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OpenTP1 Version 7 分散トランザクション処理機能 TP1/Financial Service Platform 使用の手引


1.1.3 機能詳細

TP1/FSPでは,次の機能実装を行います。

〈この項の構成〉

(1) SDBハンドラ機能

SDBハンドラ機能は,HiRDB/SDと連携し,階層型DB(SDB)にアクセスするインタフェースを提供する機能です。

図1‒2 SDBハンドラ機能

[図データ]

SDBハンドラを介してアクセスできるデータベース種別を次に示します。

項番

分類

DB種別

説明

1

FMB

(階層木構造)

FMB

VSAMキー順データセット(KSDS)と直接データセット,またはVSAMエントリー順データセット(ESDS)から構成されるデータベースです。

2

AFM

(単純構造)

DAM

直接データセットまたはVSAMエントリー順データセット(ESDS)から構成されるデータベースです。

3

MAM

テーブルから構成されるデータベースです。

4

TAM

テーブルから構成されるデータベースです。

5

SAM

順データセットから構成されるデータベースです。

(2) UAP履歴情報取得機能

UAP履歴情報取得機能とは,オンライン中にユーザ任意の情報をデータベースに取得する機能です。UAPからTP1/FSPが提供するUAP履歴情報取得APIを発行することで,任意の業務情報をTP1/FSPが管理するリソースマネジャの表に取得し,業務内容を永続化するものです。

履歴情報取得先は,複数のDB(表)から構成され,満杯となると次のDB(表)へとスワップし永続化したデータとなるように制御します。

満杯となったDB(表)は,付属するデータ抽出ユティリティやデータ連携支援で運用データとして抽出します。

図1‒3 UAP履歴情報取得機能

[図データ]

(3) OJ取得機能

送信処理が行われたとき,ユーザデータをUAP履歴情報のデータ種別「OJ(出力メッセージ)」として取得する機能です。

UAP履歴情報は送信時に取得要求を行い,コミット時に有効となります。トランザクションがロールバックした場合には無効となります。

また,OJ編集UOCによってユーザデータを変更することができます。OJ編集UOCが編集したユーザデータをOJとして取得します。

(4) オンラインバッチメッセージプロセッシング機能

銀行勘定系オンラインシステムには,オンライン業務とバッチ業務の2種類があります。

オンラインバッチメッセージプロセッシング機能は,バッチ業務をオンライン業務に影響を与えることなく,複数のサーバで分散処理することで高速に実行し,バッチ業務時間の短縮,システムの大規模化に伴う複雑な運用の解消,および大量データ処理を容易化する機能です。

(5) オフラインバッチ機能

オフラインバッチ機能は,オンライン業務から切り離したデータベースに対して,バッチ処理を行う機能です。

オフラインバッチ機能はTP1/FSPの1機能ですが,スタンドアロン構成でのバッチ業務を前提とした機能で,運用形態や構成がTP1/FSPとは異なります。

他プロセス連携(RPC,DBキューなど)のオンライン用機能を使用しないことによって,環境構築や運用が容易で,かつ,少ないリソース(メモリ,ディスク,ディスクリプタなど)で実行できます。

(6) データ連携支援機能

データ連携支援機能は,TP1/EEのUAP履歴取得機能がDB上の履歴情報表に取得したユーザデータ(UJ)を抽出し,トランザクション単位にユーザデータ(UJ)をユーザ(UOC)に引き渡し,ユーザデータ(UJ)をリアルタイムに反映するためのものです。

図1‒4 データ連携支援機能

[図データ]

(7) データ抽出ユティリティ機能

データ抽出ユティリティとは,取得用履歴情報表またはリロード用履歴情報表に格納されているUAP履歴情報を,UAP履歴情報単位でUAPに入力する機能です。

UAPからデータ抽出ユティリティに対してINIT要求,GET要求,TERM要求を行うことでUAP履歴情報を入力できます。

図1‒5 データ抽出ユティリティ機能

[図データ]

(8) ユーザ初期化トランザクション

ユーザ初期化トランザクションは,プロセス初期化時や,スレッドダウン後にユーザ資源を初期化する目的でスレッドごとに動作するトランザクションです。

プロセス初期化トランザクション(MI)後,各処理スレッドでユーザ初期化トランザクションを起動します。

ユーザ初期化トランザクションはパラレルに動作し,全UTトランザクションの完了後,オンラインを開始します。

(9) トランザクションレベル方式の処理キュー制御機能

トランザクションレベル方式の処理キュー制御機能とは,各APサーバの処理キューの優先度で,処理スレッドが引き出すキューの優先制御を行う機能です。

受信した電文を基にトランザクションレベルをUOCで決定し,決定されたトランザクションレベルに対応する処理キューを登録します。

処理スレッドでは,トランザクションレベルキュー群のトランザクションレベルが上位の処理キューから処理キューを引き出し,トランザクション処理を実行します。

図1‒6 トランザクションレベル機能

[図データ]

(10) ユーザタイマの永続化機能

ユーザタイマの永続化機能は,ユーザタイマを登録したTP1/FSPがタイマ起動時刻前にプロセスダウンしても,別のTP1/FSPでタイマを起動する機能です。

ユーザタイマをデータベース上に登録,管理することで永続化します。

(11) 共有リソース初期化トランザクション

共有リソース初期化トランザクションとは,複数のサーバで共有するリソースの初期化を,各サーバの開始時に初期化するのではなく,システム全体で1回だけ初期化を行う場合に使用するトランザクションです。

システム内のすべてのサーバが正常終了している状態で正常開始を行い,最初にプロセス初期化トランザクション(MI)が終了したサーバを最初に起動したサーバとして扱い,プロセス初期化トランザクション(MI)終了後に起動します。

(12) ユーザサービス実行コマンド機能

ユーザサービス実行コマンド機能とは,コマンドによってユーザ任意のトランザクションを起動するための機能です。

TP1/FSPが提供するコマンドインタフェースでコマンド入力を行い,コマンドインタフェースで指定したサービスの処理を実行させる機能です。

コマンドインタフェースに指定した,入力情報はコマンド実行トランザクションの入力電文としてUAPに引き渡されます。

図1‒7 ユーザサービス実行コマンド機能

[図データ]

(13) ユーザ任意メッセージの出力機能

ユーザ任意メッセージの出力機能とは,ユーザ任意の形式によるメッセージログ出力機能です。

TP1/EEでもユーザメッセージログ出力機能を持ちますが,ユーザの任意となるのはメッセージテキストの部分であり,メッセージIDはTP1/EEが提供するメッセージID(KFSB)を使用しなければなりません。

TP1/FSPでのユーザメッセージログ出力機能ではメッセージIDもユーザが任意に決定することが可能となります。

(14) 複数のUAP共用ライブラリ同時入れ替え機能

複数のUAP共用ライブラリ同時入れ替え機能は,UAP共用ライブラリ入れ替えコマンドの実行によって,起動中のTP1/FSPを停止させないでUAP共用ライブラリを入れ替える機能です。

ライブラリはディレクトリ単位で入れ替えます。そのため,同時に複数のライブラリを入れ替えることができます。

(15) サーバ間連携の追跡機能

システムの大規模化に伴い,複数のTP1/FSPが連携して1つの業務を実行するシステムは,スケールアウトが容易な反面,業務の流れを把握しにくく,障害やボトルネックの調査が困難となります。

サーバ間連携の追跡機能は,業務ごとにユニークな業務IDを割り当て,連携する各TP1/FSPのTASKTMに同一の業務ID,属性,ネスト通番,および送信元TP1/EEのノード識別子を出力し,同一業務を実行したトランザクションの関連づけを可能とし,複数サーバにわたった業務の調査を容易とするための機能です。

UAP履歴情報取得機能を使用している場合は,UAP履歴情報の履歴情報共通インデクスに業務IDを設定します。

(16) ユーザメモリダンプ機能

ユーザメモリダンプ機能とは,ユーザが指定したメモリ領域をファイルに出力する機能です。

メモリダンプの出力タイミングとしては,APIの延長でファイル出力する方法と,スレッドダウン時にファイル出力する方法があります。

(17) 回復モードによるトランザクション回復機能

スケールアウトなどでTP1/FSPを複数起動している構成で,障害などでダウンしたTP1/FSPを再起動しないで,切り離して(性能縮退)して業務続行するケースでは,ダウンしたTP1/FSPで仕掛かり中だったトランザクションが残留し,業務に影響を与えるおそれがあります。

回復モードによるトランザクション回復機能は,ダウンしたTP1/FSPを回復モードで起動します。回復モードで起動されたTP1/FSPは,仕掛かり中のトランザクションの回復処理だけ行い,回復終了後は自動的にTP1/FSPを終了します。

次回のTP1/FSP再起動時は,開始モードが「再開始」,かつ,未決着トランザクションなしの状態で起動できます。

(18) 全銀RCプロトコル接続機能

全銀RCプロトコル接続機能とは,全国銀行データ通信システム接続プロトコルに準拠し接続を行う機能です。全銀センタとの接続でプロトコルの差異を吸収し,UAPが通信プロトコルを意識しないで全銀センタとの通信を行えるように制御します。

UAPは全銀センタとの通信プロトコルを意識することなく,業務処理を行うことができます。

図1‒8 全銀RCプロトコル接続機能

[図データ]