6.2.4 ファイルシステムの運用例

ここでは,ファイルシステムの運用例について説明します。

<この項の構成>
(1) 最大許容サイズを設定した運用例
(2) ベースパス情報の最大予約可能容量を拡張し,使用量を監視する運用例
(3) 最大許容サイズを設定しない運用例

(1) 最大許容サイズを設定した運用例

最大許容サイズを設定したファイルシステムの運用について説明します。

(a) 運用前の設定

最大許容サイズを設定したファイルシステムの運用例について,次の図に示す例を使用して説明します。

図6-2 最大許容サイズを設定したファイルシステムの運用の例(個人ルートフォルダおよびワークプレースルートフォルダの場合)

[図データ]

図6-3 最大許容サイズを設定したファイルシステムの運用の例(グループルートフォルダの場合)

[図データ]

この例では,ベースパス情報として,種別ごとに次のようにディスクを割り当てます。

ここでは,次のようにベースパス情報を設定します。

表6-3 設定するベースパス情報の例

項番種別条件種別条件値パス最大予約可能容量最大使用可能容量
1個人フォルダ所属組織A事業所E:¥FILE120GB20GB
2個人フォルダ所属組織B事業所F:¥FILE110GB10GB
3個人フォルダデフォルトG:¥FILE120GB20GB
4コミュニティフォルダデフォルトG:¥FILE230GB30GB
5グループフォルダ組織IDA事業所の組織IDH:¥FILE120GB20GB
6グループフォルダ組織IDB事業所の組織IDI:¥FILE110GB10GB
7グループフォルダデフォルトJ:¥FILE150GB50GB

また,最大許容サイズ情報として,ルートフォルダごとに次のように最大許容サイズを割り当てます。

ここでは,次のように最大許容サイズ情報を設定します。

表6-4 設定する最大許容サイズ情報の例

項番種別条件種別条件値最大許容サイズ
1個人フォルダ役職課長30MB
2個人フォルダ役職主任20MB
3個人フォルダデフォルト10MB
4コミュニティフォルダデフォルト100MB
5グループフォルダ組織IDA事業所の組織ID800MB
6グループフォルダ組織IDB事業所の組織ID400MB
7グループフォルダデフォルト100MB

表6-3および表6-4のようにベースパス情報と最大許容サイズ情報を設定して運用を開始した場合,個人ルートフォルダを作成しようとするユーザに応じて,ベースパスと最大許容サイズが割り当てられます。例えば,所属している組織がA事業所,役職が課長というユーザが,個人ルートフォルダを作成した場合,ベースパスとしてE:¥FILE1が,最大許容サイズとして30MBが割り当てられます。また,グループルートフォルダに設定した組織およびユーザに応じて,ベースパスと最大許容サイズが割り当てられます。例えば,A事業所のグループルートフォルダの場合,ベースパスとしてH:¥FILE1が,最大許容サイズとして800MBが割り当てられます。

なお,最大許容サイズを設定した運用の場合,ベースパス情報で設定している最大予約可能容量のうち,最大許容サイズとして割り当てた容量を予約量として管理します。また,最大予約可能容量から予約量を引いた容量を空き容量として管理します。ベースパス情報で設定している最大予約可能容量分のディスク容量は,ユーザで管理する必要があります。

また,デフォルト以外のベースパス情報の最大予約可能容量に対する空き容量がなくなったとき,または使用数が上限に達したとき,エラーとなるように,環境設定用プロパティファイルのhptl_clb_cfs_AssignmentModeForNoFreeSpace,およびhptl_clb_cfs_AssignmentModeForUsedCountMaxプロパティに「alert」を設定します。環境設定用プロパティファイルの詳細については,「5.3.5 環境設定用プロパティファイル(hptl_clb_cfs.properties)」を参照してください。

(b) ルートフォルダを作成する領域がなくなった場合の運用例

ルートフォルダを作成する領域がなくなった場合に,ベースパス情報を追加する運用例について説明します。

新しいユーザに対してベースパスを設定しようとした場合,ベースパス情報の最大予約可能容量に対する空き容量がルートフォルダに割り当てる最大許容サイズよりも小さいときは,ルートフォルダを作成しようとしたユーザ([ファイル共有]ポートレットに初めてログインしたユーザ,[コミュニティ管理]ポートレットでワークプレースを作成したユーザ,またはグループルートフォルダを作成しようとしたユーザ)に対して,ポートレット経由,またはコマンドを実行したときにエラーが通知されます。この場合,システム管理者は次のように対処します。

  1. [ベースパス情報操作]画面からベースパス情報を参照し,最大予約可能容量に対する空き容量がなくなっているベースパス情報があることを確認します。
  2. 空き容量不足になったベースパス情報と同じ種別,条件種別および条件値で,最大予約可能容量に対する空き容量がある別のベースパス情報を追加します。
    例えば,A事業所に割り当てたベースパス情報の最大予約可能容量に対する空き容量が不足した場合,A事業所に対するベースパス情報として,次の表の項番8に示すような,ほかのディスク領域に対応するベースパス情報を,[ベースパス情報の追加]画面から追加します。

    表6-5 追加するベースパス情報の例(ルートフォルダを作成する領域がなくなった場合)

    項番種別条件種別条件値パス最大予約可能容量最大使用可能容量
    1個人フォルダ所属組織A事業所E:¥FILE120GB20GB
    2個人フォルダ所属組織B事業所F:¥FILE110GB10GB
    3個人フォルダデフォルトG:¥FILE120GB20GB
    4コミュニティフォルダデフォルトG:¥FILE230GB30GB
    5グループフォルダ組織IDA事業所の組織IDH:¥FILE120GB20GB
    6グループフォルダ組織IDB事業所の組織IDI:¥FILE110GB10GB
    7グループフォルダデフォルトJ:¥FILE150GB50GB
    8個人フォルダ所属組織A事業所K:¥FILE120GB20GB

なお,この場合,すでにE:¥FILE1下に個人フォルダを作成しているユーザのベースパスを変更する必要はありません。ルートフォルダの最大許容サイズまで,そのディスクを続けて使用できます。

この運用の例を次の図に示します。

図6-4 ベースパス情報を追加した運用の例(ルートフォルダを作成する領域がなくなった場合)

[図データ]

(c) ベースパスを割り当てる条件を追加してルートフォルダに異なる領域を割り当てる場合の運用例

デフォルトのベースパスを割り当てて運用していたルートフォルダに対して,ほかのベースパスを設定し直して,異なる領域を割り当てることもできます。

例えば,C事業所のユーザが増えた場合,次の表の項番9に示すようなC事業所専用のディスクを用意して,[ベースパス情報の追加]画面からベースパス情報を追加します。

表6-6 追加するベースパス情報の例(ベースパスを割り当てる条件を追加してルートフォルダに異なる領域を割り当てる場合)

項番種別条件種別条件値パス最大予約可能容量最大使用可能容量
1個人フォルダ所属組織A事業所E:¥FILE120GB20GB
2個人フォルダ所属組織B事業所F:¥FILE110GB10GB
3個人フォルダデフォルトG:¥FILE120GB20GB
4コミュニティフォルダデフォルトG:¥FILE230GB30GB
5グループフォルダ組織IDA事業所の組織IDH:¥FILE120GB20GB
6グループフォルダ組織IDB事業所の組織IDI:¥FILE110GB10GB
7グループフォルダデフォルトJ:¥FILE150GB50GB
8個人フォルダ所属組織A事業所K:¥FILE120GB20GB
9個人フォルダ所属組織C事業所L:¥FILE130GB30GB

この場合,ベースパス情報を追加したあとに増えたC事業所のユーザだけに,新しく追加したベースパス情報が設定されます。

この運用の例を次の図に示します。

図6-5 ベースパス情報を追加した運用の例(ベースパスを割り当てる条件を追加してルートフォルダに異なる領域を割り当てる場合)

[図データ]

(2) ベースパス情報の最大予約可能容量を拡張し,使用量を監視する運用例

最大許容サイズを設定した運用で,ベースパス情報の最大予約可能容量を拡張して,使用量を監視しながら運用する例について説明します。

ルートフォルダを作成すると,ディスクの容量のうち,ルートフォルダに設定されている最大許容サイズ分の容量が予約されます。しかし,ルートフォルダ単位の使用率が低いと,予約されるだけで使用されていない領域ができてしまいます。このような予約されるだけで使用されていない領域が増えて,予約量が最大予約可能容量に達してしまったときは,ベースパス情報の最大予約可能容量を拡張して,最大使用可能容量よりも大きな値を最大予約可能容量に設定します。

ただし,最大使用可能容量よりも大きな値を最大予約可能容量に設定するときは,ベースパス情報の使用量を監視して,使用量が最大使用可能容量に達する前に最大使用可能容量を拡張する必要があります。

(a) 運用前の設定

運用前の設定では,ベースパス情報として,個人ルートフォルダ,ワークプレースルートフォルダ,およびグループルートフォルダ共に,デフォルトのベースパスを割り当てることにします。次のようにベースパス情報を設定します。最大使用可能容量には,最大予約可能容量と同じ値を設定します。

表6-7 設定するベースパス情報の例(ベースパス情報の最大予約可能容量を拡張し,使用量を監視する場合)

項番種別条件種別条件値パス最大予約可能容量最大使用可能容量
1個人フォルダデフォルトE:¥FILE150GB50GB
2コミュニティフォルダデフォルトF:¥FILE1100GB100GB
3グループフォルダデフォルトG:¥FILE1100GB100GB

また,最大許容サイズ情報として,個人ルートフォルダ,ワークプレースルートフォルダ,およびグループルートフォルダ共に,デフォルトの最大許容サイズ情報だけを設定して使用することにします。次のように最大許容サイズ情報を設定します。

表6-8 設定する最大許容サイズ情報の例(ベースパス情報の最大予約可能容量を拡張し,使用量を監視する場合)

項番種別条件種別条件値最大許容サイズ
1個人フォルダデフォルト10MB
2コミュニティフォルダデフォルト100MB
3グループフォルダデフォルト50MB

ベースパス情報の使用量が最大使用可能容量の70%を超えたとき,警告が通知されるように,環境設定用プロパティファイルのhptl_clb_cfs_ADThresholdForMaxUsableSpaceプロパティに「70」を設定します。環境設定用プロパティファイルの詳細については,「5.3.5 環境設定用プロパティファイル(hptl_clb_cfs.properties)」を参照してください。

(b) 最大予約可能容量を拡張する場合の運用例

ベースパス情報の最大予約可能容量に対する空き容量がルートフォルダに割り当てる最大許容サイズよりも小さいときは,ルートフォルダを作成しようとしたユーザに対して,エラーが通知されます。

この場合,システム管理者は次のように対処します。

  1. [プロパティ設定]画面を表示するか,またはベースパス情報の取得コマンド(cfslstad)を実行して,最大予約可能容量に対する空き容量がないベースパス情報を確認します。
  2. 最大予約可能容量に対する空き容量がないベースパス情報がある場合は,その使用量を確認します。
    ベースパス情報の使用量がまだ少ない場合,予約されているだけで使用されていない領域が多く,実際に使用できる容量は残っています。予約されているだけで使用されていない領域を有効に使用するため,ベースパス情報の最大予約可能容量を拡張します。
  3. 拡張する最大予約可能容量に設定する値を見積もります。
    運用を開始したあとに最大予約可能容量を拡張する場合の見積もり式については,「7.5.1 ベースパス情報の最大予約可能容量の見積もり(最大使用可能容量よりも大きな値を設定する場合)」を参照してください。
    この例では,ワークプレースルートフォルダ用のベースパス情報の最大予約可能容量を拡張します。
  4. [プロパティ設定]画面から,ワークプレースルートフォルダ用のベースパス情報の最大予約可能容量の設定を次のように変更します。

    表6-9 変更するベースパス情報の例(最大予約可能容量を拡張する場合)

    項番種別条件種別条件値パス最大予約可能容量最大使用可能容量
    1個人フォルダデフォルトE:¥FILE150GB50GB
    2コミュニティフォルダデフォルトF:¥FILE1150GB100GB
    3グループフォルダデフォルトG:¥FILE1100GB100GB

このように運用することで,予約されているだけで使用されていない領域が増えても有効にディスクを使用できます。また,ベースパス情報の最大使用可能容量を拡張することなく,最大予約可能容量だけを拡張して,引き続きベースパス情報を使用できます。

ただし,最大使用可能容量よりも大きな値を最大使用可能容量に設定した場合,最大使用可能容量以上の容量を予約されるおそれがあるため,ベースパス情報の使用量を監視する必要があります。

次に,ベースパス情報の使用量を監視する運用例について説明します。

(c) ベースパス情報の使用量を監視し,最大使用可能容量を拡張する場合の運用例

最大使用可能容量よりも大きな値を最大使用可能容量に設定した場合,システム管理者は,ベースパス情報の使用量の確認コマンド(cfschkusdspc)の実行,または[プロパティ設定]画面で,定期的にベースパス情報の最大使用可能容量に対する使用率を確認します。運用を開始してベースパス情報の最大使用可能容量に対する使用率が環境設定プロパティファイルで設定した値(しきい値)に達している場合は,警告が通知されます。

例えば,ワークプレースルートフォルダ用のベースパス情報の使用率が70%(使用量:70GB)を超えて,ベースパス情報の使用量の確認コマンド(cfschkusdspc)を実行したときに警告が通知されたとします。

この場合,システム管理者は次のように対処します。

  1. ワークプレースルートフォルダ用のベースパス情報が使用しているディスクの容量を拡張します。
    この例では,ディスクの容量を100GBから150GBに拡張します。
  2. [プロパティ設定]画面から,ワークプレースルートフォルダ用のベースパス情報の最大使用可能容量の設定を次のように変更します。
    ディスクの容量を100GBから150GBに拡張したため,最大使用可能容量にも150GBを設定します。

    表6-10 変更するベースパス情報の例(最大使用可能容量を拡張する場合)

    項番種別条件種別条件値パス最大予約可能容量最大使用可能容量
    1個人フォルダデフォルトE:¥FILE150GB50GB
    2コミュニティフォルダデフォルトF:¥FILE1150GB150GB
    3グループフォルダデフォルトG:¥FILE1100GB100GB

ベースパス情報の最大使用可能容量の設定を変更することで,最大使用可能容量に対する使用率が下がります。また,ほかのベースパス情報の使用率が最大使用可能容量のしきい値に達した場合も同様に,ディスクを拡張し,最大使用可能容量の設定を変更して対応します。

このように運用することで,予約されているだけで使用されていない領域を削減できます。

この運用の例を次の図に示します。

図6-6 ベースパス情報の使用量を監視し,最大使用可能容量を拡張する運用の例

[図データ]

(3) 最大許容サイズを設定しない運用例

最大許容サイズを設定しない場合の運用例について説明します。

(a) 運用前の設定

運用前の設定では,ベースパス情報として,種別ごとにデフォルトのベースパスを割り当てます。次のようにベースパス情報を設定します。

表6-11 設定するベースパス情報の例(最大許容サイズを設定しない場合)

項番種別条件種別条件値パス
1個人フォルダデフォルトG:¥FILE1
2コミュニティフォルダデフォルトH:¥FILE1
3グループフォルダデフォルトI:¥FILE1

また,最大許容サイズを設定しない運用のため,デフォルトの最大許容サイズ情報を登録する必要はありません。

(b) 運用例

運用を開始して,ベースパス情報に設定したパスのディスクの容量がいっぱいになると,ファイルを格納できなくなります。このような場合は,次のように対応する必要があります。

  1. エクスプローラなどのOSのツールで空き領域がないことを確認します。
  2. 空き容量不足になったベースパスにフォルダを作成するように設定されているユーザに対して,空き容量がある別のディスクに対応するベースパス情報を追加します。
    これによって,新しくフォルダを作成するユーザに対して,フォルダを作成してファイル実体を登録するための空き領域を確保できます。ただし,この状態では,既存のユーザがファイルを追加または更新できません。
  3. 不要なファイルを削除するなどして,既存のディスクに空き領域を確保します。これによって,ベースパス情報を追加したあとにルートフォルダを作成したユーザは,新しいディスクでファイルの操作を実行できます。また,既存のユーザは,ユーザが使用していた領域から空き領域として確保した分を使用して,ファイルの操作を実行できます。

ディスク容量がいっぱいになった場合の対応の例を,次の図に示します。

図6-7 最大許容サイズを設定しない運用の例(ディスク容量がいっぱいになった場合の対応)

[図データ]

なお,ベースパス情報を追加したあとに新しく作成されるフォルダは,最も使用数が少ないベースパス情報のパスに作成されます。

また,デフォルト以外のベースパス情報の使用数が上限に達したとき,エラーとなるように,環境設定用プロパティファイルのhptl_clb_cfs_AssignmentModeForUsedCountMaxプロパティに「alert」を設定します。詳細については,「5.3.5 環境設定用プロパティファイル(hptl_clb_cfs.properties)」を参照してください。