Hitachi

ノンストップデータベース HiRDB Version 9 システム運用ガイド(UNIX(R)用)


26.9.1 HiRDBの運用方法の違いは?

系切り替え機能を使用する場合は,使用しない場合に比べて次に示す運用方法が異なります。

〈この項の構成〉

(1) HiRDBの開始方法

(a) 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能の場合

HiRDBを開始するときに実行するコマンドを次の表に示します。

表26‒50 HiRDBを開始するときに実行するコマンド(影響分散スタンバイレス型系切り替え機能使用時)

目的

実行するコマンド

備考

正規ユニットの開始

pdstart -q

正規ユニットが停止している場合に起動します。

受け入れユニットの開始

pdstart -q

受け入れユニット内のゲストBESも一緒に開始します。

ホストBESの開始又はゲストBESの開始

pdstart -u -s

ゲストBESが停止している場合に受け入れ可能状態になります。

自動的に開始するのでバックエンドサーバ又はその待機系を明示的に停止したとき以外は,実行する必要がありません。

システム全体の開始

システム全体開始の運用方法を次の表に示します。

表26‒51 システム全体開始の運用方法

入力場所

コマンド

動作

システムマネジャがあるユニット

pdstart

システム全体開始

システム全体開始時の処理を次に示します。

  • サーバの開始:各ユニットのユニットの全ホストBES,及び全ゲストBESに対してサーバ開始を実行します。

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのシステム全体開始の例を次の図に示します。

システム全体を開始するためには,スタンバイ型系切り替えと同じくシステムマネジャがあるユニットからpdstartコマンドを入力します。各ユニットでは,自動的にゲストBESが受け入れ可能状態になります。

図26‒96 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのシステム全体開始の例

[図データ]

システム起動の動作を次の表に示します。システム起動が完了すると,メッセージKFPS05210-Iを出力します。

表26‒52 システム起動の動作

開始種別

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能の適用ユニット

なし

あり

システム開始

全ユニット起動

(全サーバ起動)

全サーバ起動

(全ユニットは起動しません)

システムマネジャがあるユニットの単独開始

(システムマネジャがあるユニットの単独異常終了後)

フロントエンドサーバ,ディクショナリサーバ,バックエンドサーバの各々1サーバ起動

フロントエンドサーバ,ディクショナリサーバ,バックエンドサーバの各々1サーバ起動

HAグループ内ユニットの単独開始

その他ユニットの単独開始

(凡例) −:該当しません。

ユニットの開始

ユニット開始の運用方法を次の表に示します。

表26‒53 ユニット開始の運用方法

入力場所

コマンド

オプション

動作

-q

-u

システムマネジャがあるユニット

pdstart

なし

あり

対象ユニット起動

あり

なし

対象ユニット

pdstart

あり

なし

●ユニットの開始モード

ユニットの開始モードを次の表に示します。ユニットの正常開始,又は再開始は前回の該当ユニットの終了モードだけで決定され,実行起動するホストBES,ゲストBESの有無,実行起動するサーバの正常開始,又は再開始は関係しません。

表26‒54 ユニットの開始モード

前回のユニット終了モード

ホストBES又はゲストBES

ユニットの開始モード

開始サーバの起動

開始サーバ起動中に

再開始サーバ起動

正常停止

なし

なし

正常開始

あり

なし

あり

あり

計画停止/強制終了/異常終了

なし

なし

再開始

あり

なし

あり

あり

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能では,再開始,正常開始の判定と処理をユーザサーバごとに実施します。このため,ユニット内サーバが強制/異常終了後,又はHAグループ内の他ユニットで稼働中であっても,ユニットは正常開始可能です。

なお,影響分散スタンバイレス型系切り替え機能の場合もユニットの強制/異常終了後はユニット再開始になります。再開始処理はユーザサーバごとに行うためユニットそのものに回復するリソース(DB)がありませんが,従来と同じくユニット再開始には正常開始と比べて次の表に示す動作差異があります。

表26‒55 ユニット再開始の意味合い

項目

内容

構成変更チェック

システムリソース(共用メモリなど)が増加となる定義変更をチェックアウトし,再開始失敗となる危険性を排除します(受け入れ可能なゲストBES数は変更可能とします)。

システム起動完了チェック

システムマネジャのあるユニット再開始時にフロントエンドサーバ,ディクショナリサーバ,バックエンドサーバが1サーバずつあればシステム起動完了としてサービスを開始します。システムマネジャのあるユニット正常開始時は全サーバ起動完了を待ち合わせますが,システムマネジャのあるユニット再開始時は待ち合わせサーバを減らしてサービスの受け付けの再開を早めます。

ユニットランIDの引き継ぎ

ユニットランIDはユニットの停止前から引き継ぎます。ユニット開始時のKFPS01826-Iメッセージ出力,及びpdcspoolの定期自動実行基準として利用します。

●ユニットの開始の例

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのユニット開始の例を次の図に示します。次のようにユニットを開始します。

  • システムマネジャのあるユニットからpdstart -uコマンドを入力

  • 該当ユニットを配置したホストにログインして,pdstart -qコマンドを入力

該当ユニットの起動に伴い,次のゲストBESの状態をシステムが変更します。

  • 該当ユニット内のゲストBESの受け入れ可能状態の解除(図の自動状態変更1)

  • 該当ユニット内のホストBESに対応するゲストBES(図の自動状態変更2)

    図26‒97 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのユニット開始の例

    [図データ]

●実行系のバックエンドサーバがないユニットの開始の例

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能での実行系のバックエンドサーバがないユニットの開始の例を次の図に示します。

ユニットを開始するには,次の方法があります。

  • システムマネジャのあるユニットからpdstart -uコマンドを入力

  • 該当ユニットを配置したホストにログインして,pdstart -qコマンドを入力

該当ユニットの起動に伴って該当ユニット内のゲストBESの状態をシステムが変更します(図の自動状態変更1)。

図26‒98 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能での実行系のバックエンドサーバがないユニットの開始の例

[図データ]

ユニット起動の完了の動作は,メッセージKFPS05110-Iが出力されることで判断できます。

  • 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能の非適用ユニットの場合は,ユニット内全サーバ起動完了時にメッセージが出力されます。

  • 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能の適用ユニットの場合は,ユニット内全実行系サーバ起動完了時にメッセージが出力されます。

サーバの開始

サーバ開始の運用方法を次の表に示します。

表26‒56 サーバ開始の運用方法

入力場所

コマンド

オプション

動作

-q

-u

-s

システムマネジャのあるユニット

pdstart

なし

なし

あり

全稼働中HAグループ内ユニットで対象サーバ開始 ※1

あり

なし

あり

ホストBESの開始(-uは省略可) ※2

注※1

全稼働中HAグループ内ユニットのうち,1ユニットでバックエンドサーバが実行中となり,ほかのユニットでは受け入れ可能状態となります。

注※2

対象となるバックエンドサーバが実行サーバとして起動完了した場合は,HAグループ内の稼働中のユニットは自動的に受け入れ可能状態となります。

使用するクラスタソフトウェアごとのサーバ開始時の処理結果を次の表に示します。

表26‒57 サーバ開始時の処理結果

クラスタソフトウェア

サーバ種別

該当サーバ稼働中の他ユニット

該当ホストでオンライン化 ※3

サーバ開始結果

HAモニタ

ホストBES

なし

稼働中

あり

受け入れ可能

ゲストBES

なし

実行サーバの起動待ち ※1

あり

受け入れ可能

Hitachi HA Toolkit Extension

なし

あり

稼働中 ※2

なし

受け入れ可能

あり

あり

なし

受け入れ可能

(凡例) −:該当しません。

注※1

HAモニタの場合,サーバ停止後は実行系,待機系という概念がなく,次回起動時に再度,実行系又は待機系を決定します。この場合,実行系がない状態での予備系(デフォルトは待機系)は実行サーバの起動待ち状態となります。このため,稼働中のゲストBESを停止後,同じユニットで開始すると,実行サーバの起動待ち状態となり,monactコマンドを実行するまで再び稼働状態になりません。

注※2

Hitachi HA Toolkit Extensionの場合,サーバを停止後もクラスタソフトウェアには稼働中(オンライン)を継続しているように見せています。このため,ゲストBESの場合を含めて稼働中のサーバを停止後,同じユニットで開始すると,再び稼働状態となります。

注※3

MC/ServiceGuardではパッケージの起動に相当します。

●サーバの開始の例

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能での実行系サーバの開始の例を次の図に示します。

実行系サーバを開始するには,次の方法があります。

  • システムマネジャがあるユニットからpdstart -sコマンドを入力します。

該当サーバの起動に伴い,該当サーバに対応するゲストBESの状態をシステムが変更します(図の自動状態変更)。

なお,サーバが実行系かどうかは,pdls -d haコマンドで確認できます。

図26‒99 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能での実行系サーバの開始の例

[図データ]

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能での待機系サーバの開始の例を次の図に示します。

待機系サーバを開始するには,次の方法があります。

  • システムマネジャのあるユニットからpdstart -u -sコマンドを入力

指定されたホストBESは,受け入れ可能状態になります。なお,サーバが実行系かどうかは,pdls -d haコマンドで確認できます。

図26‒100 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能での待機系サーバの開始の例

[図データ]

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのゲストサーバの状態変更の例を次の図に示します。

ユニット内のゲストサーバを受け入れ可能状態にするには,次の方法があります。

  • システムマネジャのあるユニットからpdstart -u -sコマンドを入力

指定されたゲストBESは受け入れ可能状態になります。

図26‒101 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのゲストサーバの状態変更の例

[図データ]

(b) 注意事項

共通の注意事項
  • pdstart -qコマンドを実行する場合は,最初のバックエンドサーバを開始した時点から20分以内に全バックエンドサーバを開始するようにしてください。20分以内に全バックエンドサーバを開始できない場合はHiRDBの開始処理を中止します。なお,この20分という制限時間はpd_reduced_check_timeオペランドの値によって変わります。20分はこのオペランドの省略値です。

  • 待機系HiRDBでpdstartコマンドを実行する場合はオプションの指定に制限があります。-iオプション,-rオプション,及びdbdestroyオプションを指定できません。

  • pdstart -r又はpdstart -Rコマンドを実行する前に共有リソースを活性化してください。なお,HAモニタによるサーバモードの系切り替え機能を使用している場合は,pdstart -r -t又はpdstart -R -tコマンドを実行すると,HiRDBの開始と同時に共有リソースを活性化できます。このとき活性化するリソースは,HAモニタのservers定義ファイルに定義している,共有ディスク,IPアドレスなどです。

  • pdstart -r又はpdstart -Rコマンドを実行する場合は,実行系及び待機系HiRDBを終了した後にpdstart -r又はpdstart -Rコマンドを実行してください。pdstart -r又はpdstart -RコマンドでHiRDBを開始した場合,HiRDBは系切り替えの対象になりません。データベースの回復処理などが終了した後に,一度HiRDBを終了してから実行系及び待機系HiRDBを開始してください。

MC/ServiceGuard使用時の注意事項
  • HiRDBを開始する場合は,実行系でMC/ServiceGuardのパッケージが正常に開始されている必要があります。したがって,HiRDBの開始前にパッケージが起動されているかを確認してください。パッケージが開始されているかの確認,及びパッケージの起動はMC/ServiceGuardのコマンドで行います。

  • 実行系ユニットを停止した場合(ユニットの異常終了を含む),そのノードをMC/ServiceGuardが「系切り替えできない」と認識することがあります。この場合,そのノードでHiRDBを待機中としていても系が切り替わりません。MC/ServiceGuardのコマンドで「系切り替え可能」状態にしてください。

Hitachi HA Toolkit Extension使用時の注意事項

Hitachi HA Toolkit Extensionのサービスプロセスを起動しないでHiRDBを開始すると,両系とも待機系として開始してしまいます。この場合は次の表に示す手順で対処してください。

表26‒58 Hitachi HA Toolkit Extensionのサービスプロセスを起動しないでHiRDBを開始したときの対処方法

条件

対処方法

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能を適用している場合

実行系,待機系の両方のサーバが待機状態となり,ユーザが操作可能な状態になります。両系とも異常終了しません。

この場合,サーバを実行系とするホストでクラスタソフトウェアをオンライン化し,起動処理を完了できます(HA Toolkit Extensionのサービスプロセスを起動します)。

HAモニタ使用時の注意事項

実行系ユニットを開始する場合,HAモニタのmonshowコマンドで待機系ユニットが停止していることを確認してから,実行系ユニットを開始してください。なお,monshowコマンドを実行すると,停止している系は表示されません。待機系の状態が表示された場合は停止していないことを示します。

また,実行系ユニットを停止した直後に実行系ユニットを開始すると,待機系ユニットが停止処理中のために,実行系ユニットがKFPS01878-I及びKFPS00715-Eメッセージを出力して開始できない場合があります。実行系ユニットが開始できなかった場合には,次の手順で開始してください。

  1. HAモニタのmonshowコマンドで待機系ユニットが停止していることを確認してください。

  2. pdrpauseコマンドを実行して,プロセスサーバプロセスを再起動してください。

  3. pdstartコマンドで実行系ユニットを開始してください。

(2) HiRDBの終了方法

(a) 実行系,及び待機系の両方を終了

実行系,及び待機系の両方を終了する場合の停止方法について説明します。

システム全体の停止

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのシステム全体の停止運用を次の表に示します。

表26‒59 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのシステム全体の停止運用

入力場所

コマンド

オプション

条件

動作

-f

強制/異常停止サーバ

システムマネジャのあるユニット

pdstop

なし

あり※1

エラー(KFPS05063-Eなどを出力)

なし

なし※2

システム停止

あり

あり

システム強制停止(一部ユニットは既に停止中)

あり

なし

システム強制停止

注※1

強制又は異常停止サーバがある場合でも,該当強制又は異常停止サーバが次の状態のときは,強制又は異常停止サーバなしとします。

  • 別のユニットで再開始して稼働中

  • 別のユニットで再開始後正常停止済み

注※2

強制又は異常停止サーバなしとは,次の状態のことです。

  • システム内に強制又は異常停止したサーバがない

  • システム内に強制又は異常停止したサーバがあり,該当サーバが別のユニットで再開始して稼働中

  • システム内に強制又は異常停止したサーバがあり,該当サーバが別のユニットで再開始後正常停止済み

システム停止時の処理を次の表に示します。

表26‒60 システム停止時の処理

対象

処理内容

ユニット

システムが停止する場合は,システムマネジャから全ユニットに対してユニット停止(pdstop -u UID (-f) 相当)を実行します。

サーバ

システム停止に伴って各ユニットが停止する場合は,該当ユニットの全ホストBES,及び全ゲストBESに対してサーバ停止(pdstop -q -s サーバ名 (-f) 相当)を実行します。

システム停止時は,正常終了の場合も強制停止の場合も,自動的に受け入れユニットのゲストBESの受け入れ可能状態を解除します。あるゲストBESが稼働中であっても,停止操作は変わりません。ゲストBESの稼働状態を意識した操作は不要です。

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのシステム停止時の各種バックエンドサーバに対する処理を次の表に示します。

表26‒61 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのシステム停止時の各種バックエンドサーバに対する処理

バックエンドサーバの種別

処理

ホストBES

実行中

停止

受け入れ可能状態

受け入れ可能状態の自動解除

ゲストBES

実行中

自動停止

受け入れ可能状態

受け入れ可能状態の自動解除

システム停止の例を次の図に示します。この例では,システムを停止すると,次のサーバを停止します。

  • ホストBES

  • 実行中ゲストBES(図の自動停止1)

また,次のサーバについて受け入れ可能状態を解除します。

  • 受け入れ可能状態のゲストBES(図の自動状態変更1)

    図26‒102 システム停止の例

    [図データ]

ユニット単位の停止

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのユニットの停止運用を次の表に示します。

表26‒62 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのユニットの停止運用

入力場所

コマンド

オプション

動作

-z

-u

-f

システムマネジャのあるユニット

pdstop

なし

あり

なし

対象ユニットの正常停止

あり

対象ユニットの強制停止

対象ユニット

pdstop

あり

なし

なし

対象ユニットの強制停止

ユニットを停止する場合は,該当ユニットの全ホストBES,及び全ゲストBESに対してサーバ停止(pdstop -q -s サーバ名 (-f) 相当)を実行します。

ユニット内のサーバ状態ごとのユニット正常停止の可否を次の表に示します。影響分散スタンバイレス型系切り替え機能では,ホストBES,ゲストBESの種別に関係なくサーバの単独異常停止,強制停止中サーバがあっても,ユニットとしては正常停止できます。

表26‒63 ユニット内のサーバ状態ごとのユニット正常停止の可否

サーバ状態(ホストBES,ゲストBESを含む)

ユニット正常停止の可否

起動途中/停止途中※1

待機中

停止中※2

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能

なし

なし

なし

あり

あり

なし

あり

あり

なし

なし

×

あり

×

あり

なし

×

あり

×

(凡例) 

○:正常に停止できます。

×:正常に停止できません。

注※1 

正常開始途中,再開始途中,正常停止途中,計画停止途中,強制停止途中,異常停止途中

注※2 

正常停止状態,計画停止状態,強制停止状態,異常停止状態,ゲストBES停止後未割り当てゲスト用領域となった状態

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのユニット停止時の各種バックエンドサーバの処理を次の表に示します。

表26‒64 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのユニット停止時の各種バックエンドサーバの処理

稼働場所

バックエンドサーバの状態

処理

該当ユニット

実行中

停止

受け入れ可能状態

受け入れ可能状態の解除

他ユニット

実行中

変化なし

受け入れ可能状態

受け入れ可能状態の自動解除

(例1)通常時のユニットの停止の例

通常時のユニットの停止の例を次の図に示します。

図26‒103 通常時のユニットの停止の例

[図データ]

非受け入れ中のユニットを停止すると,次のサーバを停止します。

  • 該当ユニット内ホストBES

また,次のサーバについて受け入れ可能状態を解除します。

  • 該当ユニット内の受け入れ可能状態のゲストBES(受け入れ可能状態の解除)

  • 該当ユニット内ホストBESに対応する他ユニット内のゲストBES(受け入れ可能状態の自動解除)

(例2)受け入れ中のユニットの停止の例

受け入れ中のユニットの停止の例を次の図に示します。

図26‒104 受け入れ中のユニットの停止の例

[図データ]

受け入れ中のユニットを停止すると,次のサーバを停止します。

  • 該当ユニット内ホストBES

  • 該当ユニット内で実行中のゲストBES(自動停止1)

  • 該当ユニットの実行中のゲストBESに対応する他ユニット内のホストBES(自動停止2)

また,次のサーバについて受け入れ可能状態を解除します。

  • 該当ユニット内の受け入れ可能状態のゲストBES(受け入れ可能状態の解除)

  • 該当ユニット内のホストBESに対応する他ユニット内のゲストBES(受け入れ可能状態の自動解除)

  • 該当ユニット内で実行中のゲストBESに対応する他ユニット内のゲストBES(受け入れ可能状態の自動解除)

(例3)ゲストBESだけのユニットの停止の例

ゲストBESだけのユニットの停止の例を次の図に示します。

図26‒105 ゲストBESだけのユニットの停止の例

[図データ]

ゲストBESだけが実行中のユニットを停止すると,次のサーバを停止します。

  • 該当ユニット内ホストBES

  • 該当ユニット内の実行中ゲストBES(自動停止1)

  • 該当ユニットで実行中のゲストBESに対応する他ユニット内のホストBES(自動停止2)

また,次のサーバについて受け入れ可能状態を解除します。

  • 該当ユニット内の受け入れ可能状態のゲストBES(受け入れ可能状態の解除)

  • 該当ユニット内で実行中のゲストBESに対応する他ユニット内のゲストBES(受け入れ可能状態の自動解除)

サーバ単位の停止

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのサーバの停止運用を次の表に示します。

表26‒65 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのサーバの停止運用

入力場所

コマンド

オプション

動作

-z

-u

-s

-f

システムマネジャのあるユニット

pdstop

なし

なし

あり

なし

対象サーバの停止※2

あり

全稼働中HAグループ内ユニットで対象サーバの強制停止※1

あり

あり

なし

対象サーバの停止※2※3

あり

対象サーバの強制停止※2

対象ユニット

pdstop

あり

なし

あり

なし

対象サーバの強制停止(ホストBES)※4

注※1

HAグループ内の全稼働中ユニットでサーバ停止するのは実行ユニットだけで,ほかは受け入れ可能状態を解除します。

注※2

pdstop -s(-f)で実行サーバを停止した場合はHAグループ内全稼働中ユニットで受け入れ可能状態を自動で解除します。

注※3

サーバ状態ごとのサーバの停止結果を表「サーバ状態ごとのサーバの停止結果」に示します。

注※4

Hitachi HA Toolkit Extensionの場合には,pdstop -z -sで実行サーバを停止しても,HAグループ内の他ユニットでは該当サーバに対する受け入れ可能状態を自動解除しません。受け入れ可能状態を解除するには,HAグループ内の全ユニットでHitachi HA Toolkit Extensionの待機系停止コマンド(hatesbystp)を入力してください。

表26‒66 サーバ状態ごとのサーバの停止結果

サーバの状態

開始結果

実行系起動待ち

実行系起動待ちの解除

受け入れ可能状態

受け入れ可能状態の解除

稼働中

サーバ停止

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのサーバ停止時の各種バックエンドサーバに対する処理を次の表に示します。

表26‒67 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能でのサーバ停止時の各種バックエンドサーバに対する処理

稼働場所

バックエンドサーバの状態

処理

稼働ユニット

操作対象

停止

他ユニット

受け入れ可能状態

受け入れ可能状態の解除

(例1)ホストBESの停止の例

ホストBESの停止の例を次の図に示します。

図26‒106 ホストBESの停止の例

[図データ]

ホストBESを停止すると,次のサーバを停止します。

  • 該当ホストBES

また,次のサーバについて受け入れ可能状態を解除します。

  • 該当ホストBESに対応する他ユニット内のゲストBES(受け入れ可能状態の解除)

(例2)ゲストBESの停止の例

ゲストBESの停止の例を次の図に示します。

図26‒107 ゲストBESの停止の例

[図データ]

ゲストBESを停止すると,次のサーバを停止します。

  • 該当実行中ゲストBES

  • 該当実行中ゲストBESに対応する他ユニット内のホストBES(自動停止)

また,次のサーバについて受け入れ可能状態を解除します。

  • 該当の実行中ゲストBESに対応する他ユニット内のゲストBES(受け入れ可能状態の解除)

(b) 待機系のバックエンドサーバだけを終了

待機系だけを終了する場合の停止方法について説明します。

スタンバイ型系切り替え機能,及び1:1スタンバイレス型系切り替え機能と同じく,HAモニタのmonsbystpコマンドによって待機系のバックエンドサーバを終了できます。影響分散スタンバイレス型系切り替え機能では,システムマネジャがあるユニットからの操作もできます。

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能での待機系の終了方法を次の表に示します。

表26‒68 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能での待機系の終了方法

入力場所

コマンド

操作対象

動作

操作対象サーバを配置したホスト

monsbystp

受け入れ可能状態のバックエンドサーバ

ゲストBESの受け入れ可能状態の解除

システムマネジャのあるユニット

pdstop -u -s

注※

Hitachi HA Toolkit Extension使用時は,hatesbystpコマンドを使用してください。

(例1)ゲストBESの受け入れ可能状態の解除の例

ゲストBESの受け入れ可能状態の解除の例を次の図に示します。

図26‒108 ゲストBESの受け入れ可能状態の解除の例

[図データ]

ゲストBESの受け入れ可能状態を解除するには,HAモニタのmonsbystpコマンドを入力します。なお,Hitachi HA Toolkit Extension使用時は,hatesbystpコマンドを入力します。

(例2)待機系のホストBESの停止の例

待機系のホストBESの停止の例を次の図に示します。

図26‒109 待機系のホストBESの停止の例

[図データ]

待機系のホストBESを停止するには,HAモニタのmonsbystpコマンドを入力します。なお,Hitachi HA Toolkit Extension使用時は,hatesbystpコマンドを入力します。

(3) 状態の確認

(a) ユニット,及びサーバの稼働状態

系切り替え機能適用時のユニット,及びサーバの稼働状態確認方法を次の表に示します。

表26‒69 系切り替え機能適用時のユニット,及びサーバの稼働状態確認方法

コマンド

出力情報

pdls -d svr

  • ホスト名(系切り替え後は,受け入れユニットのホスト名を表示)

  • ユニットの稼働状態(系切り替え後は,受け入れユニットのユニット識別子を表示)

  • サーバの稼働状態(系切り替え後は,受け入れユニットに属するサーバとして表示)

(b) 系の状態確認

系切り替え機能適用時の系の状態の確認方法を次の表に示します。

表26‒70 系切り替え機能適用時の系の状態の確認方法

コマンド

出力情報

pdls -d ha

  • バックエンドサーバの配置先ユニット名,状態(実行中/待機中/停止/実行系起動待ち状態)及び定義先ユニット名

    バックエンドサーバの詳細な状態は,詳細表示オプション(-a)指定時だけ表示します。

monshow(HAモニタ使用時だけ)

  • 自系のホスト名及び状態※1

  • 他系のホスト名及び状態※2

hateshow(Hitachi HA Toolkit Extension使用時だけ)

  • 自系の状態※3

注※1 次の分類で状態を表示します。

実行処理中/待機処理中/実行サーバとして起動中/待機サーバとして起動中/実行サーバとして停止処理中/待機サーバとして停止処理中/実行サーバとして再起動待ち中/待機サーバとして再起動待ち中/サーバ切り替え待ち中/連動サーバ切り替え待ち中

注※2 次の分類で状態を表示します。

実行処理中/待機処理中/実行サーバとして起動中/待機サーバとして起動中/実行サーバとして停止処理中/待機サーバとして停止処理中/実行サーバとして再起動待ち中

注※3 次の分類で状態を表示します。

実行サーバの起動完了/待機サーバの起動完了/実行サーバの起動中/待機サーバの起動中/実行サーバの停止処理中/待機サーバの停止処理中/実行サーバの再起動待ち状態/サーバ未起動

(4) 統計ログファイルの運用

統計ログファイルは,二つのファイル(pdstj1,pdstj2)から構成されています。これらのファイルは現用系HiRDBシステムに一組作成されます。切り替え先では受け入れユニットの統計ログファイルを共用するため,予備系用のファイルは作成されません。したがって,HiRDB管理者は,正規ユニットのファイルと受け入れユニットのファイルで運用してください。

(a) アンロード統計ログファイルの作成

系切り替えが発生した場合,切り替わり先ホストで使用する統計ログファイルは,切り替え先の受け入れユニットが使用中のファイルです。統計ログ出力先ファイルは,それぞれのホストに分散しているので,アンロード統計ログファイルを特定のサーバマシンに作成してください。

アンロード統計ログファイルを作成するタイミングは,次のとおりです。

  • 統計ログファイルがスワップしたとき

  • 系切り替えが発生したとき

系切り替え機能使用時のアンロード統計ログファイルの作成例(影響分散スタンバイレス型系切り替えの場合)を次の図に示します。

図26‒110 系切り替え機能使用時のアンロード統計ログファイルの作成例(影響分散スタンバイレス型系切り替えの場合)

[図データ]

ポイント

統計ログファイルは各サーバマシンで同じファイル名になるので,そのまま同じ名称でアンロード統計ログファイルを作成しないようにしてください。HiRDBが提供するシェルスクリプト(pdstjacm)を使用する場合も,同じ名称にならないようにシェルスクリプトを変更して使用してください。

また,統計ログファイルは系が切り替わると,切り替え先のホストとして扱います。

(b) 系が切り替わった後の統計情報の取得処理

系切り替えが発生した場合,切り替え前の統計ログの取得状況を引き継ぎます。つまり,系切り替え前に統計ログを取得していた場合は,システム共通定義のpd_statisticsオペランドの指定に関係なく,系切り替え後も切り替えたサーバに関する統計ログを取得します。このとき,統計ログファイルは,切り替え先の受け入れユニットと共用します。また,系切り替え前に統計ログを取得していなかった場合は,系切り替え後も統計ログを取得しません。その場合,切り替わった後でpdstbeginコマンドを入力すれば,統計ログの取得を開始できます。

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能での統計ログの取得状況を次の表に示します。

表26‒71 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能での統計ログの取得状況

ユニット種別

取得の有無

受け入れユニット

正規ユニット

取得中

取得する

取得していない

取得しない

影響分散スタンバイレス型系切り替え機能の場合の系切り替え後の統計ログの取得の例を次の図に示します。

図26‒111 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能の場合の系切り替え後の統計ログの取得の例

[図データ]

(c) 統計解析ユティリティの実行

正規ユニット,及び受け入れユニットで作成したアンロード統計ログファイルを入力情報として,統計解析ユティリティを実行してください。このとき,系切り替え前のファイルはOSのコマンドなどを使用して手動でコピーする必要があります。なお,系切り替え中のサーバの統計情報は,受け入れユニットに属するサーバの情報として処理されます。

ただし,障害などで系が切り替わった場合,切り替わる直前の統計ログのファイルを正しく取得されていません。このため,統計解析ユティリテイを実行しても誤差が発生することがありますので,この点を考慮した上でチューニングなどに使用してください。