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ノンストップデータベース HiRDB Version 9 システム運用ガイド(UNIX(R)用)


21.1.1 データベースをどの状態に回復できるのか?

データベースは次に示すどれかの時点の状態に回復できます。

〈この項の構成〉

(1) バックアップ取得時点に回復する場合

バックアップ取得時点にデータベースを回復する場合は,入力情報(データベース回復ユティリティの入力情報)にバックアップファイルだけが必要です。データベース回復の概要(バックアップ取得時点に回復する場合)を次の図に示します。

図21‒1 データベース回復の概要(バックアップ取得時点に回復する場合)

[図データ]

注意事項

特定のRDエリアをバックアップ取得時点に回復する場合は,次に示すことに注意してください。

  • 障害が発生したRDエリアだけを回復すると,そのほかのRDエリアと整合性がとれなくなります。

例えば,定義系SQLの処理中に障害が発生すると,障害が発生したユーザ用RDエリアだけをバックアップ取得時点の状態に回復しても,データディクショナリ用RDエリアは障害発生直前の同期点の状態です。したがって,表「同時にバックアップを取得する必要があるRDエリア」で示すRDエリアも同時に取得したバックアップで回復する必要があります。

(2) 障害発生直前の最新の同期点に回復する場合

(a) 回復の対象になるトランザクション

トランザクションを決着した時点を同期点といいます。トランザクションによる更新処理を有効にする場合の同期点処理をコミットといい,無効にする場合の同期点処理をロールバックといいます。障害発生時点で処理が完了しているトランザクションの同期点にデータベースを回復することを障害発生直前の最新の同期点に回復するといいます。障害発生時点で処理中のトランザクション(同期点に達していないトランザクション)は無効になるため,このトランザクションによる更新処理は回復の対象になりません。回復の対象になるトランザクションを次の図に示します。

図21‒2 回復の対象になるトランザクション(障害発生直前の最新の同期点に回復する場合)

[図データ]

〔説明〕

トランザクションA,Bは処理を完了して同期点に達しているため,この同期点にデータベースを回復します。

トランザクションC,Dは処理中で同期点に達していないため,このトランザクション処理は無効になります。したがって,回復の対象になりません。

(b) 必要となる入力情報

障害発生直前の最新の同期点に回復する場合は,次に示す入力情報(データベース回復ユティリティの入力情報)が必要になります。

  • バックアップファイル

  • アンロードログファイル

注※

バックアップ取得時点以降のシステムログをアンロードしたアンロードログファイルが必要になります。

アンロードレスシステムログ運用の場合は,バックアップ取得時点以降のシステムログを格納したシステムログファイルが必要になります。

データベース回復の概要(障害発生直前の最新の同期点に回復する場合)を次の図に示します。

図21‒3 データベース回復の概要(障害発生直前の最新の同期点に回復する場合)

[図データ]

(c) 注意事項(重要)

  • 回復対象RDエリアは障害が発生したRDエリアだけです。

  • 回復が完了したRDエリアのバックアップを必ず取得してください。バックアップを取得しないと,その後このRDエリアに障害が発生したときに,この時点の同期点からデータベースを回復できなくなります。

  • データベース回復ユティリティの入力情報とするアンロードログファイルは通常ファイルである必要があります。このため,アンロードログファイルをCMT又はDATなどの媒体に保存している場合は,データベース回復ユティリティを実行する前にディスク上に登録してください。

  • システムログを使用してマスタディレクトリ用RDエリアを回復する場合は,pdstart -rコマンドでHiRDBを開始する必要があります。システムログを使用してマスタディレクトリ用RDエリア以外のRDエリアを回復する場合は,pdstartコマンドでHiRDBを開始する必要があります。したがって,最新の同期点に回復する場合は,マスタディレクトリ用RDエリアとそれ以外のRDエリアを同時に回復できません。すべてのRDエリアを最新の同期点に回復する場合の手順については,「例題1(全RDエリアを回復する場合)」を参照してください。

(3) バックアップ取得時点以降の任意の同期点(範囲指定の回復)

HiRDB管理者が指定する時点で処理が完了しているトランザクションの同期点にデータベースを回復することをバックアップ取得時点以降の任意の同期点に回復するといいます。HiRDB管理者が指定する時点で処理中のトランザクション(同期点に達していないトランザクション)による更新処理は回復の対象になりません。これを範囲指定の回復といいます。範囲指定の回復を次の図に示します。

図21‒4 範囲指定の回復

[図データ]

〔説明〕

どの同期点を回復対象にするかはデータベース回復ユティリティの-Tオプションで指定します。

  • 同期点Aに戻したい場合は,-Tオプションの回復終了時刻に9:10以降,9:20より前の時刻を指定してください。

  • 同期点Bに戻したい場合は,-Tオプションの回復終了時刻に9:20以降,9:30より前の時刻を指定してください。

  • 同期点C(障害発生直前の同期点)に戻したい場合は,-Tオプションを指定する必要はありません。

バックアップ取得時点以降の任意の同期点に回復する場合の入力情報(データベース回復ユティリティの入力情報)は,障害発生直前の最新の同期点に回復する場合と同じになります。