3.2.4 クラスタシステムでの構成例
クラスタシステムとは,複数のサーバシステムを連携して一つのシステムとして運用するシステムです。同じ環境のサーバを二つ構築し,業務を実行しているサーバ(実行系)で障害が発生した場合に待機していた別のサーバ(待機系)に処理を引き継ぐことで業務を継続できます。
なお,クラスタシステムとは,これまでJP1のマニュアルで「系切り替えシステム」と呼ばれていたものと同じです。
クラスタ運用時のシステム構成例を次の図に示します。
図3-15 クラスタ運用時のシステム構成例
![[図データ]](figure/zud03130.gif)
なお,クラスタ運用時のセットアップについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 9. クラスタシステム運用時のセットアップ」(Windowsの場合),またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 18. クラスタシステム運用時のセットアップ」(UNIXの場合)を参照してください。
- <この項の構成>
- (1) クラスタ運用の前提条件
- (2) クラスタ運用の概要
- (3) クラスタ運用時の注意事項
- (4) クラスタシステム運用時の業務監視
(1) クラスタ運用の前提条件
JP1/AJS2をクラスタシステムで使用する場合,次に示す前提条件があります。
- クラスタソフトは,クラスタ運用の前提に示す2.~4.を制御できるプログラムであること。
- 実行系から待機系へ引き継ぎ可能な共有ディスクが使用できること。
詳細には次に示す条件を満たすこと。
- JP1を起動する前に,共有ディスクが割り当てられること。
- JP1を実行中に,共有ディスクの割り当てが解除されないこと。
- JP1を停止したあとに,共有ディスクの割り当てが解除されること。
- 実行系ノード以外からは共有ディスクをアクセスできないよう排他制御されていること。
- システムダウンなどでファイルが消えないよう,ジャーナル機能を持つファイルシステムなどでファイルを保護すること。
- フェールオーバーしてもファイルに書き込んだ内容が保証されて引き継がれること。
- フェールオーバー時に共有ディスクを使用中のプロセスがあっても,強制的にフェールオーバーできること。
- 共有ディスクの障害を検知した場合の回復処置はクラスタソフトなどが制御し,回復処置をJP1が意識する必要がないこと。回復処置の延長での起動や停止が必要な場合は,クラスタソフトからJP1に起動や停止の実行要求をすること。
- 論理IPアドレスとして次に示す条件を満たすこと。
- 引き継ぎ可能な論理アドレスを使って通信できること。
- 論理ホスト名から論理アドレスが一意に求まること。
- JP1を起動する前に,論理アドレスが割り当てられること。
- JP1を実行中に,論理アドレスが削除されないこと。
- JP1を実行中に,論理ホスト名と論理アドレスの対応が変更されないこと。
- JP1を停止したあとに,論理アドレスが削除されること。
- ネットワーク障害を検知した場合の回復処置はクラスタソフトなどが制御し,JP1が回復処理を意識する必要がないこと。また,回復処置の延長でJP1の起動や停止が必要な場合は,クラスタソフトからJP1に起動や停止の実行要求をすること。
- 多重起動する場合,論理ホストごとに一つずつのIPアドレスを割り当てること。
- 論理ホスト名が,hostsファイルやネームサーバに設定され,TCP/IP通信ができるようになっていること。DNS運用の場合には,FQDN形式でないホスト名を使用できること。
- 前提であるJP1/Baseが,クラスタシステムを使用できる環境になっていること。
(2) クラスタ運用の概要
JP1/AJS2のクラスタ運用の運用例を説明します。
ここでは,クラスタシステムで運用する場合の方法を説明します。
なお,クラスタシステムや,同時に利用するアプリケーションプログラム(JP1のプログラムを含みます)は,ここで説明する形態に対応していないことがあります。各プログラムのマニュアルで確認してください。
クラスタシステムで運用する場合,JP1/AJS2では,フェールオーバーする単位ごとに論理ホスト名を割り当てて運用することになります。この論理ホスト名を使用して,フェールオーバーする単位ごとの多重起動および管理対象システムにアクセスします。
論理ホスト名には,「(1) クラスタ運用の前提条件」で示した前提条件に基づいて割り当てられたホスト名を使用してください。DNS運用の場合は,FQDN形式でないホスト名を使用してください。
論理ホスト名を指定することで,サービス(デーモン)の起動およびコマンドの実行が論理ホストごとにできるようになります。論理ホスト名は次のどちらかの方法で指定します。
- 環境変数JP1_HOSTNAME
- 各コマンドの論理ホスト指定オプション(通常は-hオプションです。詳細は各コマンドの説明を参照してください)
論理ホスト指定オプションが指定されていない場合,各コマンドは,環境変数JP1_HOSTNAMEに設定された論理ホスト名を使用して実行されます。なお,「JP1_HOSTNAME=""」と設定した場合は無視されます。
(3) クラスタ運用時の注意事項
クラスタ運用時の注意事項を次に示します。
- クラスタシステムでJP1/AJS2を多重起動する場合,多重起動する論理ホストの数だけ,システムのリソースが必要となります。
- メールシステム連携およびメッセージキューシステム連携を使用している場合,物理ホストまたは論理ホストのうち,どれか一つのJP1/AJS2だけで連携できます。
連携機能の環境設定については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 9. クラスタシステム運用時のセットアップ」(Windowsの場合),またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 セットアップガイド 18. クラスタシステム運用時のセットアップ」(UNIXの場合)を参照してください。
- クラスタシステム運用時,実行系で実行中のジョブがある状態でデーモンを停止した場合,実行中のジョブは強制終了されてから待機系に移行します。しかし,強制終了されたジョブの状態は,待機系ではすぐには終了状態とは認識されません。数分後に終了状態になります。
- クラスタシステム運用時,論理ホスト上で起動されるJP1/AJS2サービスは,JP1/AJS2のプロセスが異常終了した場合には縮退運転しないで,すべてのプロセスを終了します。
- JP1/AJS2 Monitorサービス,キューレスエージェントサービス,キューレスファイル転送サービスはマシンに一つのサービスです。しかし,クラスタソフトによる共有ディスクおよび論理IPアドレスの移動に伴い,論理ホストごとに処理を切り分けることで,クラスタシステムに対応しています。
(4) クラスタシステム運用時の業務監視
JP1/AJS2 Consoleも,クラスタシステムに対応しています。JP1/AJS2 Console Managerをクラスタ構成にすることで,JP1/AJS2 Console Managerホストに障害が発生した場合でもフェールオーバーすることによって業務監視を続けることができます。また,論理ホスト上のJP1/AJS2 - Managerで管理している業務を監視できます。
なお,クラスタシステムで論理ホストを運用している場合も,シングルサーバの場合と同じように操作できます。
論理ホスト上のJP1/AJS2 Console Managerを使用する場合には,JP1/AJS2 Console Viewの[ログイン]画面で,[接続ホスト名]に論理ホストのホスト名またはIPアドレスを指定します。また,論理ホスト上のJP1/AJS2 - Managerで管理している業務を監視する場合は,JP1/AJS2 Console Viewの[詳細定義-AJS2ユニット監視オブジェクト]ダイアログボックスで,[監視対象]の[ホスト名]に論理ホストのホスト名またはIPアドレスを指定します。
JP1/AJS2 Console Manager,JP1/AJS2 Console Agentサービスはマシンに一つのサービスです。しかし,クラスタソフトによる共有ディスクおよび論理IPアドレスの移動に伴い,論理ホストごとに処理を切り分けることで,クラスタシステムに対応しています。次の図に論理ホストでのJP1/AJS2 Consoleの各サービスの動作を示します。
図3-16 JP1/AJS2 Console Managerの論理ホスト運用での動作
![[図データ]](figure/zud03140.gif)
図3-17 JP1/AJS2 Console Agentの論理ホスト運用での動作
![[図データ]](figure/zud03150.gif)