8.5.9 登録予定情報をバックアップ・リカバリーする

ジョブネットの登録予定情報をエクスポートする機能(ajsrgexportコマンド)とインポートする機能(ajsrgimportコマンド)を使用して,ジョブネットの実行登録状態をバックアップ・リカバリーできます。

図8-24 登録予定情報のエクスポート・インポート機能を使用した登録状態のバックアップとリカバリー

[図データ]

ajsprintコマンドとajsdefineコマンドを使用してユニット定義情報をバックアップ・リカバリーするのに対し,ajsrgexportコマンドとajsrgimportコマンドでは,ジョブネットの登録予定情報をエクスポートし,その情報をインポートすることで,ジョブネットの実行登録状態をバックアップ・リカバリーします。

JP1/AJS2のシステムに障害などが発生した場合,これらの機能を使用することで運用再開までの作業を大幅に短縮できます。

<この項の構成>
(1) 登録予定情報のエクスポート(ajsrgexportコマンド)
(2) 登録予定情報のインポート(ajsrgimportコマンド)
(3) 前提条件
(4) 注意事項
(5) 登録予定情報のエクスポート手順
(6) 登録予定情報のインポート手順

(1) 登録予定情報のエクスポート(ajsrgexportコマンド)

ajsrgexportコマンドでは,ジョブネットの実行登録状態(実行登録時に指定したマクロ変数やタイムゾーンなどの情報を含む)をテキスト形式のファイルにエクスポートします。このジョブネットの実行登録状態や登録時に指定した条件などの情報を登録予定情報と呼びます。また,登録予定情報をエクスポートしたファイルを登録予定情報ファイルと呼びます。ajsrgexportコマンドの詳細についてはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsrgexport」を,登録予定情報ファイルについてはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 2.6 登録予定情報ファイル」を参照してください。

エクスポートの対象は,「計画実行」または「確定実行」で実行登録されている次のルートジョブネットです。「即時実行」で実行登録されているジョブネットを指定した場合は,登録予定情報をエクスポートしません。

計画実行登録したジョブネットの場合は,直近の実行予定をエクスポートします。確定実行登録したジョブネットの場合は,直近の実行予定以降の作成済み予定をエクスポートします。どちらの場合も,実行結果および擬似予定はエクスポートしません。擬似予定については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 解説 4.3.2(1) スケジュールシミュレーション」を参照してください。

図8-25 エクスポートされる実行予定

[図データ]

なお,確定実行登録の場合は,計画一時変更している予定もエクスポートします。ただし,インポート先で計画一時変更分の予定を変更解除することはできません。計画実行登録の場合は,計画一時変更分の予定をエクスポートしないため,インポートしたあとに計画一時変更をし直す必要があります。

(2) 登録予定情報のインポート(ajsrgimportコマンド)

ajsrgexportコマンドでエクスポートした登録予定情報ファイルをインポートし,エクスポート時と同一の実行登録状態にします。ajsrgimportコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsrgimport」を参照してください。

計画実行登録されていたジョブネットの場合は,インポート後にジョブネットのスケジュールルールに基づいて再計算されます。一方,確定実行登録されていたジョブネットの場合は,エクスポートした登録予定情報ファイルの内容に基づき,ajsrgimportコマンドの実行日以降の実行予定をインポートします。

図8-26 インポートされる実行予定

[図データ]

インポート対象のルートジョブグループ配下は,エクスポート元とインポート先とで同一のユニット構成である必要があります。

次のような場合はインポートできません。

(3) 前提条件

登録予定情報のエクスポート・インポート機能を使用する場合,インポート先でジョブの実行ができるようにインポート先の環境をエクスポート元の環境と合わせておく必要があります。

必要に応じて,インポートの前に「11.3 JP1/AJS2を使用するシステムの設定情報のリカバリー」に記載される手順に従って,ジョブの実行ができる環境を整えておいてください。

登録予定情報のエクスポート・インポート機能は,エクスポート元とインポート先のマシンや,スケジューラーサービスが異なっていても使用できます。ただし,インポート先の環境に合わせて,登録予定情報ファイルの文字コードや改行コードを合わせる必要があります。

他のマシン・他のスケジューラーサービスでエクスポート・インポートする場合の前提条件と,前提条件を満たさなかった場合の影響について,次に示します。

(4) 注意事項

登録予定情報のエクスポート・インポート機能を使用する際の注意事項を次に示します。

エクスポート機能では,エクスポートコマンド(ajsrgexport)実行時の登録状態をエクスポートします。したがって,世代の作成中・削除中(確定実行を期間指定で登録中,計画一時変更中,および登録解除中)にエクスポートを実行すると,作成途中または削除途中の世代をそのままエクスポートしてしまいます。

世代の作成中にエクスポートした場合の例を次に示します。

図8-27 世代の作成中(確定実行登録)にエクスポートした場合の例

[図データ]

例えば,図8-27のように4月1日から4月6日までの確定世代を作成する際に,4月2日までの世代しか作成していないタイミングで登録予定情報のエクスポートを実行した場合は,4月2日までの世代だけ出力され,4月3日以降の世代はエクスポートされません。

登録予定情報のエクスポートは,実行登録や登録解除,計画一時変更の処理中など,世代の作成中に実行しないでください。

起動条件を定義していて,ジョブネットのスケジュールルールで起動条件の有効範囲を設定している場合,エクスポート時点までの,起動条件のイベントの発生回数・監視時間は出力されません。例えば,起動条件の有効範囲を5回と設定していて,エクスポート時点ですでに2回イベントが発生している場合でも,インポート後にはイベントの発生を5回監視します。

(5) 登録予定情報のエクスポート手順

登録予定情報をエクスポートする手順を次に示します。

  1. ユニット定義情報をバックアップする。
    必要に応じて,ユニット定義情報をバックアップします。
    詳細については,「11.2.2(3) ユニット定義のバックアップ」を参照してください。
  2. ajsrgexportコマンドを実行し,登録予定情報をエクスポートする。
    次の形式でコマンドを実行します。

    ajsrgexport [-F サービス名] [-R] [-e {s|f}] [-o 登録予定情報ファイル名] [-m] ユニット名...

    ajsrgexportコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsrgexport」を参照してください。
    注意事項
    エクスポートした登録予定情報ファイルは修正しないでください。修正した場合,正常に動作しないおそれがあります。
  3. 実行予定の計画一時変更を確認する。
    計画実行登録の場合,計画一時変更していても変更分の情報はエクスポートされないため,インポートする情報は計画一時変更前のものとなります。インポート先で計画一時変更した予定で実行したい場合は,インポート後に計画一時変更するための資料を残すように運用してください。
    確定実行登録の場合,計画一時変更していた情報もエクスポートされるため,インポート後も変更された予定で実行登録されます。ただし,変更解除できないため,インポート後に変更した予定を元に戻すための資料を残すように運用してください。
    インポート後に計画一時変更または変更した予定を元に戻すための資料がない場合は,ajsshowコマンドで登録状態を確認し,情報をエクスポートしてください。ajsshowコマンドについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsshow」を参照してください。
    なお,実行予定を計画一時変更していない場合,この操作は不要です。
注意事項
ajsrgexportコマンドは,実行登録されているルートジョブネットの実行予定世代から登録予定情報を取得します。確定実行登録しているルートジョブネットをエクスポートする場合,計画一時変更した情報も取得するため,世代情報が変更されるタイミング(ルートジョブネットの実行登録処理中や,予定情報の作成中・削除中)に実行すると,エラーとなるおそれがあります。
ジョブネットの実行予定世代については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 解説 4.2 ジョブネットの世代管理」を参照してください。

(6) 登録予定情報のインポート手順

登録予定情報をインポートする手順を次に示します。

  1. ユニット定義情報をリカバリーする。
    必要に応じて,ユニット定義情報をリカバリーします。
    詳細については,「11.3.3(6) ユニット定義のリカバリー」を参照してください。
    登録予定情報のエクスポート時からユニット定義情報に変更がない場合,この操作は不要です。
  2. エージェントホストのサービスを再起動する。
    マネージャー・エージェントが別ホストで,イベント監視を行っている場合は,エージェントホストのJP1/AJS2のサービスを再起動してください。
    それ以外の場合,この操作は不要です。
  3. ajsalterコマンドを実行してジョブの実行を抑止する。
    次の形式でコマンドを実行します。

    ajsalter -F サービス名 -s EXEC

    ajsalterコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsalter」を参照してください。
  4. ajsrgimportコマンドを実行し,登録予定情報をインポートする。
    次の形式でコマンドを実行します。

    ajsrgimport [-F サービス名] [-f] [-u ユニット名|-o ユニット名]... -i 登録予定情報ファイル名

    注意事項
    ajsrgimportコマンドを実行する前に,対象となるジョブネットが登録解除されていることを確認してください。ジョブネットが登録済みの場合,ajsrgimportコマンドは異常終了します。
    補足事項
    ajsrgimportコマンドの-fオプションで,インポートした時点ですでに当日の実行開始予定時刻を過ぎていた場合に,すぐに実行を開始するか,実行を抑止するかを指定できます。
    ajsrgimportコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsrgimport」を参照してください。
  5. 登録状態(インポート状態)を確認し,必要に応じて変更する。
    当日に実行させたくないジョブネットや,保留・保留解除などを一時変更したいユニットがあれば,計画一時変更を行います。
  6. インポートを実行した結果に問題がないことを確認したら,ajsalterコマンドを実行してジョブの実行抑止を解除する。
    次の形式でコマンドを実行します。

    ajsalter -F サービス名 -s none

    ajsalterコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 コマンドリファレンス 1. コマンド ajsalter」を参照してください。