保存世代数とは,ジョブネットの実行結果として保存される世代数のことです。保存世代数は,ルートジョブネットに設定できます。保存世代数を設定すると,設定した世代分(回数分)の実行結果を[デイリースケジュール]ウィンドウおよび[マンスリースケジュール]ウィンドウ,またはajsshowコマンドで確認できます。保存世代数は,1から99まで設定できますが,JP1/AJS2 - Managerのスケジューラーサービスの環境設定で,999世代まで保存世代数を持つようにすることができます。
しかし,保存世代数の増加は,そのジョブネットの規模と関連して「保存世代数 * 登録ユニット数」で求まるレコード数の増加となります。そのため,データベースにアクセスする操作に多大な影響を及ぼします。保存世代数に設定する値は,システム性能への影響を十分配慮した上で決定してください。影響を受ける主な機能(処理)を次に示します。
これらの処理が実行される上で,レコード数の増加とその処理時間は比例傾向にあります。システム性能によって異なりますが,何も負荷のない状態で,例えば100万レコードを実行登録解除する場合には,その処理時間は1~2分程度,[マンスリースケジュール]ウィンドウを表示する場合には,8~10分程度掛かってしまいます。対して,10万レコードを実行登録解除する場合,その処理時間は数秒程度,[マンスリースケジュール]ウィンドウを表示する場合には,1~2分程度になります。システム負荷が高い(CPU使用率が高い,ディスクアクセス頻度が高いなど)場合には,さらに時間が掛かります。この場合,ジョブネットの規模を2~3階層にし,50~80程度のユニット構成(推奨構成)にすると,最大保存世代数を999に設定したとしても運用に耐えられる計算になります。
このことから,保存世代数を多く設定したい運用では,ジョブネットの規模が小さくなるように設計し,規模の大きなジョブネットで運用したい場合には,その保存世代数は小さくするというように,保存世代数とユニット数のバランスを考えて設定することを検討してください。
さらに,登録解除処理中に別のジョブが実行されているのと同時に,[マンスリースケジュール]ウィンドウで状態監視している場合など,処理が並行して行われる運用を考慮し,保存世代数,ジョブネット規模は少なめに見積もるように設計してください。
なお,上記の実行登録解除の処理時間は「8.1.2 保存世代数に関する注意事項」で説明している,登録解除処理の非同期型の設定をした場合の時間です。同期型の設定のままで登録解除した場合には,何十分という処理時間が掛かってしまいます。JP1/AJS2 08-00以降で新規インストールした場合は,世代削除の方式がデフォルトで「非同期型」に設定されますが,バージョンアップインストールの場合,それまでの運用によっては「同期型」が設定されることがあります。環境設定パラメーターBACKGROUNDLEAVEの設定値を確認し,同期型(no)が設定されている場合は,非同期型(yes)に変更することをお勧めします。環境設定パラメーターBACKGROUNDLEAVEが設定されていない場合は,非同期型(yes)に設定することをお勧めします。
また,起動条件を有効にしたジョブネットの場合,スケジュールごとに生成される世代と,起動条件の成立によって生成される世代で,別々に保存世代が管理されます。そのため,保存世代数に大きい値を設定した場合の影響が顕著に現れます。そのレコード数は,「登録ユニット数 * 保存世代数 * 1スケジュール当たりの起動条件成立数」となります。起動条件付きジョブネットの場合は,保存世代数には10より小さい値を設定し,ajsshowコマンドで随時実行結果を保存することをお勧めします。ajsshowコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsshow」を参照してください。