1.1.1 DocumentBrokerの目的

DocumentBrokerは,組織内に分散するさまざまな文書を,多面的に一元管理する文書管理基盤ソフトウェアであり,次の目的で開発されています。

DocumentBrokerを利用した文書管理システムは,従来の文書管理システムでの問題や課題を解決し,業務の効率および生産性を向上させることができます。DocumentBrokerは,文書を基幹業務として扱う企業や組織で,業務の形態に合わせた,スケーラブル,オープン,高信頼,そして高性能な文書管理システムの構築を支援します。DocumentBrokerで実現する文書管理の概要を次の図に示します。

図1-1 DocumentBrokerで実現する文書管理システム

[図データ]

<この項の構成>
(1) 従来の文書管理
(2) DocumentBrokerで実現する文書管理

(1) 従来の文書管理

企業,官公庁,研究機関などの大規模な組織では,膨大な量の文書が作成されます。作成される文書の種類は,簡単なメモ,定型業務に利用される帳票や申請書類,会議の議事録,新聞記事,技術論文,マニュアルなど,業種や部門によってさまざまです。従来,紙で管理されていたこれらの文書は,パーソナルコンピュータなどの普及によって,電子化されて保存されることが多くなりました。

電子化された文書は,各担当者のパーソナルコンピュータで個別に管理され,フロッピーディスクなどの記録媒体を介して共用されたり,部門別のファイルサーバで共用されたりしてきました。その結果,組織内で日々作成される文書が,担当者のパーソナルコンピュータや部門別のファイルサーバに分散されてしまい,即時に組織全体で有用な文書として共用することが困難でした。また,最新の文書であるか,承認済みの文書であるか,などといった文書の状態については,担当者の認識に依存して管理されてきました。

そのあと,グループウェアの文書管理システムが発達して,電子化された文書はデータベースに格納されて一元管理されるようになり,文書の共用化が促進されてきました。グループウェアの文書管理システムは,完成された文書を保管し,組織内で共用することを目的としてきました。通常,数万~10万件程度の文書の登録件数が想定され,完成された過去の文書を登録しておいて改訂時に流用したり,再利用できる書類のフォーマットを登録しておいて書類作成時に利用したりすることに主眼が置かれてきました。文書が完成されるまでの段階では,各担当者のパーソナルコンピュータで個別に文書が管理され,完成された時点で文書管理システムに登録されて共用されるという運用がほとんどで,最新の文書を正しく登録するかどうかについては,やはり担当者の認識に依存してきました。

このため,文書を作成する担当者の認識に依存しないで運用できる文書管理システムが望まれるようになってきました。また,容量の制限や安全性などの問題点から,従来は共用化されることのなかった組織の重要な基幹文書の管理も任せられる文書管理システムが必要とされています。基幹文書は,本来,作成/審査/承認といった業務の流れを経て完成されるものです。このため,単に「大規模,大容量で」,「安全に」,「完成された文書を保管できる」という文書管理システムだけでは不十分です。文書を作成する業務の流れに従って,作成から保管,破棄までの過程についても適切に管理できる文書管理システムが望まれています。

(2) DocumentBrokerで実現する文書管理

DocumentBrokerは,文書の変更履歴,作成中の文書の審査者による指摘,関連文書など,その文書に関する情報を一括管理して,組織全体で活用することを目的とします。文書の特性や作成方式,文書が作成される業務の流れなどを考慮して,文書をわかりやすく整理できるさまざまなフレームワークや連携機能を用意しているため,文書をさまざまな視点で分類したり,まとめたりして多面的な管理が実現できます。文書の内容による分類だけでなく,一つのファイルで構成される文書なのか,構造を持った複数ファイルで構成される文書なのか,担当者一人が作成する文書なのか,複数人で分担して作成する文書なのか,などといったさまざまな要素を考慮に入れて,文書管理のフレームワークを適用できます。

文書の登録件数は100万件程度で,きめ細かなアクセス制御や,文書の属性やキーワード,構造を意識した検索機能も備えています。

出版原稿や特許の申請書など,基幹業務で作成される文書の場合,業務を効率良く円滑に行うために最適な文書管理システムが必要です。また,保守マニュアルや設計図面など,業務を遂行するために必要な文書の場合,それらの情報を組織内で共用して,業務で効果的に活用できるようにするために,電子データとして厳密に管理する必要があります。このような場合,DocumentBrokerが提供しているフレームワークを利用すると,文書の「特性」や「ライフサイクル」などを意識し,既存の業務システムと密接に連携した文書管理システムを構築できます。

DocumentBrokerは,文書を基幹業務として扱う分野での,文書の共用による組織活動のスピードアップを実現するための文書管理システムの構築をサポートします。