18.4.2 クラスタシステムの環境設定の手順

18.4.1 クラスタシステムの環境設定の項目」で説明した項目を,コマンドで定義します。実行系と待機系でそれぞれ作業が必要です。

次に,環境設定のコマンドについて,実行系と待機系それぞれでの作業を説明します。なお,ここで説明する設定は,JP1/AJS2 - ManagerまたはJP1/AJS2 - Agentで実行してください。

環境設定の手順を次に示します。

[図データ]

<この項の構成>
(1) 実行系での作業(JP1/AJS2 - Manager)
(2) 待機系での作業(JP1/AJS2 - Manager)
(3) 実行系での作業(JP1/AJS2 - Agent)
(4) 待機系での作業(JP1/AJS2 - Agent)

(1) 実行系での作業(JP1/AJS2 - Manager)

  1. JP1/Baseの実行系での設定作業をする。
    JP1/Baseの作業については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
  2. 物理ホストをセットアップする。
    13.1.2 JP1/AJS2 - Managerのセットアップ」を参照して,物理ホストをセットアップしてください。
    JP1/AJS2 Console ManagerおよびJP1/AJS2 Console Agentを使用する場合は,それぞれ次のコマンドを実行します。

    /opt/jp1ajs2cm/bin/jp1ajs2cmsetup
    /opt/jp1ajs2/bin/jp1ajs2casetup

    すでに物理ホストのセットアップがされている場合は上記コマンドの実行は不要です。なお,JP1/AJS2 Consoleのサービスに対しては,自動起動および自動終了の設定が必要です。設定方法は「14.7.2(3) JP1/AJS2 Consoleサービスの自動起動および自動終了を設定する」を参照してください。
  3. jp1ajs2_setup_clusterコマンドを実行して論理ホストを設定し,共有ディスク上に共有ファイル,共有ディレクトリを作成する。
    すべての論理ホストと物理ホストのJP1/AJS2サービス,およびJP1/AJS2 Monitorサービスを停止したあと,jp1ajs2_setup_clusterコマンドを実行してください。
    jp1ajs2_setup_clusterコマンドの入力形式を次に示します。

    jp1ajs2_setup_cluster -h 論理ホスト名 [ -d 共有ディレクトリ名]
    [ -n 数値] [ -m { cold|warm|hot }]

    • -hオプションには,JP1/Baseで設定した論理ホスト名を指定します。
    • -dオプションは,実行系の環境設定時には必ず指定してください。このオプションには,共有ディレクトリと共有ファイルを作成する,共有ディスク上のディレクトリを指定します。共有ディレクトリとして,「指定したディレクトリ名/jp1ajs2/」を作成し,ローカルディスクの定義ファイル(/etc/opt/jp1ajs2/conf/下のファイル)をコピーします。実行するときには,必ず共有ディスクをマウントしておいてください。省略した場合は,待機系の環境設定を行います。
    • -nオプションには,スケジューラーサービスの名前を,そのマシンで一意にするための識別番号を1~20の間で指定します。実行系の環境設定時にだけ有効です。省略した場合は「2」が仮定されて「AJSROOT2」が作成されるため,「AJSROOT2」が作成されていない場合にだけ省略してください。指定する場合は,物理ホストおよび論理ホストで使用していないスケジューラーサービスの識別番号を指定してください。
      物理ホスト,またはjp1ajs2_setup_clusterコマンドを実行する論理ホスト上に,-nオプションで指定する識別番号と同じ番号のスケジューラーサービスがある場合は,警告メッセージが出力されますが,処理は正常終了します。jp1ajs2_setup_clusterコマンドを実行する論理ホストとは別の論理ホストにすでにあるスケジューラーサービスの識別番号と同じ番号を指定した場合は,メッセージを出力しないで正常終了します。
      物理ホストにすでに「AJSROOT2」がある場合に,-nオプションに「2」を指定した場合の警告メッセージの出力例を次に示します。
       
      <Warning> Duplicate with scheduler service(AJSROOT2) of physical host.
       
      また,jp1ajs2_setup_clusterコマンドでセットアップ済みの論理ホストにすでに「AJSROOT2」がある場合に,-nオプションに「2」を指定した場合の警告メッセージの出力例を次に示します。
       
      <Warning> Overwrite scheduler service(AJSROOT2) registry of the logical host.
       
      論理ホストで使用済みのスケジューラーサービスの識別番号を指定すると,コマンドは環境を上書きして異常終了します。この場合,「-dオプションで指定した共有ディレクトリ/jp1ajs2」ディレクトリを削除したあと,コマンドを再実行してください。
      なお,すでに指定されている識別番号は,jbsgetcnfコマンドで共通定義情報を取得し,共通定義パラメーターAJSSERVICEIDに設定されている値で確認できます。共通定義パラメーターAJSSERVICEIDは,スケジューラーサービスが複数設定されている場合には複数の設定値があります。そのため,物理ホストおよび論理ホストの共通定義を取得し,すべての定義で指定する識別番号が重複しないことを確認してください。
    • -mオプションには,スケジューラーサービスの起動モードを指定します。実行系の環境設定時にだけ有効です。省略した場合は,スケジューラーサービス環境設定ファイル(Schedule.conf)のSTARTMODEパラメーターに指定されている値を引き継ぎます。
     
    jp1ajs2_setup_clusterコマンドの詳細については,「20. セットアップ時に使用するコマンド jp1ajs2_setup_cluster(UNIX限定)」を参照してください。
  4. JP1/AJS2 Console Managerの環境設定をする。
    JP1/AJS2 Console Managerを使用している場合,次の手順でJP1/AJS2 Console Managerの環境設定をしてください。
    なお,JP1/AJS2 Console Agentのクラスタ運用時の環境設定は,JP1/AJS2 Managerのクラスタ運用時のセットアップ中に実施されるため,JP1/AJS2 Console Agentのクラスタ運用時の環境設定は必要ありません。
    1. viなどのエディターで構成定義ファイルを作成する。
    作成する構成定義ファイルの内容を次に示します。
     
    [論理ホスト名¥JP1AJS2CONSOLEMANAGER]
    "DATADIRECTORY"="論理ホストのデータディレクトリのパス"
     
    論理ホスト名が「node0」で,論理ホストの共有ディレクトリが「/shdsk/node0」の場合の指定例を次に示します。
     
    [node0¥JP1AJS2CONSOLEMANAGER]
    "DATADIRECTORY"="/shdsk/node0/jp1ajs2cm/database"
     
    2. 構成定義ファイルを任意のディレクトリに保存する。
    ファイル名の例を次に示します。
     
    jp1ajs2cm_node0.txt
     
    3. 次に示すコマンドを実行して構成定義ファイルの情報を設定する。
     
    jbssetcnf 構成定義ファイル名
     
    jbssetcnfコマンドのパスは,「/opt/jp1base/bin/jbssetcnf」です。
    jbssetcnfコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
    コマンドの指定例を次に示します。
     
    jbssetcnf jp1ajs2cm_node0.txt
     
  5. 実行系のJP1/AJS2 - Managerで,JP1/AJS2データベースとして組み込みDBを使用する場合は組み込みDBをセットアップする。
    JP1/AJS2データベースとして組み込みDBを使用する場合は,「15. スケジューラーデータベースに組み込みDBを使用する場合のセットアップ」を参照してください。
  6. 実行系のJP1/AJS2 - Managerで,論理ホストで使用するファイル・ディレクトリを作成するために,次のコマンドを実行する。

    jpqimport -dt isam -ci ジョブ実行環境構成定義ファイル名 -mh 論理ホスト名

    jpqimportコマンドの詳細については,「20. セットアップ時に使用するコマンド jpqimport」を参照してください。
  7. キューレスジョブを利用する場合は,キューレスジョブのセットアップをする。
    次のコマンドを実行します。
    マネージャー環境の場合

    ajsqlsetup -h 論理ホスト名 -F スケジューラーサービス名

    ajsqlsetupコマンドを実行すると,共有ディスク上にキューレスジョブの実行に必要なファイルを作成し,チェックしますので,必ず共有ディスクをマウントしてから実行してください。
    ajsqlsetupコマンドの詳細については,「20. セットアップ時に使用するコマンド ajsqlsetup」を参照してください。
  8. JP1/AJS2サービス起動時のISAMファイル自動再編成機能を有効にする。
    論理ホストの共有ディレクトリが「/shdsk/node0」の場合,「/shdsk/node0/jp1ajs2/conf/jp1ajs_spmd_pre.conf.model」ファイルを,jp1ajs_spmd_pre.confファイルにコピーします。

これで実行系での作業は終了です。

注意事項
  • 設定は論理ホストごとに実施してください。
  • 実行系の論理ホストの設定(jp1ajs2_setup_clusterコマンド)は,物理ホストのスケジューラーサービスの多重起動が設定されていない状態で実行してください。
  • 論理ホストでスケジューラーサービスを多重起動する設定が必要な場合は,「18.4.7(1) スケジューラーサービスを多重起動する」を参照して設定してください。
  • 実行系の論理ホストの設定(jp1ajs2_setup_clusterコマンド)を実行すると,物理ホストのjp1ajs_spmd.confファイルが論理ホストにコピーされます。そのため,物理ホストの設定を引き継いで,論理ホストに必要のないプロセスが起動されることがあります。物理ホストでjp1ajs_spmd.confファイルを編集している場合は,論理ホストのjp1ajs_spmd.confファイルを編集し,必要なプロセスだけが起動されるようにしてください。

(2) 待機系での作業(JP1/AJS2 - Manager)

  1. 物理ホストをセットアップする。
    物理ホストをセットアップするには次のコマンドを実行します。

    /opt/jp1ajs2/bin/jp1ajs2_setup

    物理ホストをセットアップ済みの場合は,すべてのJP1/AJS2サービスを停止したあと,実行系と同様の手順でシステムの共有メモリーに記憶されているスケジューラーサービスの情報をクリアしてください。
    JP1/AJS2 Console ManagerおよびJP1/AJS2 Console Agentを使用する場合は,それぞれ次のコマンドを実行します。

    /opt/jp1ajs2cm/bin/jp1ajs2cmsetup
    /opt/jp1ajs2/bin/jp1ajs2casetup

    すでに物理ホストのセットアップがされている場合は上記コマンドの実行は不要です。なお,JP1/AJS2 Consoleのサービスに対しては,自動起動および自動終了の設定が必要です。設定方法は「14.7.2(3) JP1/AJS2 Consoleサービスの自動起動および自動終了を設定する」を参照してください。
  2. 実行系でのJP1/AJS2,JP1/Base,JP1/IMの作業を完了させたあと,実行系の共通定義情報を退避し,待機系に共通定義情報を設定する。
    実行系での作業が完了したあと,実行系でjbsgetcnfコマンドを実行して,共通定義情報を退避します。その退避ファイルを待機系にコピーし,退避ファイルを引数に指定したjbssetcnfコマンドを実行します。実行するコマンドを次に示します。
    実行系
     
    jbsgetcnf -h 論理ホスト名 > 退避ファイル名
     
    待機系
     
    jbssetcnf 退避ファイル名
     
  3. JP1/Baseの待機系での作業をする。
    JP1/Baseの作業については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
  4. jp1ajs2_setup_clusterコマンドを実行して,論理ホストを設定する。
    jp1ajs2_setup_clusterコマンドの入力形式を次に示します。

    jp1ajs2_setup_cluster -h 論理ホスト名

    -hオプションには,JP1/Baseで設定した論理ホスト名を指定します。
  5. キューレスジョブを利用する場合は,キューレスジョブのセットアップをする。
    次のコマンドを実行します。
    • マネージャー環境の場合

      ajsqlsetup -h 論理ホスト名 -F スケジューラーサービス名 -nc

これで待機系での作業は終了です。

注意事項

(3) 実行系での作業(JP1/AJS2 - Agent)

  1. JP1/Baseの実行系での設定作業をする。
    JP1/Baseの作業については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
  2. 物理ホストをセットアップする。
    13.2.2 JP1/AJS2 - Agentのセットアップ」を参照して,物理ホストをセットアップしてください。
  3. jp1ajs2_setup_clusterコマンドを実行して論理ホストを設定し,共有ディスク上に共有ファイル,共有ディレクトリを作成する。
    jp1ajs2_setup_clusterコマンドの入力形式を次に示します。

    jp1ajs2_setup_cluster -h 論理ホスト名 [ -d 共有ディレクトリ名]

    -hオプションには,JP1/Baseで設定した論理ホスト名を指定します。
    -dオプションは,実行系の環境設定時には必ず指定してください。このオプションには,共有ディレクトリと共有ファイルを作成する,共有ディスク上のディレクトリを指定します。共有ディレクトリとして,「指定したディレクトリ名/jp1ajs2/」を作成し,ローカルディスクの定義ファイル(/etc/opt/jp1ajs2/conf/下のファイル)をコピーします。実行するときには,必ず共有ディスクをマウントしておいてください。省略した場合は,待機系の環境設定を行います。
  4. キューレスジョブを利用する場合は,キューレスジョブのセットアップをする。
    次のコマンドを実行します。

    ajsqlsetup -h 論理ホスト名

これで実行系での作業は終了です。

注意事項
設定は論理ホストごとに実施してください。

(4) 待機系での作業(JP1/AJS2 - Agent)

  1. 物理ホストをセットアップする。
    物理ホストをセットアップするには次のコマンドを実行します。

    /opt/jp1ajs2/bin/jp1ajs2_setup

  2. 実行系でのJP1/AJS2,JP1/Base,JP1/IMの作業を完了させたあと,実行系の共通定義情報を退避し,待機系に共通定義情報を設定する。
    実行系での作業が完了したあと,実行系でjbsgetcnfコマンドを実行して,共通定義情報を退避します。その退避ファイルを待機系にコピーし,退避ファイルを引数に指定したjbssetcnfコマンドを実行します。実行するコマンドを次に示します。
    実行系

       jbsgetcnf -h 論理ホスト名 > 退避ファイル名

    待機系

       jbssetcnf 退避ファイル名

  3. JP1/Baseの待機系での作業をする。
    JP1/Baseの作業については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
  4. jp1ajs2_setup_clusterコマンドを実行して,論理ホストを設定する。
    jp1ajs2_setup_clusterコマンドの入力形式を次に示します。

    jp1ajs2_setup_cluster -h 論理ホスト名

    -hオプションには,JP1/Baseで設定した論理ホスト名を指定します。
  5. キューレスジョブを利用する場合は,キューレスジョブのセットアップをする。
    次のコマンドを実行します。

    ajsqlsetup -h 論理ホスト名

これで待機系での作業は終了です。

注意事項
設定は論理ホストごとに実施してください。