クラスタシステムとは,複数のサーバシステムを連携して一つのシステムとして運用するシステムで,一つのサーバで障害が発生しても,別のサーバで業務を継続できるようにすることを目的としています。
クラスタシステムは,通常処理を実行するサーバと,障害の発生時に処理を引き継ぐように待機しているサーバで構成されています。通常処理を実行するサーバを実行系サーバ,実行系サーバの障害時に処理を引き継ぐサーバを待機系サーバといいます。
障害時に実行系サーバから待機系サーバに処理を引き継ぐことをフェールオーバーといいます。フェールオーバーする単位となる論理的なサーバのことを論理ホストといいます。クラスタシステムで実行されるアプリケーションは,フェールオーバーして業務を継続するため,論理ホスト環境で動作させる必要があります。論理ホストで動作するアプリケーションは,物理的なサーバに依存しないで任意のサーバで動作できます。
論理ホストは,サービスとして動作するアプリケーション,共有ディスク,および論理IPアドレスの三つの要素で構成されています。サービスとして動作するJP1などのアプリケーションは,共有ディスクにデータを格納し,論理IPアドレスで通信を行います。
フェールオーバーによって物理的なサーバが変わっても,共有ディスクと論理IP アドレスを引き継ぐため,クライアントには同じIPアドレスのサーバが動作しているように見えます。
論理ホストを構成する三つの要素を次に示します。
表13-1 論理ホストの構成要素
論理ホストの構成要素 | 説明 |
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サービス | クラスタシステムで実行するJP1などのアプリケーションです。実行系の論理ホストで障害が発生すると,待機系の論理ホストで同じ名称のサービスを起動し,処理を引き継ぎます。 |
共有ディスク | 実行系と待機系の両方に接続されたディスク装置です。系切り替え時に引き継ぐ情報(定義情報,実行状況など)を保存することで,実行系の論理ホストで障害が発生すると,待機系のサーバが共有ディスクへの接続を引き継ぎます。 |
論理IPアドレス | 論理ホストの動作中に割り当てられるIPアドレスです。実行系のサーバで障害が発生したときは,同じ論理IPアドレスの割り当てを待機系のサーバが引き継ぎます。そのため,クライアントからは同じIPアドレスでアクセスでき,一つのサーバが常に動作しているように見えます。 |
論理ホストの構成要素を次の図に示します。
図13-1 論理ホストの構成要素
なお,フェールオーバーの単位となる論理的なサーバを論理ホストというのに対し,物理的なサーバを物理ホストといいます。物理ホストが使うホスト名(hostnameコマンドを実行したときに表示されるホスト名)を物理ホスト名,物理ホスト名に対応したIPアドレスを物理IPアドレスといいます。