(1) オブジェクトのステータスについて
PFM - Analysisが判定するオブジェクトのステータスは,オブジェクトから稼働性能情報を収集できるかどうかを判断したものです。そのため,ほかの監視プログラムのステータスと一致しないことがあります。ステータスを正確に把握したい場合は,NNMなどの監視プログラムをあわせてご使用ください。
(2) メトリック値の補正について
JP1/SSOで取得するメトリックには,複数のMIB値を計算して値を出しているものがあります。このような場合,まれに誤差が生じて,論理的に有り得ない数値になることがあります。PFM - Analysisでは,誤差が生じたメトリック値を補正できます。
(3) メトリックの予測値やトレンド値の補正について
メトリックの予測値やトレンド値は,マイナスの値や,100%を超える値になることがあります。例えば,リソースの空き容量を表すメトリックの場合,マイナスの予測値は,空き容量がどの程度不足しているのかを表す目安として有効です。また,リソースの使用率を表すメトリックの場合,100%を超える予測値は,リソースがどの程度不足するのかを表す目安として有効です。そのため,これらの値に対して,非マイナス補正や%補正は行われません。
(4) アプリケーションオブジェクトの危険度について
Bottleneck Analyzerのシステム構成ツリーに表示されるオブジェクトの危険度は,通常,グループ,システム,ビューなど,上位のシステム構成要素に伝わりますが,ホストオブジェクトの下に作成したアプリケーションオブジェクトの危険度は,その上のホストオブジェクトには伝わらず,グループ,システム,またはビューなどに伝わります。ホストオブジェクトの危険度は,ホストオブジェクトのメトリックの危険度だけで決定され,下位のアプリケーションオブジェクトの危険度は伝わりません。
(5) メトリック値の予測について
PFM - Analysisが予測するメトリック値は,メトリックの取得データに統計学的手法を適用して得られた値であり,メトリック値を保証するものではありません。
(6) 危険域到達時刻予測とグラフ画面の予測について
Bottleneck Analyzerの危険域到達時刻予測とグラフ画面での予測は,使用している予測手法が異なるため,結果に違いが生じることがあります。
(7) 危険域到達時刻予測の予測時刻について
危険域到達時刻予測では,対象期間のメトリック値に対する近似直線を求めて,この直線が危険域に到達する時刻を予測時刻とします。このため,予測時刻として得られる時刻が,必ずしも対象期間より未来の時刻となるわけではありません。近似直線が対象期間内に危険域に到達したら,対象期間内のデータに危険域のデータがなくても,予測時刻は対象期間内の時刻になります。反対に,分析の対象期間内に危険域になっているデータがある場合でも,予測時刻が対象期間よりも未来の時刻になることもあります。
これらの現象は,危険域到達時刻予測の予測時刻が近似直線で求められる理論値であるために発生するもので,問題ではありません。このような結果は,危険度が頻繁に変化するようなメトリックの場合に多く見られます。変化が緩やかなメトリックの場合は,対象期間のメトリック値がまだ危険域に到達していなければ,多くの場合,予測時刻は対象期間よりも未来の時刻になります。どの場合も,危険域到達時刻予測による予測時刻は,システムのどの部分に問題が発生する可能性が高いのかを知るために有効な情報となります。
(8) 警告メッセージの保持期間の設定値について
PFM - Analysis Manager動作条件定義ファイル(pam.conf)の警告メッセージの保持期間(msg_holddate)には,サマライズメトリックの保持期間(smryz_holddate)の上限である1460日まで指定できます。しかし,警告メッセージは,詳細メトリックの時間粒度にあわせて発行される(詳細メトリックで決定した危険度とステータスに基づき発行される)ため,警告メッセージの保持期間をサマライズメトリックの保持期間にあわせると,DBに保存される警告メッセージは膨大な量となります。性能面を考慮し,警告メッセージの保持期間には詳細メトリックの保持期間(mtr_holddate)と同じ値を指定することをお勧めします。
詳細メトリックの保持期間のデフォルト値は30日です。詳細メトリックの保持期間の指定を省略する場合,警告メッセージの保持期間には30日を指定することをお勧めします。
(9) 採取ツールの切り替えについて
Definerで,メトリックの採取ツールをインポート以外の採取ツールからインポートへ切り替える際,収集デーモンが停止していると,正しく切り替えられません。切り替え直前の危険度が,切り替えたあとでも継続しているように見えてしまいます。そのため,採取ツールをインポート以外からインポートへ切り替える場合は,収集デーモンが動作していることを確認してからPAMDBに登録してください。
(10) Definerでのオブジェクトの削除について
PAMDBに登録しているオブジェクトをDefinerで削除したあとで削除したオブジェクトの名称を再利用した場合は,pamchgobjnameコマンドを使用して削除したオブジェクトの名称を変更してください。PAMDBでは,過去の分析に必要なため,削除されたオブジェクトの情報の管理しています。したがって,過去に存在したオブジェクトも含めて名称が重複しないように設定する必要があります。なお,pamchgobjnameコマンドを使用する場合は,Definerを停止しておく必要があるので注意してください。pamchgobjnameコマンドの詳細については,「10. コマンド」の「pamchgobjname(過去に登録したオブジェクト名を変更する)」を参照してください。
なお,Definerで新規追加したオブジェクトをPAMDBに登録する前に削除する場合は,名称変更は不要です。そのまま削除してください。
(11) Bottleneck Analyzerに表示されるメトリック値について
Bottleneck Analyzerで表示されるメトリック値は,表示できる位の一つ下位の位を四捨五入して表示します。例えば,小数点第3位まで表示する個所では,小数点第4位を四捨五入します。
危険度を決定するしきい値の判定では,PAMDB内の倍精度実数のメトリック値を,しきい値と比較して判定します。このため,Bottleneck Analyzerに表示されるメトリック値では,しきい値条件に該当していないように見える場合でも,しきい値条件に該当したと判定されて危険度が変化したり,警告メッセージが発行されたりすることがあります。例えば,しきい値判定条件が「L」(より小さい)で危険しきい値が20の場合で,PAMDBに格納されているメトリック値が19.999999のとき,Bottleneck Analyzerでは四捨五入した20が表示されますが,しきい値の判定では19.999999の値を使用するため危険域と判定されます。これは問題ではありません。
通常は,PFM - Analysisが標準でサポートしているメトリック値が上記のようになることはほとんどありません。ユーザー拡張で定義したメトリックやJP1/ESPのユーザー定義サービスを使用したメトリックが,上記のようになることがわかっている場合には注意してください。
(12) Bottleneck Analyzerで表示するプロパティ画面について
[オブジェクトのプロパティ]画面および[メトリックのプロパティ]画面には,最新の監視システム構成定義に基づいた情報が表示されます。削除したオブジェクトまたはメトリックについては,削除した時点の情報がプロパティとして表示されます。
[ビューのプロパティ]画面,[システムのプロパティ]画面,および[グループのプロパティ]画面には,時刻ポインターで指定した時刻の監視システム構成定義に基づいた情報が表示されます。
(13) Bottleneck Analyzerでのインスタンスの扱いについて
Bottleneck Analyzerでは,複数のインスタンスがあるメトリックについて,個々のインスタンスを参照したり,分析対象にしたりできます。
個々のインスタンスを参照,分析できるのは,最新の監視システム構成定義で,個々のインスタンスを保存する設定にしているメトリックだけです。過去に個々のインスタンスを保存する設定にしていた場合でも,最新の監視システム構成定義で,その設定を解除した場合は,Bottleneck Analyzerで個々のインスタンスを扱うことはできません。なお,削除したメトリックについては,削除された時点の設定に従います。
このため,個々のインスタンスを保存するかどうかは,メトリックごとに運用方法を統一しておくことをお勧めします。インスタンスが複数ある場合の運用については,「5.5.6 複数のインスタンスがあるメトリックの運用方法」を参照してください。
(14) Bottleneck Analyzerで表示される取得可能期間について
Bottleneck Analyzerの[データ取得設定]画面には,現在時刻と,詳細メトリックまたはサマライズメトリック保持期間の設定値から計算した理論値が表示されます。運用開始直後などは,データが存在しない期間が取得可能期間に含まれていることがあります。
また,メトリックを自動削除しない運用の場合は,古いデータが存在する期間が取得可能期間に含まれないことがあります。取得可能期間に表示されない古いデータも取得できます。[データ取得設定]画面で取得可能期間外の期間を指定すると警告が表示されますが,続行してください。
(15) JP1/SSOで監視する監視対象の重複について
JP1/SSOで監視するメトリックでは,同じ採取ツールサーバから,同一監視対象の同一監視項目を監視しないようにしてください。同一監視項目とは,JP1/SSOでのリソースIDが同じ項目を示します。注意する点を次に説明します。
(16) Webトランザクションファイルの直接編集について
Webトランザクションファイルをテキストエディターなどによって直接編集する際の注意事項を次に示します。
(17) 外部プログラム定義ファイル(pavprog.conf)に指定するプログラムについて
外部プログラム定義ファイルには,GUIを表示するプログラムを指定することを前提としています。コマンドプロンプトから実行して,結果を標準出力に出力するようなコマンドやバッチファイルを実行したい場合には,cmdコマンドを使用し,cmdコマンドの引数に目的のコマンドやバッチファイルを指定してください。
例えば,新しいコマンドプロンプトを表示してコマンドを実行するには,cmd /c start コマンド名 のように指定します。また,コマンド実行後にコマンドプロンプトを閉じないで残すようにする場合は,cmd /c start cmd /k コマンド名のように指定します。ご使用の環境や実行するコマンドまたはバッチファイルの仕様などにあわせて,適切なオプションを指定してください。cmdコマンドの詳細については,OSのヘルプなどを参照してください。
(18) 自動コマンド実行定義ファイル(pamaction.conf)に指定するプログラムについて
自動コマンド実行定義ファイルには,GUIを表示しない,および標準出力に何も出力しないコマンドを指定することを前提としています。GUIを表示するコマンドは指定できません。
標準出力にメッセージなどを出力するコマンドを実行したい場合は,そのコマンドを呼び出すバッチファイルを作成して,バッチファイルでコマンドの出力を抑止するような処理をしてください。また,バッチファイルを自動コマンド実行定義ファイルに指定する場合には,cmdコマンドを使用し,cmdコマンドの引数に目的のバッチファイルを指定してください。
例えば,エコーをオフにしてバッチファイルを実行するには,cmd /q /c バッチファイル名のように指定します。ご使用の環境や実行するバッチファイルの仕様などにあわせて,適切なオプションを指定してください。なお,コマンドプロンプトのウィンドウを新たに開くためのstartは使用しないでください。cmdコマンドの詳細については,OSのヘルプなどを参照してください。
(19) Bottleneck Analyzerで表示される未来の部分の危険度について
Bottleneck Analyzerの[データ取得設定]画面で,取得期間の終了時刻に未来の時刻を指定した場合,Bottleneck Analyzerのメイン画面には未来の部分についてもオブジェクトやメトリックの危険度が表示されます。その場合は,Bottleneck AnalyzerがPFM - Analysis Managerからデータを取得した最新の危険度が,そのあともそのまま継続するものと仮定して表示します。
分析上意味がないため,Bottleneck Analyzerの[データ取得設定]画面に未来の時刻は指定しないことをお勧めします。取得期間の終了時刻を設定するための目安には,[データ取得設定]画面に表示される取得可能期間の終了時刻を使用してください。
(20) 分析期間内の値がすべて同じメトリックの相関分析について
分析期間内のメトリック値がすべて同じ値である(グラフで表示すると水平直線になる)メトリックは,相関分析の対象になりません。相関分析を実行しても,有効な分析結果は得られません。
(21) メトリックの収集が行われていない場合の危険度やステータスについて
採取ツールやPFM - Analysisの停止などが原因でメトリックの収集が正常に行われていない場合,収集デーモンがすぐにメトリック値,危険度,ステータスなどを判定することはありません。あとで回収処理が正しく実行できたときに,過去にさかのぼってメトリック値,危険度,ステータスなどをPAMDBに格納するようになっています。これは,詳細メトリックの粒度よりメトリック回収間隔を長く設定しているような場合に,アダプターがメトリックの回収処理を実行した時点で採取ツールが止まっていただけで,それまでに採取ツールが収集,保持していたデータをすべて無視してしまうことがないようにするためです。このため,採取ツール起動時に,危険度やステータスがさかのぼって確定すると,自動コマンド実行やJP1イベントの発行も実行されます。過去に発行されたコマンドやイベントが遅延して処理されたように見えますが,問題ありません。
なお,採取ツールがVPISの場合は,VPISのサービス停止時もVPISのDBにはアクセスできるため,回収は正しく実行されます。VPISのDBへのアクセスも失敗するような場合には,採取ツール停止の場合の動作が適用されます。
また,採取ツールが正常に動作していて監視対象のオブジェクトだけが停止しているような場合は,上記のような動作にはなりません。適切なタイミングでオブジェクトの停止が検知されて,危険度が「不明」に,ステータスが「停止中」に,それぞれ変化します。
(22) 標準のメトリック名を変更した運用
標準のメトリック名を任意の名称に変更したい場合(例えば,Webトランザクションのメトリックである「総応答時間(スコープ1)」を「Webシステムログイン時間」に変更する場合など)は,ユーザー拡張でメトリックタイプ・オブジェクトタイプを再定義してください。なお,ユーザー拡張については,「8. ユーザー拡張」を参照してください。
(23) コマンドの同時実行について
PFM - Analysis Managerのサービスが正しく動作している状態では,次に示すコマンドを同時に実行できる数は最大5つです。同時に5つを超える数のコマンドを実行した場合は,エラー終了する場合があります。