データ分析で求められたドメインと,ドメインによってグルーピングされたデータ項目は,継承関係で結び付けてデータ項目辞書に登録します。継承とは,データ項目間で共通の性質を持つデータ項目から,その定義情報を複数のデータ項目に引き継ぐことです。この継承の仕組みを利用して,ドメインを継承関係の上位のデータ項目に登録し,ドメインによってグルーピングされたデータ項目を,その定義情報を引き継ぐ下位のデータ項目として登録します。
このように,ドメインの分析結果に基づいてデータ項目を登録すれば,データ項目を効率良く体系的に登録および管理できるとともに,定義情報の標準化を図れます。
ここでは,データ項目を設計および登録するための前提知識として,継承の考え方について解説します。
ドメインの分析結果をデータ項目辞書に登録するには,まず,最も共通的な値域を持つドメインを,継承関係の最上位のデータ項目として登録します。ドメインとなるデータ項目の登録を終えたあと,そのデータ項目から定義情報を継承して,ドメインにグルーピングされたデータ項目または下位のドメインを登録します。このようにして,データ項目同士に継承関係を定義したとき,データ項目の間には,関連種別「継承」の関連が自動的に付けられます。
ドメインのデータ項目の定義情報は,継承関係の下位のデータ項目に引き継がれます。したがって,ドメインにグルーピングされたデータ項目は,各データ項目固有の定義情報だけを定義し,登録すればよいことになります。
継承関係を定義しておけば,変更波及の管理も容易になります。継承関係を定義したあと,上位のデータ項目の内容を変更すると,下位のデータ項目に継承された定義情報にも,その変更が自動的に反映されます。ただし,下位のデータ項目固有の定義情報には,変更は反映されません。
定義情報の継承と変更波及の例を次の図に示します。
図2-6 定義情報の継承と変更波及の例
「データ項目B-1」の定義内容には,「データ項目A」の変更がそのまま引き継がれます。これに対して,「データ項目C-1」では,固有のけた数「6」を定義しているため,「データ項目A」のけた数を変更しても,定義内容は変更されません。
それぞれの定義項目に対して,データ項目同士の継承関係を定義したときに,ドメイン(上位のデータ項目)の情報を必ず継承するか,リポジトリブラウザで任意に継承を指定するか,または継承を禁止するかを,環境構築ユティリティであらかじめ設定しておけます。これを「継承モード」といい,標準では任意に継承を指定することを示す「任意継承」が設定されています。