(1) 文書配布機能の概要
Document Managerでは,あるサーバで管理している一般文書の複製を別のサーバに配布することによって複数のサーバ間で共用できます。この機能を文書配布機能といいます。
文書配布機能では,圧縮した一般文書も配布できます。これによって,ファイルの転送時間を短縮できます。
文書配布機能の利点を次に示します。
(a) 特定サーバへのアクセスの集中を緩和できる
Document Managerでは,複数のサーバに複数のクライアントというシステム構成での運用が考えられます。それぞれのサーバには,利用目的ごとに文書が保存されています。このような状況では,特定のサーバにアクセスが集中することが考えられます。文書配布機能を利用して,アクセスが集中する文書を各サーバへ配布するとサーバの性能低下を防げます。
(b) 文書の更新は配布元のサーバだけで済む
複数のサーバ間で文書の共有ができなければ,必要な文書は各サーバで管理しなければなりません。文書が大量になる程,メンテナンスに使う時間は増え,資源も有効に利用できません。
しかし,文書によってはユーザ間での共有を目的としている文書,つまり参照するだけの文書があります。このような文書は,あるサーバで一括管理し,ほかのサーバには必要に応じて,文書配布機能を使用して配布します。文書配布機能を使用して各サーバに配布される文書は,配布元のサーバのコピーです。したがって,必要なときに配布元のサーバで1回文書を更新すればよいことになります。
(2) 文書配布機能による文書の配布
(a) 配布の仕組み
文書配布機能では,文書を配布する側のサーバを配布元サーバといい,文書を配布される側のサーバを配布先サーバといいます。
文書を配布するには,配布元サーバで管理している文書のうち,配布する文書をグループ化しておきます。このグループを文書配布対象グループといいます。
配布元サーバは,ある文書配布対象グループに対してユーザの配布要求があると,該当する文書実体ファイルとそれに関連するファイルをDocument Managerデータベースから抽出し,配布用のファイルを作成します。この配布用のファイルをエクスポートファイルといいます。エクスポートファイルは,メールシステムによって,配布元サーバから配布先サーバへと送信されます。
配布先サーバは,配布されたエクスポートファイルから文書実体ファイルを取り出し,配布元サーバ側と同じ名称の一般文書データベースに文書を格納します。同様に,配布元サーバ側と同じ名称のフォルダ及び分類索引にも文書を登録します。
サーバ間での文書配布の仕組みについて,図2-7に示します。
図2-7 サーバ間での文書配布の仕組み
(b) 配布の対象
文書配布機能によって配布できるのは,一般文書だけです。フォルダ,分類索引及び文書データベースなどの文書の分類体系及びフォーム文書は配布できません。
なお,一般文書は圧縮した状態でも配布できます。
(c) 配布の単位
文書を配布する場合,文書配布対象グループが配布の単位となります。配布元サーバで管理している文書のうち,配布する文書を文書配布対象グループとしてグループ化しておきます。
文書配布対象グループは,1サーバ内に複数,作成できます。また,配布先のサーバは,文書配布対象グループごとに設定できます。
文書配布対象グループの作成には,次の二通りの方法があります。
(d) 配布対象にする文書の追加及び削除
配布文書追加・削除ユティリティを使うと,一般文書データベース,分類索引又はフォルダに登録されている文書を,文書配布対象グループに登録して配布できます。
文書配布対象グループに文書を追加又は削除するには,文書配布対象グループ更新用として作成した一般文書データベース,分類索引又はフォルダに文書を追加又は削除します。次に,配布文書追加・削除ユティリティを実行し,文書配布対象グループの更新及び文書の配布をします。
文書配布対象グループに文書を追加する例を示します。
配布文書追加・削除ユティリティについては,「8.12 配布する文書を追加又は削除する」を参照してください。
(e) 配布対象の抽出とエクスポートファイルの作成
Document Manager Client又は配布文書追加・削除ユティリティを使った文書の配布要求があると,配布元サーバは該当する文書を文書データベースから抽出し,次のファイルで構成されるエクスポートファイルを作成します。×××の部分は,文書配布対象グループ名にタイムスタンプが付加された文字列です。タイムスタンプは,エクスポートファイル作成時の年月日時分秒がYYYYMMDDhhmmssの形式で付加されます。
エクスポートファイルは,一つの文書配布対象グループに対する1回の配布要求ごとに,1組作成されます。作成される場所は,配布元サーバの作業ディレクトリの下です。
なお,配布対象の文書中にバージョン管理されている文書が含まれている場合,最も新しいバージョンの文書を対象にエクスポートファイルが作成されます。また,エクスポートファイルを作成済みの文書配布対象グループに対して,再度配布要求をした場合,前回のエクスポートファイル作成時から更新又は削除された文書だけが抽出されます。
(f) エクスポートファイルの配布
Document Managerサーバとメールシステムの間でのエクスポートファイルの受け渡しには,文書配布送受信デーモンというDocument Managerの機能(プロセス)を使用します。配布元サーバで作成されたエクスポートファイルは,文書配布送受信デーモンによって,メールシステムへと渡されます。メールシステムに渡されたエクスポートファイルは,配布先のサーバの送受信デーモンによって,配布先サーバの作業ディレクトリ下に格納されます。こうして配布されたエクスポートファイルは,配布先サーバによって,Document Managerデータベースに取り込まれます。
なお,メールシステムを起動していない状態で文書を配布要求した場合,エクスポートファイルは作成されますが,配布されません。この場合は,FTP(File Transfer Protocol,ファイル転送プロトコル)やCMT(カセット磁気テープ)などで配布してください。この方法での配布については,「メールシステムと連携していない場合の配布」を参照してください。
また,文書配布送受信デーモンが起動していない状態で文書を配布要求した場合,配布要求は受け付けられますが,エクスポートファイルは作成されません。この場合は,文書配布送受信デーモンを起動したときにエクスポートファイルが作成されます。
Document Managerサーバがメールシステムと連携していない場合は,FTPやCMTなどによって文書を配布することもできます。この場合は,次の手順で文書を配布します。
インポート機能ユティリティについては,「8.8 文書配布情報を取り込む」を参照してください。
(g) 配布した文書の状態の表示
メールシステムと連携して文書配布を行う場合,文書の配布状態表示ユティリティを使用できます。
文書の配布状態表示ユティリティを使用すると,配布した文書(エクスポートファイル)の配布状態(配信中,取り込み成功,取り込み失敗)を配布元サーバから確認できます。文書の配布状態表示ユティリティについては,「8.13 文書の配布状態を表示する」を参照してください。
また,配布先でエラーが発生した場合にエラーの要因を取り除いた後,文書再配布ユティリティによって,文書を再配布できます。文書再配布ユティリティについては,「8.14 文書を再配布する」を参照してください。
そのほかに,環境設定ユティリティでの定義によって,文書配布が正常終了したことを確認した時点でエクスポートファイルを自動的に削除できます。
環境設定ユティリティについては,「8.2 Document Managerの環境を設定する」を参照してください。
(3) 配布された文書に対する操作
文書配布機能によって,配布先サーバに配布された文書を配布文書といいます。これに対し,配布元サーバの文書をオリジナル文書といいます。
配布文書に対しては,次に示す操作だけを実行できます。
ただし,Document Manager管理者は,上記の操作以外に配布文書を削除することもできます。