コマンドの記述形式

ここでは,コマンドの記述形式として,コマンドの指定方法と,コマンドの文法の説明に使用する記号について説明します。

コマンドの指定方法

コマンドの指定形式を次に示します。

[図データ]

(1)を「オプション」と呼びます。(2)を「引数」と呼びます。

次に,引数の指定方法を説明します。

ユニット名の指定方法

コマンド引数の任意名としてユニット名を指定する方法について説明します。

ユニット名の指定形式を次に示します。

論理ホスト名を指定できるコマンドの場合(他ホストのユニットにリモートアクセスする場合)

[[論理ホスト名:][スケジューラーサービス名]:]ジョブネットワーク要素名[:@実行ID]

論理ホスト名を指定できないコマンドの場合(自ホストのユニットにローカルアクセスする場合)

[[スケジューラーサービス名]:]ジョブネットワーク要素名[:@実行ID]

次に,各項目について説明します。

論理ホスト名
論理ホスト名を指定できるコマンドと,指定できないコマンドがあります。詳細は各コマンドの説明を参照してください。
自ホスト内に複数の論理ホスト名を持つ場合,スケジューラーサービス名と環境変数JP1_HOSTNAMEの指定によって該当する論理ホスト名が特定されます。したがって,論理ホスト名を指定する必要はありません。指定した場合,自ホスト内であってもTCP/IPプロトコルによる通信が発生するため,認証の設定が必要になります。
論理ホスト名を省略した場合,指定したスケジューラーサービス名の先頭に環境変数AJSMANAGERHOSTの内容が補われます。
環境変数AJSMANAGERHOSTを設定していない場合,自ホスト内として扱われ,環境変数JP1_HOSTNAMEに指定した論理ホスト名のサービスとします。
環境変数JP1_HOSTNAMEを指定していない場合,物理ホストのJP1/AJS2サービスが仮定されます。
スケジューラーサービス名
スケジューラーサービス名を指定した場合,-Fオプションおよび環境変数AJSCONFは無視されます。
スケジューラーサービス名を省略した場合,-Fオプションに指定した値が仮定されます。-Fオプションを省略した場合,環境変数AJSCONFの値が仮定されます。環境変数AJSCONFを設定していない場合は,デフォルトのスケジューラーサービス名が仮定されます。
ジョブネットワーク要素名
ジョブネットワーク要素名には,ジョブグループ名,ジョブネット名,ジョブ名を指定します。これらは完全名で指定することもできます。
完全名は,先頭が「/」で,ルートジョブグループからそのジョブネットワーク要素までの名称を「/」で区切って指定したものです。ジョブネットワーク要素の完全名は,JP1/AJS2の中で一意に管理されています。
ジョブネットワーク要素名を完全名で指定しなかった場合,指定した名称の先頭に環境変数AJSPATHの内容が補われます。環境変数AJSPATHを設定していない場合は,指定した名称の先頭に「/」が補われます。
前製品(JP1/AJS)からの移行のために使用できる記号文字
" & ' * < > ? [ ¥ ] ^‘ {|} ~
をジョブネットワーク要素名に使用している場合は,ジョブネットワーク要素名全体を「"(ダブルクォーテーションマーク)」で囲み,記号文字の前に「¥」文字を置いてキャストする必要があります(例:ajsprintコマンドで,ユニット/net[1]を指定する場合:ajsprint "/net¥[1¥]")。
なお,これらの記号は前製品(JP1/AJS)からの移行時のために用意されていますので,その他の用途では使用しないでください。
実行ID
実行IDを指定できるコマンドと,指定できないコマンドがあります。詳細は各コマンドの説明を参照してください。
実行IDは,ジョブネットを登録するとき,最上位ジョブネットの実行予定の一つに対して一つ割り振られる番号のことで,JP1/AJS2 - Viewやajsshowコマンドで確認できます。実行IDを指定できるコマンドで,実行IDの指定を省略すると,各コマンドが操作の対象とする世代を自動的に判定します。ジョブネットの世代の自動判定については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 解説 4.2 ジョブネットの世代管理」を参照してください。

プランニンググループ使用時のコマンドでのユニット名の指定方法

プランニンググループの下にあるユニットを次に示すコマンドで操作する場合,ルートジョブネット名を省略しても,コマンド実行時に世代があるユニットが操作対象として自動的に選択されます。したがって,プランニンググループに対してコマンドを実行すれば,ルートジョブネット名を省略しても,運用中のルートジョブネットや下位にあるジョブに対して操作できます。

操作対象となるユニットが自動的に選択されるかどうかは,上記のコマンドの-Xオプションで指定した値,または環境変数AJSAUTOJUDGEで設定した値で判定されます。その他のコマンドでは,環境変数AJSAUTOJUDGEの設定にかかわらず,プランニンググループの下にあるルートジョブネット名は省略できません。操作したいユニットを完全名で指定します。

各コマンドの詳細については,「コマンド一覧」を参照してください。環境変数AJSAUTOJUDGEの詳細については,「環境変数一覧」を参照してください。

自動選択の設定が有効かどうかは,次の規則に従って判定されます。

  1. コマンドの-Xオプションに指定した値が優先されるため,-Xオプションに指定がある場合,その指定値で判定する。
    「-X yes」の場合
    自動選択の設定が有効です。プランニンググループの下のルートジョブネット名を省略してユニット名を指定できます。運用中のユニットが自動的に選択されて,該当するユニットに対して操作します。
    「-X no」の場合
    自動選択の設定が有効ではありません。プランニンググループの下のルートジョブネット名を省略できません。操作したいユニット名の完全名を指定します。
    「-X auto」の場合
    プランニンググループの下のルートジョブネット名を完全名で指定します。この場合,指定したユニットが操作対象になります。
    ただし,プランニンググループの下のルートジョブネット名を省略して指定したパス名と,同じ名称のユニットがある場合,省略したものとして扱われ,運用中のユニットが自動選択されて,該当するユニットに対して操作します。

  2. -Xオプションに指定がない場合,環境変数AJSAUTOJUDGEの設定値で判定する。
    AJSAUTOJUDGEが「YES」の場合
    自動選択の設定が有効です。プランニンググループの下のルートジョブネット名を省略してユニット名を指定できます。運用中のユニットが自動的に選択されて,該当するユニットに対して操作します。
    AJSAUTOJUDGEが「NO」の場合
    自動選択の設定が有効ではありません。プランニンググループの下のルートジョブネット名を省略できません。操作したいユニット名の完全名を指定します。
    AJSAUTOJUDGEが「AUTO」の場合
    プランニンググループの下のルートジョブネット名を完全名で指定します。この場合,指定したユニットが操作対象になります。
    ただし,プランニンググループの下のルートジョブネット名を省略して指定したパス名と,同じ名称のユニットがある場合,省略したものとして扱われ,運用中のユニットが自動選択されて,該当するユニットに対して操作します。
    値を設定しない場合
    自動選択の設定が有効です。プランニンググループの下のルートジョブネット名を省略してユニット名を指定できます。運用中のユニットが自動的に選択されて,該当するユニットに対して操作します。
    ただし,ジョブネット名を省略したパターンのユニット名が見付からない場合は,ユニットの完全名で指定したと仮定され,該当するユニットに対して操作します。該当するユニットがない場合,エラーになります。

    ジョブグループの下位にあるユニットに対しては,-Xオプションで値を指定したり,環境変数AJSAUTOJUDGEで値を設定したりしても,ルートジョブネット名は省略できません。
    コマンドをリモート実行する場合の環境変数AJSAUTOJUDGEの値は,次に示す値に従います。
    Windowsの場合
    JP1/AJS2 Monitorサービスを起動したときの値
    UNIXの場合
    ajsinetdを起動したときの値

コマンドでプランニンググループの下位にあるユニットを操作する場合のユニット構成の例を次の図に示します。

図1-1 コマンド操作時のプランニンググループのユニット構成例

[図データ]

上記のユニット構成で,オプションの指定,または環境変数の設定によってどのユニットが操作対象になるかを,ajsplanコマンドを例にして次に示します。

「-X yes」の場合
コマンドの実行例:ajsplan -h -X yes /プランニンググループ
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-3
コマンドの実行例:ajsplan -h -X yes /プランニンググループ/ジョブ1
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-3/ジョブ1
「-X no」の場合
コマンドの実行例:ajsplan -h -X no /プランニンググループ/ジョブネット1-3/ジョブ1
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-3/ジョブ1
「-X auto」の場合
コマンドの実行例:ajsplan -h -X auto /プランニンググループ
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-3
コマンドの実行例:ajsplan -h -X auto /プランニンググループ/ジョブネット1-1
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-1
コマンドの実行例:ajsplan -h -X auto /プランニンググループ/ジョブ1
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-3/ジョブ1
AJSAUTOJUDGEが「YES」の場合
コマンドの実行例:ajsplan -h /プランニンググループ
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-3
コマンドの実行例:ajsplan -h /プランニンググループ/ジョブ1
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-3/ジョブ1
AJSAUTOJUDGEが「NO」の場合
コマンドの実行例:ajsplan -h /プランニンググループ/ジョブネット1-3/ジョブ1
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-3/ジョブ1
AJSAUTOJUDGEが「AUTO」の場合
コマンドの実行例:ajsplan -h /プランニンググループ
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-3
コマンドの実行例:ajsplan -h /プランニンググループ/ジョブネット1-1
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-1
コマンドの実行例:ajsplan -h /プランニンググループ/ジョブ1
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-3/ジョブ1
AJSAUTOJUDGEに値を設定しない場合
コマンドの実行例:ajsplan -h /プランニンググループ
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-3
コマンドの実行例:ajsplan -h /プランニンググループ/ジョブネット1-1
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-1
コマンドの実行例:ajsplan -h /プランニンググループ/ジョブ1
操作対象ユニット:プランニンググループ/ジョブネット1-3/ジョブ1

プランニンググループの下のルートジョブネット名(プランニンググループ/ジョブネット1-2)と,ルートジョブネットの下のユニット名(プランニンググループ/ジョブネット1-2/ジョブネット1-2)で同じ名称のユニットがある場合,ルートジョブネット名を省略したユニット名しか指定できません。運用中のユニットが自動的に選択されて,該当するユニットに対して操作します。

プランニンググループの下のルートジョブネット名(プランニンググループ/ジョブネット1-2)に対して操作したい場合,-Xオプションに「no」を指定するか,または環境変数AJSAUTOJUDGEに「NO」を設定して,ユニットの完全名で指定してください。

総称名の指定方法

任意名を指定する場合に,総称名を表す記号(「*」「?」「[」「]」)を指定できる場合があります。

例えば,ジョブネット(/net1)中にジョブ(job1,job2,job3,job4)が定義されている場合,ジョブネット(/net1)中のすべてのジョブを操作対象にしたいときは,「/net1/*」,「/net1/job?」「/net1/job[1234]」のように指定できます。

コマンドの文法の説明に使用する記号

コマンドの文法の説明に使用する記号を次の表に示します。

表1-1 コマンドの文法の説明に使用する記号

記号意味と例
|
(ストローク)
複数の項目に対して項目間の区切りを示し,「または」の意味を示します。
(例)
「A|B|C」は,「A,B,またはC」を示します。
{ }
(波括弧)
この記号で囲まれている複数の項目の中から,一組の項目を必ず選択します。項目と項目の区切りは「|」で示します。
(例)
「{A|B|C}」は,「A,B,またはCのどれかを必ず指定する」ことを示します。
[ ]
(角括弧)
この記号で囲まれている項目は,任意に指定できます(省略できます)。
(例)
「[A]」は,「必要に応じてAを指定する」ことを示します(必要でない場合は,Aを省略できます)。
「[B|C]」は,「必要に応じてB,またはCを指定する」ことを示します(必要でない場合は,BおよびCを省略できます)。
...
(点線)
この記号の直前に示された項目を繰り返して複数指定できます。なお,項目を複数指定する場合は,項目の区切りに1バイトの空白文字(半角スペース)を使用します。
(例)
「A B...」は,「Aのあとに,Bを複数指定できる」ことを示します。
_
(下線)
括弧で囲まれているすべての項目を省略したときに,システムが採用する値を示します。
(例)
「[A|B]」は,「AおよびBを指定しなかった場合,システムはAを採用する」ことを示します。

コマンドのリモート実行

JP1/AJS2 - Managerマシンから,ほかのJP1/AJS2 - Managerマシンに対してコマンドをリモート実行できます。

コマンドのリモート実行機能を使用すると,実行先の論理ホストのスケジューラーサービスに対して,ジョブネットワーク要素の操作やスケジューラーサービスの現在の運用環境を出力できます。

リモート実行したコマンドの標準出力,標準エラー出力およびコマンドの戻り値は,コマンド投入元に反映されます。ただし,出力されるメッセージは,実行先のマシンの,JP1/AJS2 Monitorサービス起動時の言語種別に依存します。

リモート実行できるコマンドと,リモート実行の方法を次の表に示します。

表1-2 リモート実行できるコマンドとリモート実行の方法

コマンド名リモート実行の方法
ジョブ名,ジョブネット名,またはジョブグループ名に論理ホスト名を付加環境変数AJSMANAGERHOSTに論理ホスト名を指定オプションに論理ホスト名を指定
ajschange
ajschgjob
ajschgnet
ajsentry
ajsintrpt
ajskill
ajsleave
ajsplan
ajsprint
ajsrerun
ajsshow
ajsstatus
ajssuspend
(凡例)
○:指定できる。
-:指定できない。
コマンド実行時に使用される環境変数については,「環境変数一覧」の表1-6を参照してください。
注※
-hオプションで指定します。

コマンドをリモート実行するには,コマンド実行先のJP1/AJS2 Monitorサービスを起動してください。また,JP1/Baseのユーザー管理機能を使用して,ユーザー認証やユーザーマッピングなどを設定してください。

JP1/AJS2 Monitorサービスの起動については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 設計・運用ガイド 15.2.1 JP1/AJS2のサービスを手動で起動する」を参照してください。

JP1/Baseのユーザー管理機能の設定については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 3. セットアップ」(Windowsの場合),または「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 13. セットアップ」(UNIXの場合)を参照してください。

コマンド実行時の環境変数

論理ホストのJP1/AJS2サービスに対するコマンドを実行する場合は,環境変数JP1_HOSTNAMEに論理ホスト名を指定してください。

ジョブネットやジョブを操作するコマンドでは,ジョブネットワーク要素のアクセス権限を,コマンド実行時のOSユーザー名で判断します。OSユーザー名とJP1ユーザー名が異なる場合は,環境変数JP1_USERNAMEにJP1ユーザー名を設定してください。

コマンド実行時に使用される環境変数については,「環境変数一覧」の表1-6を参照してください。