ジョブネットの登録予定情報をエクスポートする機能(ajsrgexportコマンド)とインポートする機能(ajsrgimportコマンド)を使用して,ジョブネットの実行登録状態をバックアップ・リカバリーできます。
図8-24 登録予定情報のエクスポート・インポート機能を使用した登録状態のバックアップとリカバリー
ajsprintコマンドとajsdefineコマンドを使用してユニット定義情報をバックアップ・リカバリーするのに対し,ajsrgexportコマンドとajsrgimportコマンドでは,ジョブネットの登録予定情報をエクスポートし,その情報をインポートすることで,ジョブネットの実行登録状態をバックアップ・リカバリーします。
JP1/AJS2のシステムに障害などが発生した場合,これらの機能を使用することで運用再開までの作業を大幅に短縮できます。
(1) 登録予定情報のエクスポート(ajsrgexportコマンド)
ajsrgexportコマンドでは,ジョブネットの実行登録状態(実行登録時に指定したマクロ変数やタイムゾーンなどの情報を含む)をテキスト形式のファイルにエクスポートします。このジョブネットの実行登録状態や登録時に指定した条件などの情報を登録予定情報と呼びます。また,登録予定情報をエクスポートしたファイルを登録予定情報ファイルと呼びます。ajsrgexportコマンドの詳細についてはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsrgexport」を,登録予定情報ファイルについてはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 2.6 登録予定情報ファイル」を参照してください。
エクスポートの対象は,「計画実行」または「確定実行」で実行登録されている次のルートジョブネットです。「即時実行」で実行登録されているジョブネットを指定した場合は,登録予定情報をエクスポートしません。
計画実行登録したジョブネットの場合は,直近の実行予定をエクスポートします。確定実行登録したジョブネットの場合は,直近の実行予定以降の作成済み予定をエクスポートします。どちらの場合も,実行結果および擬似予定はエクスポートしません。擬似予定については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 解説 4.3.2(1) スケジュールシミュレーション」を参照してください。
図8-25 エクスポートされる実行予定
なお,確定実行登録の場合は,計画一時変更している予定もエクスポートします。ただし,インポート先で計画一時変更分の予定を変更解除することはできません。計画実行登録の場合は,計画一時変更分の予定をエクスポートしないため,インポートしたあとに計画一時変更をし直す必要があります。
(2) 登録予定情報のインポート(ajsrgimportコマンド)
ajsrgexportコマンドでエクスポートした登録予定情報ファイルをインポートし,エクスポート時と同一の実行登録状態にします。ajsrgimportコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsrgimport」を参照してください。
計画実行登録されていたジョブネットの場合は,インポート後にジョブネットのスケジュールルールに基づいて再計算されます。一方,確定実行登録されていたジョブネットの場合は,エクスポートした登録予定情報ファイルの内容に基づき,ajsrgimportコマンドの実行日以降の実行予定をインポートします。
図8-26 インポートされる実行予定
インポート対象のルートジョブグループ配下は,エクスポート元とインポート先とで同一のユニット構成である必要があります。
次のような場合はインポートできません。
(3) 前提条件
登録予定情報のエクスポート・インポート機能を使用する場合,インポート先でジョブの実行ができるようにインポート先の環境をエクスポート元の環境と合わせておく必要があります。
必要に応じて,インポートの前に「11.3 JP1/AJS2を使用するシステムの設定情報のリカバリー」に記載される手順に従って,ジョブの実行ができる環境を整えておいてください。
登録予定情報のエクスポート・インポート機能は,エクスポート元とインポート先のマシンや,スケジューラーサービスが異なっていても使用できます。ただし,インポート先の環境に合わせて,登録予定情報ファイルの文字コードや改行コードを合わせる必要があります。
他のマシン・他のスケジューラーサービスでエクスポート・インポートする場合の前提条件と,前提条件を満たさなかった場合の影響について,次に示します。
前提条件 | 前提条件を満たさない場合の影響 |
---|---|
エクスポート元とインポート先で,ジョブネットの実行登録時に使用したタイムゾーンの名称と,当該タイムゾーンで表される時間帯が同じであること。 | エクスポート元と異なる開始予定日時のスケジュールが生成されるおそれがあります。 |
エクスポート元およびインポート先と,エージェントホストが通信できること。 | エージェントホストと通信できない場合,インポート時にジョブを実行できません。 |
エクスポート元およびインポート先と,QUEUEジョブに指定したホストが通信できること。 | エージェントホストと通信できない場合,インポート時にQUEUEジョブを実行できません。 |
前提条件 | 前提条件を満たさない場合の影響 |
---|---|
ジョブネット実行登録時のJP1ユーザーがインポート先でユーザーマッピングされていること。 | ジョブネット実行登録時のJP1ユーザーがインポート先でユーザーマッピングされていない場合,インポート時にエラーとなります。 |
エクスポート元とインポート先で認証サーバが異なる場合,双方の認証サーバで同一のJP1ユーザー・アクセス権限が登録されていること。 | エクスポート元・インポート先の認証サーバに同一のJP1ユーザー・アクセス権限が登録されていない場合,インポート時またはジョブ実行時にエラーが発生するおそれがあります。 |
前提条件 | 前提条件を満たさない場合の影響 |
---|---|
インポート先のJP1/AJS2のローカル時刻がエクスポート元より遅れていないこと。 | インポート先のローカル時刻がエクスポート元より遅れている場合,エクスポート元で実行したスケジュールが再度生成されることがあります。 |
キューレスジョブを使用する場合,インポート先でもajsqlsetupコマンド(キューレスジョブ実行環境セットアップ)を実行していること。 | キューレスジョブ実行環境がセットアップされていない場合,インポート後,ジョブ実行時にキューレスジョブを実行できません。 |
前提条件 | 前提条件を満たさない場合の影響 |
---|---|
エクスポート元およびインポート先に,ジョブの運用で使用する転送ファイルがあること。 | 転送ファイルがない場合,インポート後,ジョブ実行時にエラーとなります。 |
エクスポート元のジョブ実行時に使用するエージェントやキューがインポート先に定義されていること。 | ジョブ実行時に使用するエージェントやキューが定義されていない場合,インポート後,ジョブ実行時にエラーとなります。 |
環境設定パラメーター※1 | 前提条件を満たさない場合の影響 |
---|---|
AJSCHARCODE※2(スケジューラーサービスの文字コード) | ユニット定義やジョブネット実行登録時に指定したマクロ変数にマルチバイト文字が含まれる場合,それらの文字列はAJSCHARCODEに指定した文字コードで表されます。したがって,エクスポート元とインポート先でAJSCHARCODEに指定する文字コードが異なる場合,インポートすると文字化けが発生するため,インポートできません。 |
ROOTJOBNETSCHEDULERANGE(ルートジョブネットの時間制) | エクスポート元が48時間制で,インポート先が24時間制となっている場合,日またがりのスケジュールの実行日は翌日扱いとなります。この場合,例えばジョブネットを運用日に実行する場合,日またがりのスケジュールで翌日扱いとなったときに翌日が休業日であるとスケジュールは生成されません。 |
AJSCHARCODEの値 | ajsrgexportコマンド実行時の 環境変数LANGの値 | |||
---|---|---|---|---|
HP-UX | Solaris | AIX | Linux | |
SJIS | ja_JP.SJIS | ja_JP.PCK | Ja_JP | - |
EUC | ja_JP.eucJP | ja | ja_JP | - |
C | C | C | C | C |
UTF-8 | - | - | - | ja_JP.UTF-8 |
定義キー | 環境設定パラメーター | 定義内容 |
---|---|---|
[{JP1_DEFAULT|論理ホスト名}¥JPQNBQMANAGER¥Queue] | MaximumQueue※1 | キューの最大定義数 |
[{JP1_DEFAULT|論理ホスト名}¥JPQNBQMANAGER¥Job] | MaximumContentJob※2 | システム内の最大ジョブ数 |
AlterContentJob※2 | システム内の警告ジョブ数 | |
[{JP1_DEFAULT|論理ホスト名}¥JPQNBQMANAGER¥Agent] | MaximumAgent※1 | エージェントの最大定義数 |
LeastRecentlyUsed※2 | ジョブを配信するエージェントホストの決定方式の定義 | |
[{JP1_DEFAULT|論理ホスト名}¥JPQNBQMANAGER¥Resource] | MaximumResource※1 | 排他実行リソースの最大定義数 |
[{JP1_DEFAULT|論理ホスト名}¥JPQNBQCLIENT¥PathEnv] | All Users※2 | 転送元ファイルの検索パス |
JP1ユーザー名※2 | 転送元ファイルの検索パス | |
[{JP1_DEFAULT|論理ホスト名}¥JPQNBQCLIENT¥Process] | MacroOptionReplaceMode※2 | マクロ変数の引き継ぎ情報がNULL文字列の置き換え方法の設定 |
前提条件 | 前提条件を満たさない場合の影響 |
---|---|
エクスポート元のマネージャー上でジョブを実行していないこと。 | エクスポート元のマネージャーがダウンしているケースや,ジョブの実行先が異なるケースがあり,インポート後,ジョブ実行時にエラーになることがあります。 |
QUEUEジョブのホスト名に,エクスポート元の物理ホスト・論理ホストを指定していないこと。 | エクスポート元のマネージャーがダウンしているケースや,ジョブの実行先が異なるケースがあり,インポート後,ジョブ実行時にエラーになることがあります。 |
エクスポートするユニットを計画実行登録している場合,エクスポート元とインポート先でルートジョブネットまでのユニット完全パスが同一であること。 | インポート時にエラーになります。 |
エクスポートするルートジョブネットを確定実行登録している場合,エクスポート元とインポート先でルートジョブネットまでのユニット完全パスが同一であり,かつルートジョブネット配下のユニット構成がすべて同じであること。 | インポート時にエラーになります。 |
他のジョブグループのカレンダーを参照するように指定しているジョブネットをインポートする場合,参照先のジョブグループがエクスポート元と同一パスでインポート先にも存在すること。 | インポート時に実行登録失敗となります。 |
排他スケジュールを指定しているジョブネットをインポートする場合,排他ジョブネットがエクスポート元と同一パスでインポート先にも存在すること。 | インポート時に実行登録失敗となります。 |
ジョブネットコネクタを含むルートジョブネットをインポートする場合,接続先のジョブネットがエクスポート元と同一パスでインポート先にも存在すること。 | インポート後,ジョブ実行時にジョブネットコネクタが異常検出実行中のままとなります。 |
接続先のジョブネットをインポートする場合,ジョブネットコネクタがエクスポート元と同一パスでインポート先にも存在すること。 | インポート後,ジョブ実行時に接続先のジョブネットが次のように動作します。
|
(4) 注意事項
登録予定情報のエクスポート・インポート機能を使用する際の注意事項を次に示します。
エクスポート機能では,エクスポートコマンド(ajsrgexport)実行時の登録状態をエクスポートします。したがって,世代の作成中・削除中(確定実行を期間指定で登録中,計画一時変更中,および登録解除中)にエクスポートを実行すると,作成途中または削除途中の世代をそのままエクスポートしてしまいます。
世代の作成中にエクスポートした場合の例を次に示します。
図8-27 世代の作成中(確定実行登録)にエクスポートした場合の例
例えば,図8-27のように4月1日から4月6日までの確定世代を作成する際に,4月2日までの世代しか作成していないタイミングで登録予定情報のエクスポートを実行した場合は,4月2日までの世代だけ出力され,4月3日以降の世代はエクスポートされません。
登録予定情報のエクスポートは,実行登録や登録解除,計画一時変更の処理中など,世代の作成中に実行しないでください。
起動条件を定義していて,ジョブネットのスケジュールルールで起動条件の有効範囲を設定している場合,エクスポート時点までの,起動条件のイベントの発生回数・監視時間は出力されません。例えば,起動条件の有効範囲を5回と設定していて,エクスポート時点ですでに2回イベントが発生している場合でも,インポート後にはイベントの発生を5回監視します。
(5) 登録予定情報のエクスポート手順
登録予定情報をエクスポートする手順を次に示します。
ajsrgexport [-F サービス名] [-R] [-e {s|f}] [-o 登録予定情報ファイル名] [-m] ユニット名...
(6) 登録予定情報のインポート手順
登録予定情報をインポートする手順を次に示します。
ajsalter -F サービス名 -s EXEC
ajsrgimport [-F サービス名] [-f] [-u ユニット名|-o ユニット名]... -i 登録予定情報ファイル名
ajsalter -F サービス名 -s none