15.2.1 組み込みDBのインストール
ここでは,組み込みDB(JP1/AJS2 - Database option)のインストール方法を説明します。
なお,インストールにはJP1/AJS2シリーズプログラムの媒体に同梱されているHitachi PP Installerを使用してください。
- 組み込みDBをインストールするホストについての注意事項
- 組み込みDBは,JP1/AJS2 - Managerに付属します。同梱されるJP1/AJS2 - Managerと同一のマシンにインストールして使用してください。組み込みDBを単体で,別のマシンにインストールしたり,外部のクライアントソフトウェアから接続したりすることはできません。
- <この項の構成>
- (1) 組み込みDBインストール前の作業
- (2) 組み込みDBを新規にインストールする
- (3) 組み込みDBを上書きインストールする
(1) 組み込みDBインストール前の作業
ここでは,組み込みDBインストール前の作業について説明します。
(a) カーネルパラメーターの確認・変更
組み込みDBが使うメッセージキューおよびセマフォ所要量を見積もり,必要に応じてカーネルパラメーターを変更する必要があります。カーネルパラメーターの見積もりについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 設計・運用ガイド 4.2.5 カーネルパラメーターを見積もる」を参照してください。
(b) インストールディレクトリについて
インストールディレクトリを作成する必要はありません。インストールの実行時にインストールディレクトリ(/opt/HiRDB_J)が自動生成されます。
なお,インストールディレクトリをインストールする前に作成することもできますが,作成するインストールディレクトリは/opt/HiRDB_J固定になります。ほかのパス名のインストールディレクトリを作成しても,そのディレクトリ下に組み込みDBはインストールできません。
- 注意事項
- 組み込みDBは/opt/HiRDB_Jにインストールされるため,ルートパーティションには十分な空き領域を用意してください。ルートパーティションに十分な空き領域を確保できない場合は,/opt/HiRDB_Jを作成して別のディスクにマウントしてください。
(2) 組み込みDBを新規にインストールする
(a) HP-UXの場合のインストール
組み込みDBをHP-UXの環境で使用する場合のインストール手順を次に示します。
- 組み込みDBをインストールするホストにスーパーユーザーでログインするかまたはsuコマンドでユーザーをスーパーユーザーに変更する。
- すべてのプログラムを終了する。
既存のJP1シリーズのプログラムが動作している場合,必ず停止しておいてください。
- 媒体をセットする。
- 次のコマンドを実行して,CD-ROM装置をマウントする。
/usr/sbin/mount -F cdfs -r /dev/dsk/c0t2d0 /cdrom
/cdromはCD-ROMデバイススペシャルファイルのマウントポイントです。マウントポイントディレクトリがない場合は,作成してください。なお,デバイススペシャルファイル名およびマウントポイントはご使用の環境によって異なります。
- 次のコマンドを実行して,Hitachi PP Installerを起動する。
/cdrom/HPUX/SETUP※1,※2 /cdrom※2
Hitachi PP Installerが起動され,初期画面が表示されます。
- 注※1
- CD-ROMのディレクトリ名やファイル名は,マシン環境によっては記述した内容と見え方が異なることがあります。lsコマンドで確認して,表示されたファイル名をそのまま入力してください。
- 注※2
- ここではマウントポイントに/cdromを仮定します。
- 初期画面で「I」を入力する。
インストールできるプログラムの一覧が表示されます。
- 「JP1/AJS2 - Database option」を選択し,「I」を入力する。
選択したプログラムがインストールされます。なお,プログラムを選択するには,カーソルを移動させ,スペースバーで選択します。
- インストールが正常終了したら,「Q」を入力する。
Hitachi PP Installerの初期画面に戻ります。
(b) Solarisの場合のインストール
組み込みDBをSolarisの環境で使用する場合のインストール手順を次に示します。
- 組み込みDBをインストールするホストにスーパーユーザーでログインするかまたはsuコマンドでユーザーをスーパーユーザーに変更する。
- すべてのプログラムを終了する。
既存のJP1シリーズのプログラムが動作している場合,必ず停止しておいてください。
- 媒体をセットする。
- CD-ROM装置をマウントする。
通常は自動的にマウントされますが,マウントされない場合は,次のコマンドを実行してください。
/usr/sbin/mount -r -F hsfs /dev/dsk/c0t4d0s0 /cdrom
/cdromはCD-ROMデバイススペシャルファイルのマウントポイントです。マウントポイントディレクトリがない場合は,作成してください。なお,デバイススペシャルファイル名およびマウントポイントはご使用の環境によって異なります。
- 次のコマンドを実行して,Hitachi PP Installerを起動する。
/cdrom/cdrom/solaris/setup※1,※2 /cdrom/cdrom※2
Hitachi PP Installerが起動され,初期画面が表示されます。
- 注※1
- CD-ROMのディレクトリ名やファイル名は,マシン環境によっては記述した内容と見え方が異なることがあります。lsコマンドで確認して,表示されたファイル名をそのまま入力してください。
- 注※2
- ここではマウントポイントに/cdrom/cdromを仮定します。
- 初期画面で「I」を入力する。
インストールできるプログラムの一覧が表示されます。
- 「JP1/AJS2 - Database option」を選択し,「I」を入力する。
選択したプログラムがインストールされます。なお,プログラムを選択するには,カーソルを移動させ,スペースバーで選択します。
- インストールが正常終了したら,「Q」を入力する。
Hitachi PP Installerの初期画面に戻ります。
(c) AIXの場合のインストール
組み込みDBをAIXの環境で使用する場合のインストール手順を次に示します。
- 組み込みDBをインストールするホストにスーパーユーザーでログインするかまたはsuコマンドでユーザーをスーパーユーザーに変更する。
- すべてのプログラムを終了する。
既存のJP1シリーズのプログラムが動作している場合,必ず停止しておいてください。
- 媒体をセットする。
- 次のコマンドを実行して,CD-ROM装置をマウントする。
/usr/sbin/mount -r -v cdrfs /dev/cd0 /cdrom
/cdromはCD-ROMデバイススペシャルファイルのマウントポイントです。マウントポイントディレクトリがない場合は,作成してください。なお,デバイススペシャルファイル名およびマウントポイントはご使用の環境によって異なります。
- 次のコマンドを実行して,Hitachi PP Installerを起動する。
/cdrom/AIX/SETUP※1,※2 /cdrom※2
Hitachi PP Installerが起動され,初期画面が表示されます。
- 注※1
- CD-ROMのディレクトリ名やファイル名は,マシン環境によっては記述した内容と見え方が異なることがあります。lsコマンドで確認して,表示されたファイル名をそのまま入力してください。
- 注※2
- ここではマウントポイントに/cdromを仮定します。
- 初期画面で「I」を入力する。
インストールできるプログラムの一覧が表示されます。
- 「JP1/AJS2 - Database option」を選択し,「I」を入力する。
選択したプログラムがインストールされます。なお,プログラムを選択するには,カーソルを移動させ,スペースバーで選択します。
- インストールが正常終了したら,「Q」を入力する。
Hitachi PP Installerの初期画面に戻ります。
(d) Linuxの場合のインストール
組み込みDBをLinuxの環境で使用する場合のインストール手順を次に示します。
- 組み込みDBをインストールするホストにスーパーユーザーでログインするかまたはsuコマンドでユーザーをスーパーユーザーに変更する。
- すべてのプログラムを終了する。
既存のJP1シリーズのプログラムが動作している場合,必ず停止しておいてください。
- 媒体をセットする。
- CD-ROM装置をマウントする。
- 次のコマンドを実行して,Hitachi PP Installerを起動する。
/mnt/cdrom/linux/setup※1,※2 /mnt/cdrom※2
Hitachi PP Installerが起動され,初期画面が表示されます。
- 注※1
- CD-ROMのディレクトリ名やファイル名は,マシン環境によっては記述した内容と見え方が異なることがあります。lsコマンドで確認して,表示されたファイル名をそのまま入力してください。
- 注※2
- ここではマウントポイントに/mnt/cdromを仮定します。
- 初期画面で「I」を入力する。
インストールできるプログラムの一覧が表示されます。
- 「JP1/AJS2 - Database」を選択し,「I」を入力する。
選択したプログラムがインストールされます。なお,プログラムを選択するには,カーソルを移動させ,スペースバーで選択します。
- インストールが正常終了したら,「Q」を入力する。
Hitachi PP Installerの初期画面に戻ります。
(3) 組み込みDBを上書きインストールする
ここでは組み込みDBのバージョンアップインストールについて説明します。
(a) バージョンアップ前にすること
バージョンアップをする前に,次に示すことを必ず実施してください。
- 組み込みDBのデータベースのバックアップを取得する
ajsembdbbackupコマンドで,組み込みDBのバックアップを取得してください。
- 組み込みDBをインストールするホストに,スーパーユーザーでログインするか,またはsuコマンドでユーザーをスーパーユーザーに変更する。
- すべてのプログラムを終了する。
既存のJP1シリーズのプログラムが動作している場合,必ず停止しておいてください。
- ajsembdbbackupコマンドで組み込みDBのバックアップを取得する。
ajsembdbbackupコマンド実行時,-sオプションを指定しないでください。指定した場合,ajsembdbrstrコマンドの実行時にエラーとなり回復できなくなります。
- 組み込みDBが稼働中かを確認する
組み込みDBの稼働状態をajsembdbstatusコマンドで確認してください。
ajsembdbstatusコマンドの実行例を次に示します。この例では,_JA0の組み込みDB識別子でセットアップした環境が構築されているものと仮定します。
ajsembdbstatus -s ust
HOSTNAME : hostname(154313)
SYSTEMID : ajs2
UNITID : unt1
ENTRYHOST : hostname
PAIRHOST :
UNIT-STAT FES-STAT SETUP-STAT
ONLINE ******** SETUP
ajsembdbstatusコマンドの実行結果のUNIT-STATを参照してください。ONLINEと表示されている場合,組み込みDBは稼働中です。この場合,ajsembdbstopコマンドで組み込みDBを正常終了させてください。
- 組み込みDBが正常終了しているかを確認する
バージョンアップをする場合,組み込みDBが正常終了している必要があります。組み込みDBが稼働中かどうかを確認した結果,組み込みDBがすでに停止しているか,ajsembdbstopコマンドで停止した場合,組み込みDBが正常終了しているかを確認してください。
次に示すファイルに出力されるKFPS01850-Iメッセージを参照してください。このメッセージに表示されている終了モードがNORMALの場合,組み込みDBは正常終了しています。
- 組み込みDB運用ディレクトリ/spool/pdlog1
- 組み込みDB運用ディレクトリ/spool/pdlog2
(例) KFPS01850-I HiRDB system terminated. mode=NORMAL
組み込みDBが正常終了していない場合は,次に示す手順で組み込みDBを正常終了させてください。
- ajsembdbstartコマンドで組み込みDBを開始する。
- ajsembdbstopコマンドで組み込みDBを正常終了する。
- 組み込みDB運用ディレクトリ下のファイルのバックアップを取得する
バージョンアップの失敗に備えて,次に示すファイルのバックアップをOSの機能(コマンド)で取得してください。
- 組み込みDB運用ディレクトリ下のconf下にある全ファイル
- 組み込みDB運用ディレクトリ下にあるユーザーが作成したファイル
なお,取得したバックアップは,新バージョンの動作確認後に削除してください。
(b) バージョンアップ手順
組み込みDBをバージョンアップする手順を次に示します。
- ajsembdbunsetコマンドに-rオプションを指定して実行する。
- 組み込みDBを上書きインストールする。
新しいバージョンの組み込みDBを上書きインストールします。
- 組み込みDB環境構築時に実行したajsembdbbuildコマンドの指定内容に-rsオプションの指定を追加して実行する。
ajsembdbbuild -l -d "/RDArea_JA0,/SYSArea1_JA0" -i /opt/HiRDB_J -id _JA0 -rs
- 組み込みDBを開始する。
非クラスタ環境の場合は,組み込みDBは自動的に開始しますが,クラスタ環境の場合は,ajsembdbstartコマンドを実行して組み込みDBを開始してください。
なお,システム共通定義のpd_mode_confオペランド指定値を変更すると組み込みDBの開始方法が変わります。
組み込みDB環境が複数ある場合,ほかの組み込みDB環境に対しても,手順1,手順3,および手順4を実施してください。
(c) バージョンアップに失敗した場合
ここでは,次に示す現象が発生した場合の対処方法について説明します。
組み込みDBの開始時にリターンコードが5以上のKFPX24404-Iメッセージがメッセージログおよびsyslogに出力された。 |
メッセージログとは,次に示すファイルのことです。
- 組み込みDB運用ディレクトリ/spool/pdlog1
- 組み込みDB運用ディレクトリ/spool/pdlog2
この場合,一緒に出力されたメッセージを参照し,バージョンアップ失敗の原因を取り除いてください。
(d) 組み込みDBを旧バージョンに戻す場合
組み込みDBを旧バージョンに戻す手順を次に示します。
- 組み込みDBが自動起動しないように設定を変更する。
システム共通定義のpd_mode_confオペランドの設定値をMANUAL2に変更してください。なお,手順6でpd_mode_confオペランドの設定値を元に戻すため,変更前の設定値を忘れないようにしてください。
- ajsembdbunsetコマンドに-rオプションを指定して実行する。
- 組み込みDBをアンインストールする。
組み込みDBのアンインストール方法については,「19.3 組み込みDBのアンインストール」を参照してください。
- 旧バージョンの組み込みDBをインストールする。
旧バージョンの組み込みDBをインストールします。組み込みDBのインストール方法については,「(2) 組み込みDBを新規にインストールする」を参照してください。
- ajsembdbbuildコマンドに-rsオプションを指定して実行する。
- 組み込みDB運用ディレクトリ下のファイルを回復する。
「(a) バージョンアップ前にすること」の「組み込みDB運用ディレクトリ下のファイルのバックアップを取得する」で取得したバックアップから,旧バージョンの組み込みDB運用ディレクトリ下のファイルを回復します。
また,手順1で変更したシステム共通定義のpd_mode_confオペランドを変更前の設定値に戻してください。
- システムファイルを初期化する。
システムログファイル,シンクポイントダンプファイル,およびステータスファイルを初期化します。次に示すコマンドラインを実行してください。
組み込みDB運用ディレクトリ/conf/fmkfs
組み込みDB運用ディレクトリ/conf/sysfint
また,旧バージョンでシステムログファイル,またはシンクポイントダンプファイルを追加した場合は,追加したファイルについても初期化します。
次に示すどちらかの操作で,システムログファイル,シンクポイントダンプファイルを初期化してください。
- ajsembdbaddlogコマンドを使用して追加した場合
次に示すファイルを実行してください。
組み込みDB運用ディレクトリ/conf/embrm/addlog
なお,バージョンアップ後に,ajsembdbaddlogコマンドでシステムログファイル,またはシンクポイントダンプファイルを追加した場合は,バージョンアップ後に追加した領域も初期化します。
- pdfmkfsコマンドおよびpdloginitコマンドを使用して追加した場合
追加時に実施した操作を再度実行してください。この作業は,JP1 Version 7iで構築した組み込みDB環境に戻す場合が該当します。
- 組み込みDBを回復する。
「(a) バージョンアップ前にすること」の「組み込みDB運用ディレクトリのデータベースのバックアップを取得する」で取得したバックアップから,旧バージョンの組み込みDBを回復します。
組み込みDBの回復手順を次に示します。
- 1. -rオプションを指定したajsembdbstartコマンドを実行して組み込みDBを開始する。
- 2. -Mオプションを指定したajsembdbrstrコマンドで,バックアップから組み込みDBのシステム領域を回復する。
- 3. ajsembdbstopコマンドで組み込みDBを正常終了する。
- 4. ajsembdbstartコマンドで組み込みDBを開始する。
- 5. ajsembdbrstrコマンドで,バックアップから組み込みDBのデータ領域を回復する。
コマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド」を参照してください。