リセットパスは,実行系と待機系の障害管理プロセサ間を接続して,実行系で障害が発生した場合に,系の入出力のリセットを指示するために使用します。
リセットパスには,リセット専用のTCP/IP LANを使用します。各系の障害管理プロセサをリセット専用LANに接続します。また,待機系のHAモニタから実行系の障害管理プロセサへリセットを指示するため,さらに別のLANアダプタでリセット専用LANに接続します。
リセット専用LANは,トラフィック増加による系リセットの遅延や失敗を防止するため,ほかの業務で使用するLANとは分け,専用のLANにしてください。これによって,障害管理プロセサへの不当なアクセスも防止できます。
ここでは,リセットパスの構成について検討する内容,および系切り替え構成間でリセットパスを共用する場合の注意事項について説明します。
リセットパスの構成は,使用するマシンの機種や系切り替え構成によって異なります。ここでは,リセットパスの構成について説明します。マシンの機種については「1.5.1(1) プロセサ」を,系切り替え構成の種類については「2.1 系切り替え構成」を参照してください。
リセットパスの構成について検討する内容を次の表に示します。
表5-8 リセットパスの構成について検討する内容
検討する内容 | 説明 |
---|---|
障害管理プロセサとリセットパスの接続方法 | 障害管理プロセサには,システムのLANポートとは別のLANポートがあります。そのLANポートをリセットパスに接続することで,障害管理プロセサをリセットパスに接続します。 LANポートの搭載位置は機種によって異なります。詳細については,ハードウェアのマニュアルを参照してください。 |
リセットパスの二重化 | リセットパスそのものは二重化できません。Linuxのカーネル拡張パッケージであるbondingパッケージなどを使用して,リセットパスが接続されているLANアダプタを二重化してください。 LANアダプタを二重化することで,LANアダプタに障害が発生した場合にもう一方のLANアダプタを使用して系切り替えができます。 なお,VMware ESXiで仮想化する場合,VMware ESXiの機能で,LANアダプタを冗長化することを推奨します。 |
日立サーバ仮想化機構の利用有無(BladeSymphony) | 日立サーバ仮想化機構を利用してLPAR間で系切り替え構成にする場合,一つのLPARが一つの系になります。したがって,各LPARからそれぞれリセットパスに接続する必要があります。 |
リセットパスの接続構成の例を次に示します。
図5-6 リセットパスの接続構成(1:1系切り替え構成の場合)
図5-7 リセットパスの接続構成(同一シャーシ内での1:1系切り替え構成の場合)(BladeSymphony)
図5-8 リセットパスの接続構成(相互に直接接続する場合)
マシンの機種がBladeSymphony,またはHA8000の場合,システム内で互いに監視し合わない系切り替え構成を複数構築すると,ハードウェアの制約上,複数の系切り替え構成間でリセットパスを共用することがあります。
このようなネットワーク構成で環境設定を誤ると,HAモニタは系同士を正しく識別できません。そのため,系障害時に障害と無関係な系がリセットされたり,HAモニタが異常終了したりするおそれがあります。ここでは,HAモニタが系同士を正しく識別するための設定時の注意事項を,次の場合に分けて説明します。
なお,システム構築時には,ここで設定したIPアドレスが重複していないかどうかを確認する必要があります。IPアドレスの重複チェックについては,「6.18.1 複数系切り替え構成間での設定・定義のチェック」を参照してください。
複数の系切り替え構成間でリセットパスを共用したネットワーク構成で,系切り替え構成間でSVPを共用する場合の例を次に示します。
図5-9 系切り替え構成間でリセットパスを共用したネットワーク構成(SVPを共用する場合)
このような構成で,系1・系3間で一組,系2・系4間で一組,合計二組の系切り替え構成を構築する場合,各シャーシのSVPは,異なる系切り替え構成にある系二つと接続されているため,系切り替え構成間でSVPを共用する構成となります。このような場合は,次の設定をしてください。
設定例については,「6.4.2(3) 2シャーシ/4系(Basicモード)の構成」を参照してください。
なお,N+Mコールドスタンバイ構成の場合は,これまでに説明してきた注意事項に加えて,パーティション名は全系で異なる値を設定してください。設定例については,「6.4.2(6) N+Mコールドスタンバイ構成」を参照してください。
複数の系切り替え構成間でリセットパスを共用したネットワーク構成で,系切り替え構成間でSVPを共用しない場合の例を次に示します。
図5-10 系切り替え構成間でリセットパスを共用したネットワーク構成(SVPを共用しない場合)
このような構成で,系1・系3間で一組,系2・系4間で一組,合計二組の系切り替え構成を構築する場合,異なる系切り替え構成間でSVPは共用されません。このような場合は,次のどちらかの設定をしてください(両方の設定をしても問題ありません)。
設定例については,BladeSymphonyの場合は「6.4.2(4) 4シャーシ/4系(Basicモード)の構成」を,HA8000の場合は「6.5.2(2) 系切り替え構成が二組の場合」を参照してください。
なお,N+Mコールドスタンバイ構成の場合は,これまでに説明してきた注意事項に加えて,パーティション名は全系で異なる値を設定してください。設定例については,「6.4.2(6) N+Mコールドスタンバイ構成」を参照してください。
ここでは,次のすべての場合に当てはまるネットワーク構成について説明します。
このようなネットワーク構成の例を次に示します。
図5-11 系切り替え構成間でリセットパスを共用したネットワーク構成(N+Mコールドスタンバイ構成で予備のサーバモジュールを共用する場合)
このような構成で,系1・系3間で一組,系2・系4間で一組,合計二組の系切り替え構成を構築する場合は,次の設定をしてください。
設定例については,「6.4.2(6) N+Mコールドスタンバイ構成」を参照してください。