2.2.5 ノード間負荷バランス機能
OpenTP1では,RPCによる要求が特定のノードに集中しないようにノード間で負荷を分散する機能があります。これをノード間負荷バランス機能といいます。
ノード間負荷バランス機能を使用するためには,負荷分散の前提として次の条件を満たしている必要があります。
-
複数のノードに同一のサービスを提供するユーザサーバが起動されていること。
-
各OpenTP1ノードはシステム共通定義のall_nodeオペランドに自分以外のノードを定義して,お互いのOpenTP1ノードで起動されているユーザサーバの情報(ネーム情報)をやり取りしていること。
ここでは,OpenTP1のノード間負荷バランス機能を使用する場合のTP1/Client/J側,TP1/Server側の関連する定義,処理,およびRPCの処理を説明します。
(1) サーバ側の判断で負荷分散を行う場合
TP1/Serverのスケジュールサービスが,ノードのスケジュール状態に応じて,より効率的に処理できるノードへ負荷を分散させます。
(a) TP1/Client/J側の定義
TP1/Client/J側の定義で必要な設定はありません。
(b) TP1/Server側の定義
TP1/Server側の定義では,次の設定をする必要があります。
-
スケジュールサービス定義に次のオペランドを指定または省略する。
scd_this_node_first = N (デフォルト)
scd_announce_server_status = Y (デフォルト)
(2) サーバからの負荷情報からクライアント側で判断する場合
サーバから得たサーバの負荷レベルを基に,サービス要求を行うクライアントがOpenTP1ノードを決めてRPCを実行します。
(a) TP1/Client/J側の定義
TP1/Client/J環境定義で次の設定をする必要があります。
-
dcnamuse=Y
-
dccltloadbalance=Y
(b) TP1/Server側の定義
TP1/Server側の定義では,次の設定をする必要があります。
-
スケジュールサービス定義に次のオペランドを指定または省略する。
scd_announce_server_status=Y(デフォルト値)
(3) RPC種別による動作の違い
(a) リモートAPI機能を組み合わせた場合
サーバ側の判断で負荷分散を行います。
(b) スケジューラダイレクト機能を組み合わせた場合
スケジューラダイレクト機能を使用したRPCでは,スケジュールを依頼するOpenTP1ノードが複数ある場合,dchostオペランドに指定された順番にスケジュールを依頼します。RPCごとにサービス要求先スケジューラをラウンドロビン方式で分散させる場合は,TP1/Client/J環境定義にdcscdhostchange=Yを指定します。
最初のRPCでのサービス要求時に,サービス要求先スケジューラをランダムに選択するには,TP1/Client/J環境定義にdchostselect=Yを指定します。
(c) ネームサービスを使用したRPCを組み合わせた場合
ネームサービスを使用したRPCでは,窓口となるTP1/Serverのネームサービスにサービス情報を問い合わせ,ネームサービスからの応答メッセージを基にサービス要求先スケジューラを決定します。
RPCごとにサービス要求先スケジューラを分散させる場合は,TP1/Client/J環境定義にdccltloadbalance=Yを指定します。これによって,TP1/Client/Jは,ネームサーバから複数のサービス要求先スケジューラの情報を取得し,負荷レベルが最も低いサービス要求先スケジューラの情報をキャッシュに格納します。
キャッシュに格納されるサービス要求先スケジューラの情報は,1つだけではなく,複数の場合もあります。
キャッシュに格納されたサービス要求先スケジューラの情報が複数ある場合,最初のサービス要求先スケジューラは,ランダムに選択されます。RPCでのサービス要求が2度目以降の場合は,サービス要求先スケジューラの情報を取得するためにキャッシュを参照し,RPCごとにラウンドロビン方式でサービス要求先スケジューラを切り替え,分散させます。
クライアントからのRPC実行時に,このキャッシュ領域中に該当するサービス情報が存在する場合には,窓口となるTP1/Serverのネームサービスに対してサービス情報の問い合わせを行いません。クライアントではLRU(Least Recently Used)方式でキャッシュを管理しているため,キャッシュ領域が不足した場合には参照されていないサービス情報から順に削除します。また,TP1/Client/J環境定義のdccltcachetimオペランドに指定した有効時間が過ぎたサービス情報は,RPC実行時にキャッシュ領域から削除され,ネームサービスに対してサービス情報を問い合わせます。
- 注意事項
-
-
TP1/Client/J環境定義のdccacheオペランドの指定値を大きくすると,多くのサービス情報を格納でき,窓口となるTP1/Serverのネームサービスとの通信回数を削減できます。ただし,多くのキャッシュ領域中からサービス情報を検索するのでオーバヘッドが掛かります。
-
TP1/Client/J環境定義のdccltcachetimオペランドの指定値を小さくすると,古いサービス情報はただちに削除され,窓口となるTP1/Serverのネームサービスに新しいサービス情報を問い合わせます。この場合,常に最新のサービス情報をキャッシュ領域に保持できるため,サーバの負荷に応じてRPC要求を振り分けられます。ただし,ネームサービスとの通信回数が増え,また,キャッシュ領域の書き換え処理にもオーバヘッドが掛かります。
-
TP1/Client/J環境定義のdccltcachetimオペランドの指定値を大きくすると,窓口となるTP1/Serverのネームサービスとの通信回数を削減できます。ただし,SPPの状態変化への対応が遅れるため,SPPが停止したノードのスケジューラに対してRPC要求を実行してしまうことがあります。
-
(d) 通信先を指定したRPCを組み合わせた場合の動作
通信先を指定したRPCを使用した場合,ノード間負荷バランス機能は使用できません。