIGMPルータになっていることを確認して「OK」ボタンをクリックします。

以上で,マルチキャストプロトコルの設定は完了です。

<DHCPリレーエージェントの設定方法>
  1. 「スタート」メニュー(または「スタート」メニュー→「設定」)→「コントロールパネル」→「管理ツール」→「ルーティングとリモートアクセス」を開きます。
  2. コンソールツリーでIPルーティングの下の「全般」を右クリックし,「新しいルーティングプロトコル」をクリックします。
  3. 「新しいルーティング プロトコル」ダイアログ ボックスで,「DHCPリレーエージェント」を選択し,「OK」ボタンをクリックします。
  4. コンソールツリーで「DHCPリレーエージェント」を右クリックし,「新しいインターフェイス」をクリックします。
  5. 「DHCPリレーエージェントの新しいインターフェイス」ダイアログボックスでDHCPパケットをリレーしたいインターフェイスをクリックし,「OK」ボタンをクリックします。
  6. 「DHCPリレーエージェントのプロパティ-<選択したインターフェイス>のプロパティ」が表示されるので,「OK」ボタンをクリックします。
  7. コンソールツリーの「DHCPリレーエージェント」を右クリックし,「プロパティ」をクリックします。
  8. 「DHCPリレーエージェントのプロパティ」が表示されたらDHCPサーバのIPアドレスを入力して,「OK」ボタンをクリックします。

以上で,DHCPリレーエージェントの設定は完了です。

【注意!】
管理サーバとDHCPサーバが別のコンピュータの場合は,管理サーバ,DHCPサーバ共にDHCPリレー設定を行ってください。