13.1.1 クラスタシステムの概要

クラスタシステムとは,複数のサーバシステムを連携して一つのシステムとして運用するシステムで,一つのサーバで障害が発生しても,別のサーバで業務を継続できるようにすることを目的としています。

クラスタシステムは,通常処理を実行するサーバと,障害の発生時に処理を引き継ぐように待機しているサーバで構成されています。通常処理を実行するサーバを実行系サーバ,実行系サーバの障害時に処理を引き継ぐサーバを待機系サーバといいます。

障害時に実行系サーバから待機系サーバに処理を引き継ぐことをフェールオーバーといいます。フェールオーバーする単位となる論理的なサーバのことを論理ホストといいます。クラスタシステムで実行されるアプリケーションは,フェールオーバーして業務を継続するため,論理ホスト環境で動作させる必要があります。論理ホストで動作するアプリケーションは,物理的なサーバに依存しないで任意のサーバで動作できます。

論理ホストは,サービスとして動作するアプリケーション,共有ディスク,および論理IPアドレスの三つの要素で構成されています。サービスとして動作するJP1などのアプリケーションは,共有ディスクにデータを格納し,論理IPアドレスで通信を行います。

フェールオーバーによって物理的なサーバが変わっても,共有ディスクと論理IP アドレスを引き継ぐため,クライアントには同じIPアドレスのサーバが動作しているように見えます。

論理ホストを構成する三つの要素を次に示します。

表13-1 論理ホストの構成要素

論理ホストの構成要素説明
サービスクラスタシステムで実行するJP1などのアプリケーションです。実行系の論理ホストで障害が発生すると,待機系の論理ホストで同じ名称のサービスを起動し,処理を引き継ぎます。
共有ディスク実行系と待機系の両方に接続されたディスク装置です。系切り替え時に引き継ぐ情報(定義情報,実行状況など)を保存することで,実行系の論理ホストで障害が発生すると,待機系のサーバが共有ディスクへの接続を引き継ぎます。
論理IPアドレス論理ホストの動作中に割り当てられるIPアドレスです。実行系のサーバで障害が発生したときは,同じ論理IPアドレスの割り当てを待機系のサーバが引き継ぎます。そのため,クライアントからは同じIPアドレスでアクセスでき,一つのサーバが常に動作しているように見えます。

論理ホストの構成要素を次の図に示します。

図13-1 論理ホストの構成要素

[図データ]

なお,フェールオーバーの単位となる論理的なサーバを論理ホストというのに対し,物理的なサーバを物理ホストといいます。物理ホストが使うホスト名(hostnameコマンドを実行したときに表示されるホスト名)を物理ホスト名,物理ホスト名に対応したIPアドレスを物理IPアドレスといいます。