4.2.4 PAMDBの運用に関する注意事項

<この項の構成>
(1) PAMDBのセットアップについて
(2) PAMDBの再セットアップについて
(3) PAMDBの再編成
(4) PAMDBの空きページ解放
(5) PAMDBの空き容量の確認について
(6) PAMDBのデータの移行
(7) 監視しているオブジェクト数とメトリック数の把握
(8) 対処が必要なPAMDBのメッセージ

(1) PAMDBのセットアップについて

PAMDBのセットアップ時には,稼働性能情報を格納する領域が確保されるため,十分なディスク容量が必要です。

また,稼働性能情報を収集していくと,PAMDBにデータが蓄積されていきます。PAMDBに格納されるデータの量は,ご使用の環境によって異なりますが,PAMDBの空き容量が不足する可能性もあります。このような場合には,PAMDBを再編成してください。詳細については,「(3)  PAMDBの再編成」を参照してください。

(a) PAMDBの初期セットアップ時の容量見積もり

デフォルトでは,セットアップ時に25ギガバイトの領域を確保しますが,この領域を変更できます。領域を変更する場合は,pamdbsetupコマンドを実行する前に,pamdbsetup.confファイルを変更してください。

ファイル名
インストール先ディレクトリ¥manager¥conf¥pamdbsetup.conf
変更個所

[Database Scale]
database_scale=M

database_scaleには,S,M,L,LLのうちのどれかを指定できます。デフォルトはMです。S,M,L,LLで監視できるオブジェクト数およびメトリック数の目安と,必要なディスク容量を次の表に示します。なお,「監視できるオブジェクト数およびメトリック数の目安」の数値は,詳細メトリックの時間粒度,サマライズメトリックの時間粒度,詳細メトリックの保持期間,およびサマライズメトリックの保持期間をデフォルトの設定で運用する場合を想定しています。

表4-7 監視できるオブジェクト数およびメトリック数の目安と必要なディスク容量

database_scaleの値監視できるオブジェクト数
およびメトリック数の目安
必要なディスク容量
S監視オブジェクト数:50(個)以内
監視メトリック数:500(個)以内
5ギガバイト
M(デフォルト)監視オブジェクト数:250(個)以内
監視メトリック数:2,500(個)以内
25ギガバイト
L監視オブジェクト数:500(個)以内
監視メトリック数:5,000(個)以内
50ギガバイト
LL監視オブジェクト数:1,000(個)以内
監視メトリック数:10,000(個)以内
80ギガバイト

表4-8 最大構成を監視する際の時間粒度と保持期間の推奨値

database_scaleの値監視するオブジェクト数およびメトリック数詳細メトリックサマライズメトリック
時間粒度保持期間時間粒度保持期間
S監視オブジェクト数:100(個)以内
監視メトリック数:1,000(個)以内
6分以上30日以下1時間以上182日以下
M(デフォルト)監視オブジェクト数:500(個)以内
監視メトリック数:5,000(個)以内
6分以上30日以下1時間以上182日以下
L監視オブジェクト数:1,000(個)以内
監視メトリック数:10,000(個)以内
6分以上30日以下1時間以上182日以下
LL監視オブジェクト数:2,000(個)以内
監視メトリック数:20,000(個)以内
12分以上60日以下1時間以上182日以下

注※ デフォルト値のままで問題ない項目です。


注意事項
  • 表4-7に示す数値は,使用環境によって異なる場合があります。あくまで目安として参考にしてください。
  • 個々のインスタンス値を保存するように設定した場合は,インスタンス数をメトリック数に計上して見積もってください。
  • 監視できるオブジェクト数およびメトリック数の上限は,S,M,L,LLそれぞれ,表4-7に示す「監視できるオブジェクト数およびメトリック数の目安」の2倍の数値になります。上限を超える環境には,対応できません。監視できる数の上限となる数のオブジェクトおよびメトリックを監視する場合の時間粒度と保持期間の推奨値を表4-8に示します。なお,時間粒度と保持期間の設定については,「11.2.1 PFM - Analysis Manager動作条件定義ファイル(pam.conf)」を参照してください。
  • 詳細メトリックおよびサマライズメトリックの時間粒度を,デフォルト(詳細メトリック:3分,サマライズメトリック:1時間)より短い値に変更した場合,監視できるオブジェクト数およびメトリック数は,表4-7に示す数値よりも小さくなります。一方,詳細メトリックおよびサマライズメトリックの時間粒度をデフォルトより長い値に変更した場合,監視できるオブジェクト数およびメトリック数は,表4-7に示す数値より大きくなります。
  • 詳細メトリックおよびサマライズメトリックの保持期間を,デフォルト(詳細メトリック:30日,サマライズメトリック:365日)より短い値に変更した場合,監視できるオブジェクト数およびメトリック数は,表4-7に示す数値よりも大きくなります。一方,詳細メトリックおよびサマライズメトリックの保持期間をデフォルトより長い値に変更した場合,監視できるオブジェクト数およびメトリック数は,表4-7に示す数値より小さくなります。
  • 詳細メトリックおよびサマライズメトリックの時間粒度または保持期間を変更した場合に,システムが対応できる監視オブジェクト数および監視メトリック数は,次の式で見積もることができます。
    監視できるオブジェクト数=
     表4-7の監視オブジェクト数×(デフォルトの保持期間÷変更後の保持期間)
                  ×(変更後の時間粒度÷デフォルトの時間粒度)
    監視できるメトリック数=
     表4-7の監視メトリック数×(デフォルトの保持期間÷変更後の保持期間)
                 ×(変更後の時間粒度÷デフォルトの時間粒度)
    ただし,表4-7に示す数値の2倍(上限)を超える環境には,対応できません。なお,上記の見積もり式は,詳細メトリックとサマライズメトリックの両方で計算し,その結果算出された監視できるオブジェクト数,監視できるメトリック数が小さくなる方を基準に見積もってください。
  • PAMDBをセットアップしたあとで,PAMDBのデータを保持したままdatabase_scaleの値を変更してセットアップし直すことはできません。あとからdatabase_scaleの値を変更する場合は,PAMDBをアンセットアップし,運用を始めからやり直す必要があります。オブジェクトを随時追加していくような運用の場合には,database_scaleの値は想定される最終的なオブジェクトの最大数を基準にして見積もってください。
    なお,database_scaleにLLを指定して,想定される運用環境よりもさらに大規模なシステムを監視する場合は,複数台のPFM - Analysis Managerを使用してシステムを監視することをお勧めします。
  • database_scale = Sは,PFM - Analysis導入時などに評価用として使用してください。基本的にはデフォルトのM以上を使用することをお勧めします。
  • オブジェクト数とメトリック数がPAMDBで監視できる範囲を超えていないかを確認する方法については,「(7) 監視しているオブジェクト数とメトリック数の把握」を参照してください。

なお,クラスタシステムで運用する場合は,共有ディスク上とローカルディスク上にそれぞれ次の表に示す容量が必要になります。

表4-9 クラスタ運用で必要なディスク容量

database_scaleの値必要なディスク
容量の合計
共有ディスクに
必要な容量
ローカルディスクに必要な容量
S5ギガバイト4.3ギガバイト0.7ギガバイト
M(デフォルト)25ギガバイト21.0ギガバイト4.0ギガバイト
L50ギガバイト42.0ギガバイト8.0ギガバイト
LL80ギガバイト72.0ギガバイト8.0ギガバイト

(2) PAMDBの再セットアップについて

次に示す場合は,PAMDBのセットアップを再度実行します。

再セットアップの手順を次に示します。

  1. PAM - PAMDB以外のPFM - Analysis Managerのサービスを停止する。
    PAM - PAMDBは起動している状態にしておいてください。
  2. pamdbunsetupコマンドを実行する。
    コマンドの実行に失敗した場合は,エラーに対処したあと,再度実行してください。
  3. pamdbsetupコマンドを実行する。
    コマンドの実行に失敗した場合は,エラーに対処したあと,再度実行してください。

PAMDBは初期化されているため,「3.3.1 PFM - Analysis Managerのセットアップ」を参照して,動作条件,採取ツールの設定,およびPAMDBへの登録をしてください。

(3) PAMDBの再編成

データの追加や削除を繰り返すと,PAMDBの格納効率が悪くなり,検索性能が低下することがあります。このような場合には,reorganization.batコマンドを使用して,PAMDBを再編成してください。ソースがPA-Manager(PAMDB)で,メッセージIDがKFPH00212-Iのメッセージがイベントログに出力されている場合は,PAMDBを再編成することをお勧めします。

reorganization.batコマンドについては,「10. コマンド」の「reorganization.bat(PAMDBを再編成する)」を参照してください。

PAMDBの再編成手順を次に示します。

  1. PAM - PAMDB以外のPFM - Analysis Managerのサービスを停止する。
    PAM - PAMDBは動作していることが必要です。
  2. reorganization.batコマンドを実行する。
  3. 必要に応じて手順1で停止したサービスを起動する。

(4) PAMDBの空きページ解放

PAMDBでは,収集されたデータを「ページ」と呼ばれる領域に格納しています。格納されたデータは,データの削除を行うとすべてのデータがなくなりますが,この状態では「空きページ」になるだけで,解放しないと再利用されません。空きページが増加すると,格納効率の低下や性能劣化の原因となることがあります。そのため,空きページの解放を,2週間に1回を目安に実施することをお勧めします。

空きページの領域を解放するには,pamdbreclaim.batコマンドを実行します。reorganization.batコマンドを使ったPAMDBの再編成では,そのつどPFM - Analysis Managerの運用を停止する(PAM - PAMDB以外のPFM - Analysis Managerのサービスを停止する)必要がありますが,pamdbreclaim.batコマンドを使用すると,PFM - Analysis Managerの運用を停止することなく,reorganization.batコマンドによる再編成の一部の機能でもある空きページの解放も行うことができます。定期的にpamdbreclaim.batコマンドを実行することで,reorganization.batコマンドによる再編成の実施間隔(運用サイクル)を延長させることができます。

pamdbreclaim.batコマンドの詳細については,「10. コマンド」の「pamdbreclaim.bat(PAMDBの空きページを解放する)」を参照してください。

(5) PAMDBの空き容量の確認について

pamdbls.batコマンドを実行すると,結果が次のように表示されます。

STATE OF RDAREA
RDAREA               ID       STATUS                       TYPE
                             OPNMODE
RDDATA10             4        OPEN                         USER
                             INITIAL
    SEGMENT 2487 / 2500
RDINDX10             5        OPEN                         USER
                             INITIAL
    SEGMENT 2716 / 2760

セグメントとは,PAMDBの容量を表す単位を示します。RDDATA10およびRDINDX10は,PAMDBのデータを格納する領域を示します。

SEGMENTに,未使用セグメント数/全セグメント数が表示されます。この例の場合,RDDATA10は未使用セグメント数が2,478で全セグメント数が2,500です。RDINDX10は未使用セグメント数が2,716で全セグメント数が2,760です。

RDDATA10,RDINDX10のどちらかの未使用セグメント数が少なくなったら,PAMDBを再編成することをお勧めします。

(6) PAMDBのデータの移行

あるサーバ(移行元サーバ)から別サーバ(移行先サーバ)にPAMDBのデータを移行できます。移行の手順は,移行元サーバでpamdbunld.batコマンドを実行してアンロードデータを取得し,移行先サーバでpamdbload.batコマンドを実行してデータをロードします。移行の対象となるデータは,Definerで登録したシステム構成定義情報や採取ツールから収集した稼働性能情報など,PAMDBに格納されているデータすべてです。

pamdbunld.batコマンドおよびpamdbload.batコマンドを使用すると,移行元と移行先のサーバ間でホスト名(IPアドレス)やPFM - Analysis Managerのインストール先ディレクトリが異なる場合でも,データを移行できます。ただし,移行元サーバと移行先サーバ間では,PFM - Analysis Managerのバージョンが一致している必要があります。また,移行先サーバでデータロードを行う前にPAMDBのセットアップを完了させておく必要があります。

なお,backup.batコマンドおよびrecovery.batコマンドによるバックアップ,リカバリーは,万一のシステム障害に備え,同じ環境を復元する目的のコマンドです。そのため,別サーバへの移行に使用することはできません。

pamdbunld.batコマンド,pamdbload.batコマンドの詳細については「10. コマンド」を参照してください。

PAMDBのデータ移行手順を次に示します。

  1. 移行元サーバで,PAM - PAMDB以外のPFM - Analysis Managerのサービスを停止する。
    PAM - PAMDBは起動している状態にしておいてください。
  2. 移行元サーバで,pamdbunld.batコマンドを実行する。
  3. 移行先サーバで,移行元バージョンと同一バージョンのPFM - Analysis Managerをインストールする。
  4. 移行元サーバから移行先サーバにファイルをコピーする。
    移行元サーバで取得したアンロードデータファイル,およびセットアップで編集した定義ファイルのすべてを移行先サーバにコピーしてください。
  5. 移行先サーバで,pamdbsetupコマンドを実行する。
    バージョンアップ時と同様に,pamunld.batコマンド,pamdbload.batコマンドによるデータ移行時には,移行先サーバのPAMDBの領域サイズは移行元のPAMDBの領域サイズと同じ,もしくはより大きなサイズでセットアップされた環境に対して行うことができます。詳細は,「付録J.4(4) バージョンアップ時のPAMDBの領域サイズの変更について」を参照してください。
  6. 移行先サーバで,pamdbload.batを実行する。

(7) 監視しているオブジェクト数とメトリック数の把握

運用中に監視オブジェクト数と監視メトリック数を把握したい場合は,pamdumpdefコマンドを実行します。pamdumpdefコマンドの詳細については,「10. コマンド」の「pamdumpdef(PAMDBの監視定義情報一覧をファイル出力する)」を参照してください。

pamdumpdefコマンドを次のように指定することで,PAMDBに格納されている監視オブジェクト数と監視メトリック数を把握できます。

pamdumpdef -c count -t inst -s all

コマンド実行結果のオブジェクト数とインスタンス数は,表4-7の監視オブジェクト数および監視メトリック数の目安と照らし合わせることで,運用中の監視定義情報がPAMDBで監視できる範囲に収まっているかを確認できます。

(8) 対処が必要なPAMDBのメッセージ

ソースがPA-Manager(PAMDB)でイベントログに出力されるメッセージは,PAMDBが出力するメッセージです。次の表に示すメッセージIDのメッセージが出力された場合は,それぞれの対処方法に従って運用してください。

表4-10 対処が必要なPAMDBのメッセージ一覧

メッセージID対処方法
KFPH00211-IPAMDBの容量不足を示すメッセージです。このメッセージが出力された場合は,次の手順に従って対処してください。
  1. 監視対象メトリック数を見直す。
    監視対象メトリック数がdatabase_scaleの指定に応じて,表4-7に示した範囲以内に収まっているか,見直してください。それ以上の監視対象メトリックをPAMDBに登録している場合は,範囲内に収まるように監視システム構成を変更してください。
  2. PAMDBの再編成を実行する。
    reorganization.batコマンドを使用してPAMDBの再編成を実行します。reorganization.batコマンドについては,「10. コマンド」の「reorganization.bat(PAMDBを再編成する)」を参照してください。
KFPH00212-IPAMDBの再編成が必要になったことを示すメッセージです。このメッセージが出力された場合は,reorganization.batコマンドを使用して,PAMDBを再編成してください。reorganization.batコマンドについては,「10. コマンド」の「reorganization.bat(PAMDBを再編成する)」を参照してください。
KFPH22031-WPAMDBの特定のテーブルに格納されているデータが予想より大きくなり過ぎたことを示すメッセージです。監視対象メトリック数がdatabase_scaleの指定に応じて,表4-7に示した範囲以内に収まっているか,見直してください。それ以上の監視対象メトリックをPAMDBに登録している場合は,範囲内に収まるように監視システム構成を変更してください。
KFPS00443-IPAMDBの排他資源管理テーブルが不足したことを示すメッセージです。メトリック値の自動削除処理の対象となるデータ量によっては,削除に失敗しこのメッセージが出力される場合があります。この場合はpamdbcleanupコマンドを実行して,保持期間を超過したデータを削除してください。pamdbcleanupコマンドについては,「10. コマンド」の「pamdbcleanup(保持期間を超過したデータを一括して削除する)」を参照してください。
KFPS05210-IPAMDBの起動が完了したことを示すメッセージです。エラーではないため,対処の必要はありません。
PAM - PAMDBサービスを開始した直後は,PAMDBの起動処理が完了していていないため,起動が完了したかどうかを正確に判断したいときは,このメッセージが出力されているかどうかで判断してください。
KFPS01850-IPAMDBの停止を示すメッセージです。
バージョンアップ前には,必ずこのメッセージを参照して,PAMDBの正常終了を確認してください。バージョンアップの詳細については,「付録J.1 PFM - Analysis Managerのバージョンアップ」を参照してください。