ここでは,フォーム文書データベースを設計するときに考慮する点について説明します。
(1) サンプルデータベースをカスタマイズする
Document Managerには,幾つかのフォーム文書データベースの定義情報がサンプルとして提供されています。この定義情報を利用すれば,必要に応じて,提供されているフォームや目的別一覧をカスタマイズして,適用業務に合ったフォーム文書データベースが定義できます。
(2) 適用業務を決める
フォーム文書データベースを設計するときは,フォーム文書データベースをどのような業務の効率化のために使用するのか決定します。次のような業務への適用が考えられます。
(3) 利用するフォームを設計する
次に,適用業務に必要なフォーム(営業日報のフォーマットや申請書など)を設計します。フォームは,Groupmax Formを使って定義します。例えば,営業日報ならば,次のようなフォームを設計します。
図4-1 営業日報のフォームの設計例
また,ディスカッション用のフォーム文書データベースには,発言するためのフォームとその発言に対する意見を入力するためのフォームが必要になります。
図4-2 ディスカッション用のフォームの設計例
発言に対する意見を入力するために,発言用のフォームに返信用のフォーム文書の作成を指示するボタンなどを,定義しておくと便利です。なお,各フォーム間の関連は,Groupmax Formのスクリプトを使用して定義してください。また,フォームの項目に定義されている属性は,フォーム文書データベースのユーザ定義属性として追加されます。フォームで定義する属性とDocument Managerで管理する属性とのマッピングを考慮して設計することをお勧めします。
フォーム文書データベースに登録されているフォーム文書から,特定のデータを集計して表示するための,集計フォームを作成します。例えば,製品の受注管理をするフォーム文書データベースには,月の総受注数が集計できるような集計フォームを作成しておくと便利です。データを集計するための条件は,Groupmax Formのスクリプトを使用して定義します。
(4) 追加する属性を決定する
フォーム文書データベースには,Document Managerが設定するシステム定義属性のほかにユーザ定義属性を追加します。ただし,フォーム文書データベースにフォームを登録するときに,フォームの項目に定義されている属性をユーザ定義属性として追加できます。フォームから取り込まれたユーザ定義属性は,フォーム文書を一覧表示するときの,表示項目として利用できます。
フォームとユーザ定義属性の関係を図4-3に示します。
図4-3 フォームとユーザ定義属性の関係
なお,フォームから取り込んだ属性以外にも,フォーム文書データベースに追加する属性があるかどうかを検討してください。特に,次の点に注意してください。
(a) フォームに定義されていない属性を追加する場合
フォームには定義されていないが,Document Managerの運用上,必要な属性があれば,追加してください。ただし,既にフォーム文書が登録されているフォーム文書データベースに対しては,属性を追加できません。したがって,将来的な属性の拡張などを考慮して,ユーザ定義属性を追加します。
また,Groupmax Formでは扱えない属性(日付型など)は,必要に応じてユーザ定義属性としてフォーム文書データベースに追加してください。
(b) Groupmax Formで文字列属性を定義してある場合
Groupmax Formで文字列属性を定義した場合は,Document Managerがバイト数によって可変長文字列型属性又は固定長文字列型属性として定義します。定義するバイト数が255バイト以下の場合は,固定長文字列型属性,255バイトを超える場合は,可変長文字列型属性として定義されます。Document Managerによって自動的に変換された属性型とは異なる属性型を定義する場合は,定義内容を変更してください。
(c) Groupmax Formで数値型属性を定義してある場合
Groupmax Formで数値型属性を定義してある項目は,小数やパック形式のデータを扱えます。ただし,フォームから属性を取り込む場合は,Document Managerは固定長文字列属性として定義します。したがって,必要に応じて,整数型などの属性型に変更してください。
(5) 目的別一覧を決定する
フォーム文書を作成するためのフォームを設計したら,そのフォームに定義した項目に従って,フォーム文書の一覧の表示形式を指定します。目的別一覧は,フォーム文書の一覧をどのように表示させるかによって複数定義できます。目的別一覧を決定する場合は,次に示す項目について決定します。
(a) 目的別一覧定義名の決定
フォーム文書の一覧を,どのような観点から表示する目的別一覧なのか決定します。例えば,営業日報を管理するフォーム文書データベースの場合,次のような目的別一覧が考えられます。
(b) 表示一覧の決定
定義したフォームを基に,フォーム文書データベースの内容を表示するための表示項目を決定します。また,項目の表示順序についても決定します。
(c) 表示項目の表示形式の決定
各表示項目に対する詳細情報を決定します。
(d) 表示条件の決定
目的別一覧に対して,属性値を利用したフォーム文書の表示条件をあらかじめ定義できます。例えば,フォーム文書の作成日時を限定して一覧を表示するといった設定ができます。なお,表示条件を定義しなくてもフォーム文書の一覧を表示した後で,同じ条件を指定した文書の絞り込みができます。
(6) アクセス権による運用を考える
フォーム文書の管理では,フォーム文書データベース,目的別一覧及びフォーム定義にアクセス権を設定できます。それぞれのアクセス権の運用について考えます。
なお,それぞれのアクセス権についての詳細は,「3.2.2 フォーム文書データベースの管理」を参照してください。
(a) フォーム文書データベースのアクセス権による運用
フォーム文書データベースに設定されたアクセス権は,登録するフォーム文書,目的別一覧及びフォーム定義に引き継がれます。したがって,定義したフォーム文書データベースの利用目的や共用の度合い,所属するフォーム文書に設定するアクセス権などを考慮して,アクセス権を変更することをお勧めします。
例えば,営業日報を管理するフォーム文書データベースを運用する場合,営業部に所属するユーザには,営業日報の作成と更新を許可して,一般のユーザには参照だけを許可するようなアクセス権の設定が考えられます。この場合は,グループ「営業部」に対して編集権を与えて,「全ユーザ」には参照権を与える運用方法が考えられます。
(b) フォーム定義のアクセス権による運用
フォーム定義に設定するアクセス権は,それぞれのフォーム定義の利用目的を考慮して設定することをお勧めします。
例えば,営業日報を作成するためのフォーム定義を運用する場合,営業部に所属するユーザにはそのフォーム定義の参照を許可して,一般のユーザには許可しないようなアクセス権の設定が考えられます。この場合は,グループ「営業部」に対してすべてのアクセス権を与えて,「全ユーザ」にはアクセス権を与えないように設定する運用方法が考えられます。
(c) 目的別一覧のアクセス権による運用
目的別一覧に設定するアクセス権は,目的別一覧の利用目的を考慮して設定することをお勧めします。
例えば,営業日報の項目を表示する目的別一覧を作成した場合,この目的別一覧の参照を営業部に所属するユーザだけに許可するような設定が考えられます。この場合は,グループ「営業部」に対してすべてのアクセス権を与えて,「全ユーザ」にはアクセス権を与えないように設定する運用方法が考えられます。
(7) フォームと目的別一覧の組み合わせによるフォーム文書一覧の表示
一つのフォーム文書データベースには,複数のフォームを登録できます。また,目的別一覧も用途によって複数定義できます。それぞれのフォーム及び目的別一覧の定義とアクセス権の設定によって,フォーム文書を一覧表示する方法を増やせます。
例えば,人事データを管理するフォーム文書データベースでは,データを管理する側のユーザと一般のユーザとで参照を許可するデータを限定する運用が考えられます。このような場合,参照するデータの範囲をフォームと目的別一覧の定義によって変えることができます。人事データ管理用のフォーム文書データベースに登録するフォームの作成例を図4-4に示します。
図4-4 人事データ管理用のフォームの作成例
管理者用のフォームには,必要な情報がすべて表示されるように定義しておきます。一般ユーザ用のフォームには,「氏名」,「所属」及び「内線番号」だけが表示されるように定義しておきます。この二つのフォームをフォーム文書データベースに登録することで,フォーム文書を開いた時のデータの参照範囲を限定できます。すなわち,管理者グループに所属するユーザには,「管理者用フォーム」及び「一般ユーザ用フォーム」に対してアクセス権が与えられているので,どちらかのフォームを選択して文書を開けます。一方,一般のユーザは「一般ユーザ用フォーム」にだけアクセス権が与えられているため,「一般ユーザ用フォーム」を利用して文書を開くことになります。ただし,図に示すようにフォームに対するアクセス権を設定しておかなければ,すべてのデータが参照できます。
次に,定義したフォームに対応する目的別一覧を考えます。二つのフォームを比較すると,一般ユーザ用のフォームには「連絡先」,「資格取得状況」及び「評価」という項目がありません。すなわち,目的別一覧を使用してフォーム文書を一覧表示する場合でも,これらのデータは表示しないように設定する必要があるわけです。したがって,それぞれのフォームに対応する目的別一覧を定義しておけば,フォーム文書を一覧表示する場合でも,データの参照範囲を限定できます。この例では,表4-8及び表4-9に示すような目的別一覧の定義が考えられます。
表4-8 管理者が使用できる目的別一覧「管理者用」の定義例
表示項目(表示順) | タイトル | 表示形式 | ソート |
---|---|---|---|
所属 | 所属 | 重複排除 | 昇順 |
氏名 | 氏名 | - | 昇順 |
内線番号 | 内線 | - | - |
連絡先 | 連絡先 | - | - |
資格取得状況 | 資格 | - | - |
評価 | 評価 | - | - |
注 「管理者用フォーム」と同じアクセス権を設定します。
表4-9 一般ユーザが使用できる目的別一覧「一般ユーザ用」の定義例
表示項目(表示順) | タイトル | 表示形式 | ソート |
---|---|---|---|
所属 | 所属 | 重複排除 | 昇順 |
氏名 | 氏名 | - | 昇順 |
内線番号 | 内線 | - | - |
注 「一般ユーザ用フォーム」と同じアクセス権を設定します。
また,目的別一覧には文書の絞り込み条件を定義できます。例えば,「役員以上の情報は公開しない」といった条件を与えておけば,更に詳細な人事データの参照と保護ができます。
このように,フォーム,目的別一覧及びそれぞれのアクセス権の細かい定義によって,文書一覧の表示方法を増やすことができます。なお,フォーム文書データベースの属性を更新する権限を持つユーザは,フォームや目的別一覧に設定されているアクセス権を変更できます。必ず,フォーム文書データベース自体の運用方法とアクセス権の設定を考慮しながら,フォームや目的別一覧を定義することをお勧めします。