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高信頼化システム監視機能 HAモニタ Linux(R)(x86)編


3.4.1 LANの監視および障害時の自動系切り替え

HAモニタでは,実行サーバが使用するLANの通信状態を監視して,障害が発生したときに自動的に系切り替えをすることができます。系切り替えをするときは,計画系切り替えとして動作します。ここでは,LAN監視時の動作などについて説明します。

〈この項の構成〉

(1) LAN監視時の動作

HAモニタは,指定された宛先へのping応答,または監視対象のLANアダプタの受信パケット数を監視することでLANを監視します。HAモニタでは,指定された宛先へのping応答を監視する方法を推奨しています。なお,監視方法は,HAモニタの環境設定のlancheck_modeオペランドで指定します。

実行系のLANを定期的に監視し,次の場合はLANに異常が発生したと見なして系切り替えをします。

LAN監視時の動作を次の図に示します。

図3‒29 LAN監視時の動作(指定された宛先へのping応答を監視する場合)

[図データ]

図3‒30 LAN監視時の動作(監視対象のLANアダプタの受信パケット数を監視する場合)

[図データ]

LANの障害を検出すると,HAモニタは系切り替え先として設定してあるサーバを検索し,そのサーバが系切り替え可能であれば系切り替えをします。該当するサーバがグループ化されている場合は,グループごとに系切り替えをします。切り替え先のサーバで系切り替えができる状態でない場合は,系切り替えができる状態になった時点で系切り替えをします。監視対象のLANが複数存在する場合は,各LANの監視はインタフェースごとに独立して非同期に実行します。

(2) 動作環境

ping応答,または受信パケット数を監視する場合は,次の動作環境を満たしている必要があります。

(3) HAモニタの監視対象

HAモニタが監視対象とするのは,hbondingbondingethernetの3種類のLANインタフェ ースです。仮想化環境では仮想的なLANインタフェースを監視対象とし,仮想化されていない環境では物理的なLANインタフェースを監視対象とします。hbondingは,active-backupモードと802.3adモードの二つの動作モードで監視できます。監視対象は,LAN監視定義ファイルの設定で選択します。それぞれの動作モードと対応する障害の監視方式を,次に示します。

なお,タグVLANも監視対象にできます。ただし,監視対象には,"."(ピリオド)を含まないインタフェース名称を指定してください。

(4) 必要な環境設定

監視対象ごとに,次の環境設定が必要です。

表3‒3 必要な環境設定と監視対象の対応

必要な環境設定

監視対象※3

hbonding

bonding

ethernet

active-backupモード

802.3adモード

HAモニタの環境設定

lanfailswitch

lancheck_patrol※1

lancheck_mode

hbond_lacp

×

×

×

サーバ対応の環境設定

switchbyfail

LANを監視するためのファイル

LAN監視定義ファイル※2

LAN監視スクリプト※1

(凡例)

◎:使用するための指定をします。

○:必要に応じて指定します。

×:指定できません。指定するとエラーになります。

注※1 lancheck_patrolの設定,およびLAN監視スクリプトの設定については,「(2) LAN監視スクリプトの設定」を参照してください。

注※2 LAN監視定義ファイルの設定については,「(1) LAN監視定義ファイルの設定」を参照してください。

注※3 デバイス名に"."(ピリオド)を含めないインタフェース名称を指定することで,タグVLANも使用できます。

(a) LANを監視するための環境設定

  • LANを監視するかどうかをHAモニタの環境設定のlanfailswitchオペランドに指定します。

  • LANの監視間隔をHAモニタの環境設定のlancheck_patrolオペランドに指定します。

  • 監視するLANインタフェース名称をサーバ対応の環境設定のswitchbyfailオペランドに指定します。

  • 802.3adモードでLACP監視方式のhbondingを監視する場合は,HAモニタの環境設定のhbond_lacpオペランドを指定します。

    このオペランドを指定しないで802.3adモードでLACP監視方式のhbondingを監視したい場合は,ping応答または受信パケット数の監視が必要になります。

(b) LANを監視するためのファイルの設定

LAN監視定義ファイル,およびLAN監視スクリプトを設定します。監視対象がhbondingの場合は,ping応答または受信パケット数の監視とhbondingのステータスの監視とを併用するか,hbondingのステータスの監視だけを実施するかをこのファイルの設定で決められます。

詳細については,「6.21.1 LANの監視に必要なファイルの設定」を参照してください。

(5) LANを監視するときの注意事項

次に示す場合別に,LANを監視するときの注意事項を示します。

hbondingを監視する場合
  • LANの監視中(HAモニタの稼働中)は,hbondingインタフェースに結合されているスレーブインタフェースの解除,またはhbondingインタフェースの削除はしないでください。

  • active-backupモードのhbondingを監視するときは,hbondingのステータスだけを監視するか,ping応答または受信パケット数の監視とhbondingのステータスの監視とを併用するかを選択できます。通常は,hbondingのステータスだけを監視する方法を選択します。ただし,hbondingの設定で指定する監視対象とは別に,複数の監視対象を指定したい場合は,ping応答または受信パケット数の監視とhbondingのステータスの監視を併用してください。

  • 802.3adモードでLACP監視方式のhbondingでは,接続しているネットワークスイッチまでの障害を検知します。ネットワークスイッチより先の障害を検知したい場合は,ping応答または受信パケット数による監視を併用してください。

    なお,802.3adモードでLACP監視方式のhbondingを監視する場合は,事前にネットワークスイッチのチャネルグループの設定を確認してください。設定誤りを障害として検知するおそれがあります。また,LANの監視中(HAモニタ稼働中)にネットワークスイッチでチャネルグループの設定を変更しないでください。

連動系切り替えをする場合
  • サーバの切り替え順序制御をしない構成

    サーバ対応の環境設定のswitchbyfailオペランドを,グループ化したすべてのサーバに指定してください。すべてのサーバで同じLANインタフェース名称を指定してください。

  • サーバの切り替え順序制御をする構成

    サーバ対応の環境設定のswitchbyfailオペランドを,サーバの切り替え順序制御をするサーバのうち,最後に起動するサーバに指定することをお勧めします。最後に起動するサーバに指定するとき,グループ内のサーバが使用するすべてのLANインタフェース名称を指定します。switchbyfailオペランドを最後に起動するサーバ以外に指定した場合,switchbyfailオペランドを指定したサーバが起動した時点でLAN障害を検知すると連動系切り替えを実施してしまい,より下位のサーバを一緒に系切り替えできないことがあります。

仮想化環境で使用する場合

仮想化環境で使用する場合は,ping応答による監視を推奨します。受信パケット数の変化による監視をすると,仮想的なLANインタフェースの受信パケット数に変化がないときに,異常が発生したと見なして系切り替えをします。このため,物理的なLANインタフェースに障害が発生しても,物理マシン内の複数の仮想マシン間で,仮想的なLANインタフェースによる通信が正常ならば,系切り替えはしません。物理的なLANインタフェースに障害が発生しても系切り替えが発生しない例について次の図に示します。なお,図中では,LANインタフェースをNIC(ネットワークインターフェースカード)として説明します。

図3‒31 物理的なLANインタフェースに障害が発生しても系切り替えが発生しない例

[図データ]

受信パケット数の変化による監視の場合に,物理的なLANインタフェースの障害発生時にも系切り替えをしたいときは,次のような構成にしてください。

  • 複数の仮想マシン間の通信には監視対象でないLANインタフェースを用いる。

  • 監視対象である仮想的なLANインタフェースがほかの仮想マシンと通信しないように,パケットフィルタリングを設定する。