共有ディスクにLVMミラーリングを適用する場合の注意事項について次に示します。この項では,AIXの場合について記しています。
LVMミラーリングを使用すると,あるディスク装置に障害が発生してそのディスク装置が使用不能になっても,使用できるディスクにミラーのコピーがあれば,そのデータにアクセスでき,システムの可用性が向上します。
LVMミラーリングでは,論理ボリューム単位にミラーを構成し,最大三つのコピーを持てます。LVMミラーリングの詳細については,AIXのマニュアルで確認してください。
ボリュームグループ内にある一定数のディスクに障害が発生すると,ボリュームグループ自体が使用できないか,またはボリュームグループをオンライン化できません。この機能は,規定数またはQUORUMと呼ばれるLVMの機能であり,これによって,LVMはボリュームグループ内のデータをディスク障害から保護します。
ただし,ミラーリングされたボリュームグループに対しては一部のディスクが使用できなくても一つ以上のミラーのコピーが使用できるディスクにある場合など,該当ボリュームグループをオンライン化して使用できるようにすることが望ましい場合があります。
このようにQUORUMが失われた場合でも,ボリュームグループをオンライン化するためには,varyonvgコマンドの-fフラグを使用して,そのボリュームグループを強制的にオンライン化できます。この場合,LVMのデータ保護が保証されず,それに伴う危険性を十分に理解した上で手動処置を実行する必要があります。varyonvgコマンドの詳細については,AIXのマニュアルで確認してください。
強制的なオンライン化を実行することでデータの破壊が発生する例を次に記します。
オンライン化する前にアクセスしていたディスクと,オンライン化するときに使用できるディスクが異なる場合について説明します。例えば,ディスクへのI/Oパスが障害によって実行系と待機系でアクセスできるディスクが異なる場合,系切り替え後,強制的なオンライン化によって,ボリュームグループをオンライン化しても,古いミラーのコピーをアクセスしてしまうことになり,データの内容に矛盾が生じます。データの内容に矛盾が生じる例を次の図に示します。
図E-1 データの内容に矛盾が生じる例
実行系ではアクセスできるディスク「新コピー」を使用しますが,系切り替え後,待機系ではディスク「古コピー」の古いデータをアクセスしてしまいます。
上述のとおり,LVMミラーリングを使用した構成で,ディスク障害が発生した状態では,ボリュームグループをオンライン化できないため,共有ディスク上のデータにアクセスできません。サーバが起動できない,または系切り替えが失敗することになります。
この状況を回避するためには,次の構成や運用にする必要があります。
HAモニタの強制varyon機能を使用すると,QUORUMが失われた場合でも,サーバの起動および系切り替えの際に,varyonvg -fコマンドによってボリュームグループを強制的にオンライン化できるようになります。この機能はボリュームグループ単位に指定します。
HAモニタが強制的なオンライン化を実行する条件は,次のとおりです。
この機能を適用できる構成は,次のとおりです。強制varyon機能を適用できるLVM構成と適用できないLVM構成の例を,それぞれ次の図に示します。
図E-2 強制varyon機能を適用できるLVM構成と,適用できないLVM構成の例(1)
図E-3 強制varyon機能を適用できるLVM構成と,適用できないLVM構成の例(2)
この機能を適用するかどうかは,サーバ対応の環境設定のvg_forced_varyonオペランドでボリュームグループ単位に指定します。また,mondeviceコマンドで,サーバ稼働中にこの指定を変更できます。
vg_forced_varyonオペランドの指定方法については,「3.3.1 サーバ対応の環境設定」を,mondeviceコマンドの使用方法については,「4.18 コマンド」を参照してください。
この機能は,次の手順を基にあらかじめ指定しないで,必要なときだけ,機能を有効にすることで使用してください。
これ以降,ボリュームグループは強制的にオンライン化が実行されるため,サーバの起動または系切り替えをしても共有ディスクへのアクセスができます。