5.6.2 データ移動の手順

次に,組織のサーバ間移動の手順を,二つの方法についてそれぞれ説明します。

<この項の構成>
(1) 配下の組織又はユーザを,一時的に別の組織に退避(移動)してから組織を移動する方法
(2) 組織とその配下の組織又はユーザをまとめて移動する方法

(1) 配下の組織又はユーザを,一時的に別の組織に退避(移動)してから組織を移動する方法

移動対象の組織の配下の組織又はユーザを,一時的に別の組織に退避してから組織を移動する場合に必要な作業は,大きく分けると次の三つです。

  1. 配下の組織,又はユーザを別の組織の配下に変更する。
  2. 移動する組織のホームサーバを変更する。
  3. 別の組織の配下に退避させた組織,又はユーザを,元の組織の配下に変更する。

この例では,まず退避用の組織を作成した後,営業1課の配下ユーザ3名を一時的に退避用の組織の配下に変更します。そして営業1課の配下の組織・ユーザがいなくなった時点で営業1課を本社サーバに移動します。その後で,退避用の組織の配下に変更したユーザ3名を元の営業1課の配下に移動することで営業1課の全データを神奈川サーバから本社サーバに移動します。このため一括登録ユティリティを3回実行することになります。手順は多くなりますが,安全に移動処理を実行できるため,通常はこの方法で移動を実行してください。

営業1課を移動する作業の実例を次に示します。なお,この例ではデータ退避先をc:¥tempと設定しています。

(a) 営業1課の配下のユーザ3名を退避用の組織の配下に変更する
  1. 環境をバックアップします。
  2. 営業1課の配下データを一時的に退避するための組織を作成します。
    退避用の組織は一時的に使用するだけなので,任意のデータで作成してください。ただし,退避用の組織が所属する最上位組織は,退避するデータ(営業1課の配下)が所属する最上位組織と同じでなければなりません。この例では,A株式会社下に"workorg"という組織IDで作成したものとします。
  3. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でgmaxexpコマンドを実行して,営業1課直下に所属する登録情報を出力します。
    所属組織を変更するので,オプションsで処理区分にCを設定します。また,営業1課直下の情報が出力されるようにオプションtを指定します。次のように実行してください。
    gmaxexp -s C -g Aeigyo1 -t gu c:¥temp¥Aeigyo1T.csv
    コマンドを実行した結果のAeigyo1T.csvの例を次に示します。
    #組織種別処理種別処理区分MTA名ユーザID所属組織ID日本語名日本語組織名ホームサーバ
    U CMWS157A0112 Aeigyo1 斎藤 保   ws157
    U CMWS157A0111 Aeigyo1 相田 進   ws157
    U CMWS157A0113 Aeigyo1 中山 正太   ws157
  4. 出力したAeigyo1T.csvファイルを,表計算ソフトを使用して所属組織IDを営業1課(Aeigyo1)から退避用組織(workorg)に修正します。
    修正後のAeigyo1T.csvの例を次に示します。
    #組織種別処理種別処理区分MTA名ユーザID所属組織ID日本語名日本語組織名ホームサーバ
    U CMWS157A0112 workorg 斎藤 保   ws157
    U CMWS157A0111 workorg 相田 進   ws157
    U CMWS157A0113 workorg 中山 正太   ws157
  5. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でgmaxchkコマンドを実行して,作成したファイルをチェックします。
    次のように実行してください。
    gmaxchk -v c:¥temp¥Aeigyo1T.csv
  6. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でgmaxsetコマンドを実行します。
    移動するユーザ,及び組織を削除した後,ホームサーバを本社サーバに変更して再登録します。次のように実行してください。
    gmaxset -v m c:¥temp¥Aeigyo1T.csv
  7. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でnxsrepstatコマンドを実行します。
    所属組織IDの変更がレプリケーションされたかを確認します。次のように実行してください。
    nxsrepstat
(b) 営業1課のホームサーバを変更する
  1. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でgmaxexpコマンドを実行して,営業1課の登録情報を出力します。
    ホームサーバを変更するので,オプションsで処理区分にMを設定します。次のように実行してください。
    gmaxexp -s M -g Aeigyo1 -o g c:¥temp¥Aeigyo1.csv
    コマンドを実行した結果のAeigyo1.csvの例を次に示します。
    #組織種別処理種別処理区分MTA名ユーザID所属組織ID日本語名日本語組織名ホームサーバ
    G MMWS157  Aeigyo1   A社営業部営業1課 ws157
  2. 出力したAeigyo1.csvファイルを,表計算ソフトを使用して移動後の本社サーバのデータに修正します。
    修正が必要な項目は,MTA名,ホームサーバなどです。
    修正後のAeigyo1.csvの例を次に示します。
    #組織種別処理種別処理区分MTA名ユーザID所属組織ID日本語名日本語組織名ホームサーバ
    G MMWS155  Aeigyo1   A社営業部営業1課 ws155
  3. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でgmaxchkコマンドを実行して,作成したファイルをチェックします。
    次のように実行してください。
    gmaxchk -v c:¥temp¥Aeigyo1.csv
  4. Aeigyo1.csvを神奈川サーバへ転送します。
    チェックが完了したAeigyo1.csvを,神奈川サーバのc:¥tempに転送してください。
  5. 神奈川サーバでSAVE_MBコマンドを実行します。
    移動する組織の共用メールボックスなどの情報を,データ退避先に保存します。組織のデータを保存するため,オプションに-gを必ず指定します。次のように実行してください。
    SAVE_MB -v -i -g c:¥temp¥Aeigyo1.csv c:¥temp
  6. SAVE_MBコマンドで保存したメールボックスの退避データを,ディレクトリごと神奈川サーバから本社サーバに転送します。
    退避データのディレクトリc:¥temp¥ws155
  7. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でgmaxsetコマンドを実行します。
    移動する組織を削除した後,ホームサーバを本社サーバに変更して再登録します。次のように実行してください。
    gmaxset -v m c:¥temp¥Aeigyo1.csv
  8. 神奈川サーバでnxsrepstatコマンドを実行します。
    組織の移動(削除)が神奈川サーバにレプリケーションされているかを確認します。次のように実行してください。
    nxsrepstat -h ws157
  9. 本社サーバでLOAD_MBコマンドを実行します。
    転送したメールボックスのデータを本社サーバで回復します。組織のデータを回復するため,オプションに-gを必ず指定します。次のように実行してください。
    LOAD_MB -v -g c:¥temp¥Aeigyo1.csv c:¥temp¥ws155
(c) 退避用の組織に移動したユーザを営業1課の配下に戻す
  1. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でgmaxexpコマンドを実行して,退避用組織の直下に所属する登録情報を出力します。
    ホームサーバを変更するので,オプションsで処理区分にMを設定します。また,退避用組織の直下の情報が出力されるようにオプションtを指定します。次のように実行してください。
    gmaxexp -s M -g workorg -t gu c:¥temp¥workorg.csv
    コマンドを実行した結果のworkorg.csvの例を次に示します。
    #組織種別処理種別処理区分MTA名ユーザID所属組織ID日本語名日本語組織名ホームサーバ
    U MMWS157A0112 workorg 斎藤 保   ws157
    U MMWS157A0111 workorg 相田 進   ws157
    U MMWS157A0113 workorg 中山 正太   ws157
  2. 出力したデータから,所属組織IDを営業1課に戻し,ホームサーバに関する項目も移動後の本社サーバのデータに修正します。
    修正が必要な項目は,所属組織ID,MTA名,ホームサーバ,Schedulerサーバ,Workflowサーバ,Document Managerサーバなどです。
    修正後のworkorg.csvの例を次に示します。
    #組織種別処理種別処理区分MTA名ユーザID所属組織ID日本語名日本語組織名ホームサーバ
    U MMWS155A0112 Aeigyo1 斎藤 保   ws155
    U MMWS155A0111 Aeigyo1 相田 進   ws155
    U MMWS155A0113 Aeigyo1 中山 正太   ws155
  3. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でgmaxchkコマンドを実行して,作成したファイルをチェックします。
    次のように実行してください。
    gmaxchk -v c:¥temp¥workorg.csv
  4. workorg.csvを神奈川サーバへ転送します。
    チェックが完了したworkorg.csvを,神奈川サーバのc:¥tempに転送してください。
  5. 神奈川サーバでSAVE_MBコマンドを実行します。
    移動するメールボックスなどの情報をデータ退避先に保存します。すべてのデータを保存するためオプションに-aを指定します。次のように実行してください。
    SAVE_MB -v -i -a c:¥temp¥workorg.csv c:¥temp
  6. SAVE_MBコマンドで保存したメールボックスの退避データを,ディレクトリごと神奈川サーバから本社サーバに転送します。
    退避データのディレクトリc:¥temp¥ws155
  7. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でgmaxsetコマンドを実行します。
    移動するユーザを削除した後,所属組織を営業1課に,ホームサーバを本社サーバに変更して再登録します。次のように実行してください。
    gmaxset -v m c:¥temp¥workorg.csv
  8. 神奈川サーバでnxsrepstatコマンドを実行します。
    ユーザの移動(削除)が神奈川サーバにレプリケーションされているかを確認します。次のように実行してください。
    nxsrepstat -h ws157
  9. 本社サーバでLOAD_MBコマンドを実行します。
    転送したメールボックスのデータを本社サーバで回復します。すべてのデータを回復するためオプションに-aを指定します。次のように実行してください。
    LOAD_MB -v -a c:¥temp¥workorg.csv c:¥temp¥ws155
  10. 作成した退避用の組織(workorg)を削除します。

(2) 組織とその配下の組織又はユーザをまとめて移動する方法

この移動方法では,組織とその配下の組織又はユーザを,一つのユーザ登録ファイルに記述して移動を行います。この方法では,ユーザ登録ファイルが複雑になり,ユーザ登録ファイルの編集を誤るとユーザデータが初期化される可能性もあるため,一括登録ユティリティの操作方法や注意事項を熟知されていない方は実行しないでください。通常は「(1) 配下の組織又はユーザを,一時的に別の組織に退避(移動)してから組織を移動する方法」で実行してください。

この組織移動では,本社サーバから営業1課のデータを出力して,それを基に本社サーバに移動するユーザ登録ファイルを作成します。作成したファイルを使って組織移動を行います。

この例ではデータ退避先をc:¥tempと設定しています。

  1. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でgmaxexpコマンドを実行して,営業1課の登録情報を出力します。
    ホームサーバを変更するので,オプションsで処理区分にMを設定します。また,営業1課に所属する全組織,全ユーザが出力されるように指定します。次のように実行してください。
    gmaxexp -s M -g Aeigyo1 -a gu c:¥temp¥Aeigyo1.csv
    コマンドを実行した結果出力されるAeigyo1.csvの例を次に示します。
    #組織種別処理種別処理区分MTA名ユーザID所属組織ID日本語名日本語組織名ホームサーバ
    G MMWS157  Aeigyo1   A社営業部営業1課 ws157
    U MMWS157A0112 Aeigyo1 斎藤 保   ws157
    U MMWS157A0111 Aeigyo1 相田 進   ws157
    U MMWS157A0113 Aeigyo1 中山 正太   ws157
  2. 出力したAeigyo1.csvファイルを,表計算ソフトを使用して移動後の本社サーバのデータに修正します。
    修正が必要な項目は,MTA名,ホームサーバ,Schedulerサーバ,Workflowサーバ,Document Managerサーバなどです。
  3. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でgmaxchkコマンドを実行して,作成したファイルをチェックします。
    次のように実行してください。
    gmaxchk -v c:¥temp¥Aeigyo1.csv
    コマンドを実行した結果のAeigyo1.csvの例を次に示します。
    #組織種別処理種別処理区分MTA名ユーザID所属組織ID日本語名日本語組織名ホームサーバ
    GMDMMWS155  Aeigyo1   A社営業部営業1課 ws155
    GMAMMWS155  Aeigyo1   A社営業部営業1課 ws155
    UMDMMWS155A0112 Aeigyo1 斎藤 保   ws155
    UMAMMWS155A0112 Aeigyo1 斎藤 保   ws155
    UMDMMWS155A0111 Aeigyo1 相田 進   ws155
    UMAMMWS155A0111 Aeigyo1 相田 進   ws155
    UMDMMWS155A0113 Aeigyo1 中山 正太   ws155
    UMAMMWS155A0113 Aeigyo1 中山 正太   ws155
  4. チェック後のファイルを削除,追加の順番にソートして,データを正しい順番に並べ替えます。
    移動処理では移動前データを削除(処理区分:DM)した後,移動後データで登録(処理区分:AM)します。そのため,移動前データの削除,移動後データの追加の順番に並べた後,削除は,ユーザ,下位組織,上位組織,最上位組織の順番に,追加は,最上位組織,上位組織,下位組織,ユーザの順番に並べ替える必要があります。
    営業1課の移動では,次のようにユーザの削除,組織の削除,組織の追加,ユーザの追加の順番に並べ替えます。並べ替えには表計算ソフトを使用すると便利です。ここでは値の編集はしないで,レコードの並べ替えだけを実行してください。
    また,移動以外の処理で処理区分にDMやAMを設定することはできません。ユーザ登録ファイルを作成するときは,処理区分にDMやAMを設定しないでください。
    #組織種別処理種別処理区分MTA名ユーザID所属組織ID日本語名日本語組織名ホームサーバ
    UMDMMWS155A0113 Aeigyo1 中山 正太   ws155
    UMDMMWS155A0111 Aeigyo1 相田 進   ws155
    UMDMMWS155A0112 Aeigyo1 斎藤 保   ws155
    GMDMMWS155  Aeigyo1   A社営業部営業1課 ws155
    GMAMMWS155  Aeigyo1   A社営業部営業1課 ws155
    UMAMMWS155A0112 Aeigyo1 斎藤 保   ws155
    UMAMMWS155A0111 Aeigyo1 相田 進   ws155
    UMAMMWS155A0113 Aeigyo1 中山 正太   ws155
  5. 環境をバックアップします。
  6. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でgmaxchkコマンドを再実行して,並べ替えたファイルをチェックします。
    チェックが完了したファイルを修正した場合,必ずgmaxchkコマンドを実行し直してください。
    次のように実行してください。
    gmaxchk -v c:¥temp¥Aeigyo1.csv
  7. Aeigyo1.csvを神奈川サーバへ転送します。
    チェックが完了したAeigyo1.csvを,神奈川サーバのc:¥tempに転送してください。
  8. 神奈川サーバでSAVE_MBコマンドを実行します。
    移動する組織,ユーザのメールボックスなどの情報をデータ退避先に保存します。組織とユーザの両方のデータを保存するため,オプションに-aを必ず指定します。次のように実行してください。
    SAVE_MB -v -i -a c:¥temp¥Aeigyo1.csv c:¥temp
  9. SAVE_MBコマンドで保存したメールボックスの退避データを,ディレクトリごと神奈川サーバから本社サーバに転送します。
    退避データのディレクトリc:¥temp¥ws155
  10. 本社サーバ(マスタ管理サーバ)でgmaxsetコマンドを実行します。
    移動するユーザ,組織を削除した後,ホームサーバを本社サーバに変更して再登録します。次のように実行してください。
    gmaxset -v m c:¥temp¥Aeigyo1.csv
  11. 神奈川サーバでnxsrepstatコマンドを実行します。
    ユーザの移動(削除)が神奈川サーバにレプリケーションされているかを確認します。次のように実行してください。
    nxsrepstat -h ws157
  12. 本社サーバでLOAD_MBコマンドを実行します。
    転送したメールボックスのデータを本社サーバで回復します。すべてのデータを回復するため,オプションに-aを必ず指定します。次のように実行してください。
    LOAD_MB -v -a c:¥temp¥Aeigyo1.csv c:¥temp¥ws155