9.1 経路解析機能の概要

経路解析機能は,ワークフローから不正な経路や異常ループ経路などの情報を抽出して解析する機能です。ビジネスプロセスを解析して,シンク(ビジネスプロセスの終端)に到達しない経路や分岐が不正な経路,無限ループになるおそれがある経路などの情報を出力しビジュアル表示できます。

シミュレータは,ビジュアル定義(Workflow Definer)のワークフロー定義で定義したビジネスプロセス,及びユーザが設定するパラメタを基に経路解析を実行します。経路解析の実行後,集計してグラフィカルに表示します。また,ワークフロー定義と連携できます。経路解析機能の概要を図 9-1に示します。

図9-1 経路解析機能の概要

[図データ]

図 9-1について説明します。

  1. ビジネスプロセス定義の経路解析への読み込み
    ビジネスプロセス定義ファイルからワークフロー定義で定義されたビジネスプロセスを読み込んで,経路解析に必要な情報を抽出します。経路解析を実行するビジネスプロセスは,ワークフロー定義の定義チェックを済ませておきます。
    ビジネスプロセス定義から抽出される情報を,表 9-1に示します。

    表9-1 ビジネスプロセス定義から抽出される情報

    ノード種別情報
    分岐分岐先ノード名一覧
    分岐先ノード名に対応する分岐条件式文字列
    分割分割先ノード名一覧
    分割先ノード名に対応するケース名一覧
    待合確定ケース名一覧
    次ノード名
    同報同報先ノード名一覧
    ソース,作業机ユーザ処理リスト
    次ノード名
    複写次ノード名(オリジナルケース)
    次ノード名(複写ケース)
    その他次ノード名
  2. 経路解析のパラメタの設定
    経路解析に必要な情報を設定します。パラメタには次のものがあります。
    • ケース属性値パラメタ
    作業机ノードに対して設定するパラメタです。ユーザがワークフロー定義で定義した作業机ノードのユーザ処理リストで,作業の種類が「属性値の直接入力」となっているものに対して,ケース属性に設定できる値の候補値を設定します。ケース属性の候補値は複数指定できます。
    • 解析条件パラメタ
    ノードに対して設定するパラメタです。ケース又はケース属性の候補値を解析処理の対象にするかどうかを指定することで,経路解析に使うケース属性の候補値を絞り込みます。
    • 候補値無効パラメタ
    分岐ノードに対して設定するパラメタです。分岐ノード解析後に解析条件からケース属性を無効にしたい属性を指定します。
  3. 経路解析のパラメタの保存・再利用
    経路解析に使うパラメタは,パラメタファイルに保存し,必要なときに再利用できます。
  4. 解析処理の実行
    ビジネスプロセス定義及びパラメタの情報を基に経路解析を実行します。実行時に,次に示す条件を指定できます。
    • ループ上限
    ループ判定処理(ループ経路の正常・異常を判定する処理)を適用するときのループの回数を指定できます。
    • 解析の種類
    ケースが属性値に従ってノードを移動するとき,ソースノードからシンクノードに正しく到達できるかどうか(ケースがシンクへ到達する可能性)を解析する指定ができます。また,待合ノードがあるビジネスプロセスに対して正しく待合ができるかどうか(待合不正の検証)を解析する指定ができます。
    • 出力メッセージの種類
    待合不正が発生したとき,ループ経路を検出したとき,及び分岐先が特定できない状態を検出したときの3種類の出力メッセージを指定できます。経路解析で発生するエラーのメッセージの種類を指定すると,エラーが多い場合のメッセージの絞り込みが容易になります。
  5. 解析結果の集計及びグラフィカル表示
    解析結果を集計して,グラフィカルに表示します。これによって,次に示す情報を提供します。
    • ケースがシンクへ到達する可能性
    アローの色を変更して,特定ケースの経路を表示します。このとき,この特定ケースがシンクに到達する経路は一つ以上あることを確認できます。
    • ループ経路
    図 9-2に示すように,ケースがループするような経路を表示します。

    図9-2 ループ経路

    [図データ]

    • 異常分岐
    異常があった分岐ノードに到達するケースの経路を表示します。
    • ケースの単一経路表示
    特定ケースの経路を一つだけ絞り込んでその経路を表示します。
    • ケースの全経路表示
    ケースの経路を表示して,通過しないノードを見付けたり,複数のケースが待合ノードで待ち合わせられるのかを確認したりできます。
  6. 解析結果の再現表示
    ケースの通過経路(ある特定のケースが経路を移動する状態)を,ノード単位にケースを表示しながら再現します。再現中にケース属性を確認することもできます。もし,ビジネスプロセスに間違いがあった場合,解析結果を再現させて,ケース属性の候補値を見ながら実行させれば,どこの作業ノードで間違ったかが分かります。
  7. ワークフロー定義への解析結果の反映
    解析結果をワークフロー定義に反映することができます。経路解析を実行してビジネスプロセスに間違いを発見したら,ワークフロー定義を起動してビジネスプロセスの内容を変更してください。