8.1.9 リモートジョブネットの注意事項
リモートジョブネットとは,自マネージャーホストで定義したジョブネットを転送して,別のマネージャーホストで実行させるジョブネットです。リモートジョブネットを使うと,リモートジョブネットの下位にあるジョブネットおよびジョブの実行時のJP1/AJS2 - Managerの負荷を分散できます。
リモートジョブネットは,転送先のマネージャーホストで即時実行登録されます。リモートジョブネット配下のユニットに設定されているスケジュール情報は無視されます。
なお,リモートジョブネットの転送先ホストでは,定義内容の追加や変更はできません。また,転送されたリモートジョブネットの保存世代がジョブネットの保存世代数を超えた場合,自動的に転送先ホストから削除されます。
リモートジョブネットの定義例を次に示します。
図8-1 リモートジョブネットの定義例
![[図データ]](figure/zud08170.gif)
この例のジョブネットを実行した場合の流れを次に示します。
- 標準ジョブAが実行される。
- 標準ジョブAが正常終了すると,リモートジョブネットAがJP1/AJS2 - Manager(2)のJP1/AJS2 - Managerサービスへ転送される。
リモートジョブネットAは,転送先のJP1/AJS2 - Managerサービスでルートジョブネットとして即時実行登録されます。
- 転送先ホストで,リモートジョブネットA配下の標準ジョブX,標準ジョブY,および標準ジョブZが順に実行される。
- 標準ジョブZが終了し,リモートジョブネットAが正常終了すると,標準ジョブBが実行される。
なお,リモートジョブネットを使用しないでジョブネットを構築する場合,ジョブネット内の各ジョブが,実行先エージェントで実行されるようにジョブを作成します。この場合,ジョブネットの[詳細定義]ダイアログボックスの[実行ホスト]に,実行先エージェントのホスト名を指定します。配下のジョブで[実行ホスト]の指定が省略されている場合は,上位のジョブネットに指定された実行ホストで実行されます。
また,判定ジョブでファイルの有無を判断している場合は,ファイルの有無をリターンコードで判別できるようなスクリプトあるいはバッチファイルを先行ジョブとしてエージェントで実行し,判定ジョブは終了コードで判断するように置き換えてください。
リモートジョブネットを運用する場合,次の注意点があります。これらの点を考慮して,リモートジョブネットを使用してください。
- リモートジョブネットは転送先ホストで即時実行登録されて動作するので,リモートジョブネットの下にあるジョブネットにスケジュール情報を定義しても有効になりません。
- リモートジョブネットは,転送先ホストで即時実行登録されて動作します。即時実行登録処理が日をまたぐ場合,転送先ホストでジョブネットが繰り越し未実行になることがあります。リモートジョブネットの運用が日をまたぐおそれがある場合は,転送先ホストのリモートジョブネットサービス名に指定したスケジューラーサービスの[繰り越し方法]の設定を「2日」,または「無制限」に設定してください。
- リモートジョブネットは,転送先ホスト上に,一意な名称のジョブグループを作成し,その配下にリモートジョブネットと同一名称のジョブネットを作成して実行されます。したがって,転送先ホストのジョブネットとマネージャーホスト側のリモートジョブネットの対応付けを容易にするため,リモートジョブネットの名称はシステム内で一意な名称にすることをお勧めします。
- リモートジョブネットの転送先ホストで,リモートジョブネットによって作成されたジョブネットを登録解除したり,ジョブネットが定義されているスケジューラーサービスをコールドスタートしたりすると,転送元ホストのリモートジョブネットとの関連が失われます。この場合,リモートジョブネットによって作成されたジョブグループは自動で削除されないため,手動で削除してください。
- 転送元ホストでリモートジョブネットを定義しているスケジューラーサービスをコールドスタートしても,転送先ホストで実行登録されたジョブネットは登録解除されません。この場合,手動で登録解除してください。
- リモートジョブネットによって作成された転送先ホストのジョブグループにJP1/AJS2 - Viewでアクセスしている状態で,転送元ホストでリモートジョブネットを登録解除したり,保存世代数を超過したりした場合,転送先ホストのジョブグループは自動で削除されません。この場合,ジョブグループを手動で削除してください。
- リモートジョブネットは実行開始時にジョブネットの定義を転送するため,起動時のオーバーヘッドが大きく,リモートジョブネットの下位にあるジョブの数が数個程度の場合は,ジョブの定義で「実行ホスト」を指定した場合に比べると負荷が高くなります。
- リモートジョブネットの下位にあるジョブに異常があっても,マネージャーホスト側に異常が伝わるのは,リモートジョブネット全体が終了したときです。また,マネージャーホスト側ではリモートジョブネットの下位にある個々の状態は監視できません。
- 異常終了したジョブから再実行しても,リモートジョブネットは一つのジョブと同じように扱われるため,リモートジョブネットの途中からは再実行されません。
- リモートジョブネットの転送先ホストをマネージャーホストと同じホストにすると,通常転送先ホスト側で行う処理をマネージャーホストで行うため,ジョブネットの実行に比べて性能が低下します。
- リモートジョブネットの状態は,リモートジョブネットを起動してから終了するまでの間だけで管理されます。そのため,リモートジョブネットの終了後に,リモートジョブネットの転送先マネージャー上で,実行されたリモートジョブネット内のユニットを再実行や状態変更しても,マネージャー側には反映されません。
リモートジョブネットの転送先マネージャー上で,再実行などによってジョブネットを正常終了にしたあとに,後続を続行させる場合は,マネージャー上で,リモートジョブネットの後続ユニットから再実行してください。
- リモートジョブネット配下のユニットで,転送先マネージャーでサポートしていない機能を使用していた場合,リモートジョブネットは異常検出終了となり,実行結果詳細に「KAVS0650-E ユニット定義パラメタファイル(ファイル名)の内容に誤りがあります(文番号:文番号)」が出力されます。この場合,リモートジョブネットの転送先マネージャーのバージョンを,機能をサポートしているバージョンにして,再実行してください。
- リモートジョブネットの転送先ホストには,リモートジョブネット実行用のスケジューラーサービスを設定しておいてください。スケジューラーサービスの追加については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 4.7.1 スケジューラーサービスの多重起動の設定」(Windowsの場合),またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 14.7.1 スケジューラーサービスの多重起動の設定」(UNIXの場合)を参照してください。また,転送先ホストには,転送元ホストのホスト名と,ジョブネットを実行登録したJP1ユーザーを,ユーザーマッピングに設定してください。同様に転送元ホストには,転送先ホストのホスト名と,ジョブネットを実行登録したJP1ユーザーを,ユーザーマッピングに設定してください。なお,リモートジョブネットサービスはデフォルトサービス(AJSROOT1)でも運用できますが,リモートジョブネットサービスと通常の業務で使用するサービスは別々のサービスにすることをお勧めします。
- リモートジョブネットを実行および登録解除すると,転送元ホストと転送先ホストに専用のプロセスが起動されます。転送元ホストで同時に複数のリモートジョブネットを実行したり,保存世代数の多いリモートジョブネットの登録解除をしたり,同一の転送先ホストに対して複数のリモートジョブネットを実行したりすると,リソースを大量に消費し負荷が高くなり,処理性能の低下やプロセス生成の失敗などの問題が発生しやすくなります。そのため,複数のリモートジョブネットを同時に実行しないように運用することをお勧めします。
- リモートジョブネットを実行および登録解除すると,転送元ホストと転送先ホストでジョブネットワーク要素を操作するコマンドが,内部的に実行されます。登録解除時は,保存世代数分のジョブネットワーク要素を操作するコマンドが,転送先ホストで同時に実行されます。JP1/AJS2の見積もりを行う場合は,これらを考慮してください。