15.1.3 組み込みDB稼働環境と運用方法の検討

<この項の構成>
(1) 稼働環境
(2) 運用方法

(1) 稼働環境

組み込みDBが稼働する環境条件として,次の項目について検討および確認します。

(a) システム構成

非クラスタ構成(物理ホスト)とするか,またはクラスタ構成(論理ホスト)とするかを検討します。組み込みDBだけでなく,JP1/AJS2サービスの全体構成としての環境条件となります。

(b) 環境構築規模

JP1/AJS2の運用規模に合わせて,組み込みDB環境を構築する規模を三つ(小規模,中規模,大規模)の中から選択します。それぞれの規模の目安について,次の表に示します。

表15-1 組み込みDB環境構築規模の目安

規模ユニット数1日に実行される
ジョブ・ジョブネット数
小規模10,000以下10,000以下
中規模10,000~40,00010,000~25,000
大規模40,000~100,00025,000~50,000

運用規模が大規模を超える場合は,組み込みDB環境を大規模で構築し,そのあと環境の拡張を実施してください。

組み込みDB環境の拡張については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsembdbaddarea」を参照してください。

(c) システムファイル領域

組み込みDBで使用するシステムファイルの二重化実施の有無について検討します。システムファイルを二重化すると,必要なディスク容量は増加しますが,ディスク障害などによって組み込みDBシステムが停止する可能性を低くすることができます。

組み込みDBの稼働環境ごとに必要なディスク容量を次の表に示します。項番1~24から一つを選択してください。

表15-2 組み込みDB稼働環境ごとの必要ディスク容量

項番組み込みDB稼働環境必要ディスク容量(単位:メガバイト)
システム構成環境構築規模RAWファイルの使用システムファイルの二重化データ領域システムファイル領域作業領域合計
1非クラスタ小規模なしなし3007021,002
2あり1,4041,704
3ありなし702401,042
4あり1,4041,744
5中規模なしなし8001,2002,000
6あり2,4003,200
7ありなし1,200402,040
8あり2,4003,240
9大規模なしなし1,6003,4025,002
10あり6,8048,404
11ありなし3,402405,042
12あり6,8048,444
13クラスタ小規模なしなし30070240*21,082
14あり1,4041,784
15ありなし7021,082
16あり1,4041,784
17中規模なしなし8001,2002,080
18あり2,4003,280
19ありなし1,2002,080
20あり2,4003,280
21大規模なしなし1,6003,4025,082
22あり6,8048,484
23ありなし3,4025,082
24あり6,8048,484
(凡例)
-:作成先は指定できません。
組み込みDB運用ディレクトリのディスク容量については,「JP1/AJS2 - Database option ソフトウェア添付資料」のディスク占有量を参照してください。
注※
クラスタ構成時の作業領域は,共有ディスク上ではなくローカルディスク上に作成する必要があるため,実行系および待機系それぞれに必要です。

(2) 運用方法

組み込みDBの具体的な運用方法として,次の項目について検討します。

(a) システムログの運用

システムログを使用して回復する場合は,次に示す二とおりの運用方法のどちらかを選択する必要があります。システムログを使用して回復しない場合,考慮する必要はありません。

(b) バックアップの取得タイミング

組み込みDBのバックアップを取得するタイミングには,次の二つがあります。

(c) バックアップからの回復点

組み込みDBのバックアップからの回復点は,次の二つです。

(d) バックアップからの回復方法

バックアップからの回復方法を次に説明します。

組み込みDBの運用方法を次の表に示します。

表15-3 組み込みDBの運用方法

項番運用方法
システムログの運用バックアップ取得タイミングバックアップからの回復点バックアップからの回復方法
Aシステムログ運用しないJP1/AJS2サービス停止中バックアップ取得時点バックアップデータのみ
BB-1システムログ運用
(アンロードレス運用)
JP1/AJS2サービス停止中バックアップ取得時点バックアップデータのみ
B-2最新の同期点バックアップデータとシステムログ
B-3JP1/AJS2サービス稼働中
CC-1アンロードログ運用JP1/AJS2サービス停止中バックアップ取得時点バックアップデータのみ
C-2最新の同期点バックアップデータとアンロードログ
C-3JP1/AJS2サービス稼働中

運用方法の特徴を次の表に示します。この表に示す運用方法の特徴を考慮して表15-3から運用方法を選択してください。

表15-4 各運用方法の特徴

項番特徴
長所短所
Aシステムログファイルの状態を監視する必要がありません。
  • バックアップからの回復点はバックアップ時点だけです。
  • バックアップ取得時にはJP1/AJS2サービスを停止する必要があります。
B共通アンロードログ運用と比較した場合,回復するときの手順が容易です。
  • システムログファイルの状態を監視する必要があります。
  • バックアップの必要がなくても頻繁に取得する必要があります。
B-1システムログファイルに障害が発生しても,バックアップデータだけで回復できます。
  • バックアップからの回復点はバックアップ時点だけです。
  • バックアップ取得時にはJP1/AJS2サービスを停止する必要があります。
B-2
  • システムログファイルに障害が発生しても,バックアップデータだけで回復できます。
  • バックアップ取得時点以降の運用を反映した最新の状態に回復できます。
バックアップ取得時にはJP1/AJS2サービスを停止する必要があります。
B-3
  • バックアップ取得時にJP1/AJS2サービスを停止する必要がありません。
  • バックアップ取得時点以降の運用を反映した最新の状態に回復できます。
システムログファイルに障害が発生すると,該当するバックアップデータからの回復は一切できません。
C共通
  • システムログファイルの状態を監視する必要がありません。
  • システムログ運用と比較した場合,バックアップを必要以上に取得する必要がありません。
  • 自動ログアンロード機能の動作状態を監視する必要があります。
  • アンロードログファイル作成ディレクトリを準備する必要があります。
  • システムログ運用と比較した場合,回復するときの手順が繁雑です。
C-1
  • システムログファイルに障害が発生しても,バックアップデータだけで回復できます。
  • バックアップからの回復点はバックアップ時点だけです。
  • バックアップ取得時にはJP1/AJS2サービスを停止する必要があります。
C-2
  • システムログファイルに障害が発生しても,バックアップデータだけで回復できます。
  • バックアップ取得時点以降の運用を反映した最新の状態に回復できます。
バックアップ取得時にはJP1/AJS2サービスを停止する必要があります。
C-3
  • バックアップ取得時にJP1/AJS2サービスを停止する必要がありません。
  • バックアップ取得時点以降の運用を反映した最新の状態に回復できます。
アンロードログファイルを失うと,該当するバックアップデータからの回復は一切できません。
注※
表15-3の項番に対応します。

バックアップおよびバックアップからの回復方法の詳細については,次に示す個所を参照してください。

表15-3で選択した運用をする場合,組み込みDBの環境構築,組み込みDBのバックアップおよびバックアップからの回復で必要となるコマンドを次に示します。

これらコマンドの実行時に必要となるオプションを次の表に示します。

表15-5 コマンドの指定オプション

項番システムファイルの二重化システムログの運用方法および回復方法に関するオプション
ajsembdbbuild
(-bs,-br,-bl)
ajsembdbbackup
(-s,-z)
ajsembdbrstr
(-lr,-l)
Aなしなしなしなし
BB-1-bsなしなし
-zなし
B-2-lr
B-3-s -z-lr
CC-1-bs -blなしなし
C-2-l
C-3-s-l
Aあり
BB-1-brなしなし
-zなし
B-2-lr
B-3-s -z-lr
CC-1-br -blなしなし
C-2-l
C-3-s-l
(凡例)
-:該当しない。
注※
表15-3の項番に対応します。

ajsembdbbuildコマンドについては,「20. セットアップ時に使用するコマンド ajsembdbbuild」を参照してください。

ajsembdbbackupコマンドおよびajsembdbrstrコマンドについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド」を参照してください。