3.3.7 LANアダプタの二重化

HAモニタでは,系内にあるLANアダプタを二重化し,障害発生時に系内でLANアダプタの切り替えができます。ここでは,LANアダプタを二重化した場合の構成,および障害発生時のHAモニタの動作について説明します。

<この項の構成>
(1) LANアダプタを二重化した構成
(2) 障害が発生した場合の動作とLANアダプタの状態
(3) 必要な環境設定
(4) 注意事項

(1) LANアダプタを二重化した構成

LANアダプタを二重化した場合の構成を次の図に示します。

図3-12 LANアダプタを二重化した場合の構成

[図データ]

LANアダプタとして,現用LANアダプタと予備LANアダプタの両方を定義することで,HAモニタは一定間隔でLANアダプタの状態を調査します。現用LANアダプタが障害になった場合は,自動的に予備LANアダプタに切り替えられます。系で稼働するサーバからは,一つのLANインタフェースがあるように認識されます。

LANアダプタの二重化は同一系内で有効な機能です。LANアダプタの二重化をするかどうか,また,二重化するLANアダプタの構成は系ごとに定義できます。例えばここで説明する構成では,待機系のLANアダプタも二重化されていますが,待機系のLANアダプタを二重化しない構成や,系間でLANアダプタ名が異なる構成にもできます。ただし,LANアダプタの二重化をするかどうか,また,二重化するLANアダプタの構成を,サーバごとに定義できません。LANアダプタを二重化する場合,同じ系で稼働するサーバは同じLANアダプタの組み合わせを使用します。

(2) 障害が発生した場合の動作とLANアダプタの状態

HAモニタは一定間隔でLANアダプタの状態を調査します。LANアダプタの障害を検出すると,HAモニタはLANアダプタの接続障害を示すメッセージKAMN481-Eを出力します。LANアダプタの状態調査は,現用LANアダプタおよび予備LANアダプタの両方に対して行われます。

障害が発生した場合の動作およびLANアダプタの状態を,検出した障害ごとに説明します。

(a) 現用LANアダプタの障害を検出した場合

現用LANアダプタの障害を検出した場合,HAモニタは,現用LANアダプタのIPアドレスを予備LANアダプタに引き継ぎます。LANアダプタの切り替え後は,障害が発生した現用LANアダプタが,障害から回復したあとに予備LANアダプタとなり,現用LANアダプタの障害に備えます。

LANアダプタを二重化した構成で,現用LANアダプタに障害が発生した場合のLANアダプタの状態を次の図に示します。この図では,実行系の現用LANアダプタに障害が発生したことを想定しています。

図3-13 実行系の現用LANアダプタ障害発生時のLANアダプタの状態

[図データ]

現用LANアダプタの障害を検出すると,HAモニタは現用LANアダプタのIPアドレスを予備LANアダプタに引き継ぎます。系1の現用LANアダプタから系1の予備LANアダプタに切り替えるだけであり,系1から系2への系切り替えはしません。

(b) 予備LANアダプタの障害を検出した場合

予備LANアダプタの障害を検出した場合,HAモニタは,障害メッセージを出力するだけで,LANアダプタの切り替えはしません。また,障害メッセージは一度出力されると,以降は障害が回復するまで出力されません。

予備LANアダプタの障害回復を検出すると,HAモニタはLANアダプタの接続回復を示すメッセージKAMN492-Iを出力します。障害回復メッセージは一度出力されると,以降は障害となるまで出力されません。

(c) 系障害を検出した場合

系障害を検出した場合,HAモニタは実行系から待機系に系切り替えをして,待機系の現用LANアダプタに,IPアドレスの情報を引き継ぎます。

系切り替えをしたあとで,待機系の現用LANアダプタが障害のため通信できない場合は,待機系の現用LANアダプタから待機系の予備LANアダプタに自動的に切り替えられます。

LANアダプタを二重化した構成で,系障害を検出して系切り替えをしたあとのLANアダプタの状態を次の図に示します。

図3-14 系障害による系切り替え発生後のLANアダプタの状態

[図データ]

系1の系障害を検出すると,HAモニタは系1から系2に系切り替えをします。また,LANアダプタを系2の現用LANアダプタに切り替えます。系1の現用LANアダプタと予備LANアダプタは両方とも使用されません。

(d) 二重化されたLANアダプタが両方とも障害になった場合

二重化されたLANアダプタが両方とも障害になり,LANアダプタの切り替えができない場合は,HAモニタはメッセージKAMN488-Eを出力して,LANアダプタの切り替えをしません。この場合,オペレータが計画系切り替えをする必要があります。オペレータの操作の詳細については,「7.4.6 LANアダプタの障害に対処する」を参照してください。

二重化されたLANアダプタが両方とも障害になった場合に,自動的に系切り替えをすることもできます。この方法を使用すると,オペレータの操作が不要になります。自動的に系切り替えをする方法については,「3.3.8 LANアダプタ二重障害時の系切り替え」を参照してください。

(3) 必要な環境設定

二重化するLANアダプタの定義,およびLANアダプタの状態調査の間隔を定義します。

二重化するLANアダプタの定義
現用LANアダプタおよび予備LANアダプタの組み合わせをHAモニタの環境設定のlan_pairオペランドに定義します。このオペランドに指定するLANアダプタは,次の点に注意して決定してください。
  • 同じネットワークに接続されているLANアダプタの組み合わせを指定します。
    ネットワークアドレスが異なるLANアダプタは指定できません。
  • 同じボード上のLANポートを組み合わせて定義しないでください。
    1枚のボード上に二つまたは四つのLANポートを持つLANアダプタを使用する場合,共通回路部分に障害が発生するとすべてのLANポートが使用できなくなります。
  • 予備LANアダプタをほかの通信用途には使用できません。
    HAモニタは,HAモニタの起動時に予備LANアダプタに付けられているすべてのIPアドレスを強制的に削除するため,予備LANアダプタをほかの目的で使用できません。
  • 予備LANアダプタには,ステーショナリIPアドレスを指定しないでください。
    HAモニタは,HAモニタの起動時に予備LANアダプタにIPアドレスを割り当てます。そのため,予備LANアダプタは,IPアドレスが定義されていない状態にする必要があります。
LANアダプタの状態調査の間隔
HAモニタがLANアダプタの状態を調査する間隔を,HAモニタの環境設定のlanpatrolオペランドで指定します。

(4) 注意事項

一つのLANアダプタに複数のIPアドレスが設定されている場合,LANアダプタの二重化によるLANアダプタの切り替え時には,設定されている複数のIPアドレスを予備LANアダプタに切り替えます。複数のIPアドレスが設定されている場合のLANアダプタの切り替えを,次の図に示します。

図3-15 複数のIPアドレスが設定されている場合のLANアダプタの切り替え

[図データ]