1.5 辞書に関係する作業の流れ
(1) 辞書に蓄積するデータの分析と設計
システム分析段階で,辞書に蓄積するデータを分析し,情報をどのように辞書に蓄積するかを検討します。
辞書の設計の詳細は,「2. 辞書の設計」を参照してください。
- 辞書の構造と仕組みの理解
- SEWB+/REPOSITORYでは,一般的なシステム開発を想定して,標準の辞書の枠組みを提供しています。この標準的な枠組みを基に,プロジェクトの開発体制や開発する業務システムに合わせて,COBOLやCなどのアプリケーション開発に使用するプログラミング言語,システムで使用する日本語や英語などの国語,命名ルール,検査項目などの辞書の構造をカスタマイズできます。
- データ分析の結果を辞書にスムーズに引き継いで,辞書を有効に利用しながらデータ中心の開発を進めていくには,辞書の構造や仕組みを考慮したデータ分析が必要になります。このため,実際のデータ分析作業に入る前に,あらかじめ辞書の構造と仕組みについて理解しておくことをお勧めします。
- データ分析と標準化,辞書の設計
- データ分析
データ中心アプローチの方法論に基いて辞書に格納するデータ項目と業務ルールを分析・設計します。方法論に従って,正規化,名称・属性の標準化をして,一貫性のあるデータの体系を作ります。この作業では,辞書登録のために,分析した内容と,辞書に登録できる内容を一致させるよう考慮します。データ分析では,辞書に登録するデータ項目,ドメインを分析します。また,各データ項目に特有の処理(業務ルール)を抽出して整理します。
- データモデリングの情報を連携
システム開発の上流工程を支援するCASEツールを使用している場合,この情報を引き継いだ辞書登録を検討します。
例えば,データモデリングを支援するツール「ERwin/ERX」で作成した設計情報を,CSV形式ファイルを経由して辞書登録します。また,業務設計を支援するツール「Xupper」で作成した設計情報をERwin/ERXに連携し,さらにCSV形式ファイルを経由して辞書登録します。正規化によってデータの重複を排除したデータモデルから,エンティティやエンティティ属性などの情報を辞書に連携できます。
- 既存資産の利用
現行システムの開発資産の有効利用を検討します。SEWB+/REPOSITORYでは,SEWB3のデータ項目辞書から辞書情報を移行して再利用できます。また,ORACLE,HiRDBなどのODBCインタフェースをサポートしているDBMSの既存データベースから,スキーマ定義情報を取り出し,辞書のデータ項目を生成して登録できます。
どの資産を引き継いで辞書に登録して利用するかを,データ分析とあわせて検討します。
- リポジトリで辞書をどのように管理・運用するか検討
- リポジトリで辞書をどのように管理・運用するか検討します。
- 辞書の構成の検討
管理方法や用途によってマルチ辞書(辞書フォルダ)をどのように構成するか,検討します。
- 辞書のカスタマイズの検討
アプリケーション開発に使用するプログラミング言語,データ項目や業務ルールに対する命名ルールや検査項目,検索用のフィールドをどのように設けるのかなどを検討,決定します。
- 運用ルールの検討
辞書の作成者と利用者の権限や役割,辞書の作成者が辞書情報を変更する際の作業・変更通知ルール,分散配布のルールなど,プロジェクトでの運用ルールを明確にします。
(2) 環境設定
SEWB+/REPOSITORYをインストールし,サーバおよびクライアントで構成されるシステム開発環境を構築します。この作業は,システム開発環境全体を管理するシステム管理者が実行します。なお,SEWB+/REPOSITORYは,SEWB+ 基本開発環境のインストールを実行することで,インストールできます。
- SEWB+/REPOSITORYの基本環境の設定
- まず,次の基本環境を構築します。詳細な手順や設定内容については,マニュアル「SEWB+/REPOSITORY 運用ガイド」を参照してください。
- OSの設定
SEWB+/REPOSITORYをWindows Serverで稼働させるための通信環境を設定します。
- データベースの初期設定
リポジトリを格納する前提データベースシステムの環境を設定します。
- ユーザ,グループの登録
リポジトリ内のシステム開発資源を操作できる利用者(ユーザ)をユーザ登録ファイルに登録します。ここで登録されたユーザが,辞書情報を作成,更新したり,辞書情報にアクセスしたりできます。また,各ユーザを,例えば,辞書の管理をするグループ,システム設計者のグループというように,プロジェクトや役割などでグルーピングします。このグループを,グループ登録ファイルに登録します。
- SEWB+/REPOSITORYの初期設定
リポジトリを格納するデータベース名称,ドキュメントの格納ディレクトリなどを初期設定ユティリティを使用して設定します。
- 管理者パスワードの設定
環境構築ユティリティや各種コマンドなど,サーバに用意されている機能はシステム管理者だけが利用できます。このための,システム管理者用のパスワードを設定します。
- 辞書の準備
- 基本環境の設定を終えたあと,環境構築ユティリティを使用してプロジェクトに合わせた辞書の環境を準備します。詳細は,「3.1 辞書の準備」を参照してください。
- 辞書フォルダの作成
辞書フォルダを作成し,マルチ辞書を構成します。
- 辞書の環境設定
プロジェクトや開発体制に合わせて辞書をカスタマイズします。プログラミング言語,国語区分,タイプ,検索に使用するためのフィールド名,検査時に適用する検査項目,命名ルールなどを設定します。また,リポジトリブラウザを使ったデータ項目,業務ルール編集時の文字数制限を設定します。
なお,検査項目や命名ルールは,標準で用意されているもののほかに,独自の規則を記述したDLLを作成して登録することもできます。名称に使用する文字セットの制限など,プロジェクト独自の検査項目や命名ルールを定義できます。
- タイプマッピングの設定
ODBC入力やERwin/ERXと連携したCSV入力を使って辞書登録をする際のタイプの変換規則を設定します。プロジェクトに合わせて,標準で用意されている変換規則をカスタマイズします。
- 標準提供の同一項目用業務ルールの登録
SEWB+/REPOSITORYでは,実際の業務に使用することを想定した同一項目用業務ルール(同一項目間転記)を提供しています。プロジェクトの必要に応じて,あらかじめ辞書に登録しておきます。
(3) 辞書登録
辞書の運用を始める前に,データ分析結果を辞書に登録します。リポジトリブラウザのデータ項目編集機能,業務ルール編集機能を使ってデータ項目,業務ルールを登録します。コマンドを使って一括登録することもできます。どちらの場合も,辞書情報が正しく定義されているか検査したり,継承や結合関係を定義したり,定義内容を変更したりするなどの作業や,登録結果の確認には,リポジトリブラウザを使用します。
(4) 辞書の管理・運用
アプリケーション開発で辞書の利用が開始されてからの管理・運用作業について説明します。
- 辞書情報のメンテナンス
- 辞書情報の追加,変更,削除
リポジトリブラウザのデータ項目編集・作成機能,結合項目の構成機能,業務ルール編集・作成機能などを使用して辞書情報をメンテナンスします。
- 辞書情報の検査
環境設定で設定した検査項目に従って,辞書情報の内容を検査します。
- 関連検索,変更波及の調査
辞書情報を更新する際などに,その変更波及を調査します。リポジトリブラウザの検索機能,関連ブラウザ機能などを使用して変更波及の範囲を確認します。関連ブラウザでツリー形式で表示される資源の関連図は,SEWB+で定義した情報の印刷を支援するツール「SEWB+/REPORT MANAGER」と連携することで,インパクトレポートとして印刷できます(インパクトレポートの印刷は,リポジトリブラウザの関連ブラウザから実行します)。
- 辞書情報の印刷,文書作成
SEWB+/REPORT MANAGERを使用して,データ項目または業務ルールの定義内容や一覧を印刷します(定義内容および一覧の印刷は,リポジトリブラウザから実行します)。
辞書情報をCSV形式ファイルに出力したあと,Microsoft ExcelやOFIS/POLなどの帳票出力に適したアプリケーションを使って印刷する方法もあります。また,このCSV形式ファイルを使って必要に応じて辞書情報を加工し,辞書の作成者とアプリケーションの開発者の間でやり取りするための文書を作成したりします。
- 辞書情報のセキュリティ
- 辞書フォルダ,データ項目または業務ルール単位にアクセス権を設定し,辞書情報を保全します。アクセス権の設定によって,辞書情報を作成・更新できるユーザ,辞書情報を参照してシステム開発に利用するユーザを分け,辞書の一貫性を守ります。
- 異なるサーバへの辞書の配布,複製
- 辞書を複数のサーバに分散して運用している場合,エクスポート・インポートユティリティを使用して,辞書情報のサーバ間の配布,複製をします。エクスポート・インポートは,対象の範囲を全体または増分情報のどちらかを選択できるため,効率良く作業できます。
- 定期的なバックアップ
- 辞書は,システム開発プロジェクト共通の重要な情報資源といえます。運用ルールを定めて,定期的に(例えば,業務終了後に毎日,一週間おきなどに)辞書情報を外部媒体に退避(バックアップ)することをお勧めします。予期しない障害が発生して辞書が破壊された場合でも,バックアップしておけば,その内容をリポジトリに回復(リストア)できます。バックアップおよびリストアは,Windows Serverのファイルシステムに用意されている機能を使用します。環境構築ユティリティを使用すれば,バックアップのためのコマンドファイルを生成できます。詳細は,マニュアル「SEWB+/REPOSITORY 運用ガイド」を参照してください。
(5) 次期開発への再利用,保守
システム開発の終了後,そのシステムの開発に利用した辞書を保守します。また,次期システムの開発に,継続して辞書を利用していきます。なお,辞書情報の見直しが必要な場合は,次期システム開発を始める前に(新システムの開発時と同様に),辞書を整備しておくことをお勧めします。
- 開発システム単位の管理
システム開発に利用した辞書を凍結用に用意した別の辞書フォルダにエクスポート・インポートしたり,外部媒体に辞書をエクスポートして保守に備えます。
- システム保守(システムの拡張)への利用
次期システムの開発へ利用します。