CUPからスケジュールキューを使うSPP(キュー受信型サーバ)にサービスを要求した場合,要求先SPPがあるノードのスケジューラデーモンが,いったんサービス要求メッセージを受信し,該当するSPPのスケジュールキューに格納します。スケジューラデーモンとは,スケジュールサービスを提供するシステムデーモンのことです。
長大なサービス要求メッセージは,一定の長さに分割してスケジューラデーモンに送信します。スケジューラデーモンは,サービス要求メッセージを組み立ててキュー受信型サーバのスケジュールキューに格納します。スケジューラデーモンは,OpenTP1システムごとに1プロセスです。そのため,分割されたサービス要求メッセージの受信処理が完了するまで,スケジューラデーモンはほかのサービス要求メッセージを受信できません。通信速度が遅い回線を使用して,長大なサービス要求メッセージを送信した場合,ほかのサービス要求のスケジューリングが遅延することがあります。また,システムの大規模化,マシンやネットワークの高性能化などに伴って,効率良くスケジューリングできないことがあります。この場合,従来のスケジューラデーモンとは別に,サービス要求受信専用デーモンを複数プロセス起動し,サービス要求メッセージ受信処理を並行動作させることによって,スケジューリング遅延を回避できます。この機能をマルチスケジューラ機能といいます。以降,従来のスケジューラデーモンをマスタスケジューラデーモン,サービス要求受信専用デーモンをマルチスケジューラデーモンと呼びます。
マルチスケジューラ機能の検討が必要なシステム構成については,マニュアル「OpenTP1 プログラム作成の手引」を参照してください。
マルチスケジューラ機能を使用することで,複数起動されているマルチスケジューラデーモンの中から,利用できるマルチスケジューラデーモンをランダムに選択してサービス要求を送信できます。マルチスケジューラデーモンをランダムに選択して,スケジューラダイレクト機能,またはネームサービスを使用したRPCを実行できます。
TP1/Client/J環境定義dcscddirectオペランドにYを指定して,スケジューラダイレクト機能を使用したRPCを行う場合について説明します。
TP1/Client/Jでは,窓口となるTP1/Serverのネームサービスへ問い合わせないで,マルチスケジューラデーモンをランダムに選択できます。これによって通信回数が削減され,ネームサービスの負荷を軽減できます。
マルチスケジューラデーモンをランダムに選択するためには,TP1/Client/J環境定義のdchostオペランド,またはdcscdportオペランドに次のポート番号を指定します。
また,あらかじめTP1/Serverで起動しているマルチスケジューラデーモンのプロセス数を,TP1/Client/J環境定義のdcscdmulticountオペランドに指定しておく必要があります。サービス要求を送信するマルチスケジューラデーモンのポート番号は,次に示す範囲の値からランダムに選択されます。
ただし,TP1/Client/J環境定義のdchostオペランドで指定した窓口となるTP1/Server間で,スケジュールサービス定義のscdmultiで指定した値を統一する必要があります。
マルチスケジューラ機能を使用して,ネームサービスを使用したRPCを行う場合について説明します。サービス情報を一時的に格納する領域に,該当するサービス情報がないときはネームサービスにサービス情報を問い合わせます。サービス情報を基にマルチスケジューラデーモンをランダムに選択してサービス要求を送信します。
マルチスケジューラ機能を使用した場合,サービス要求を送信するスケジューラデーモンはTP1/Client/J環境定義の指定によって異なります。
スケジューラダイレクト機能を使用したRPCの場合の,TP1/Client/J環境定義のオペランドの指定とスケジューラデーモンの関連を次の表に示します。
表2-1 TP1/Client/J環境定義のオペランドの指定とスケジューラデーモンの関連(スケジューラダイレクト機能を使用したRPC)
TP1/Client/J環境定義のオペランドの指定 | サービス要求を送信するスケジューラデーモン | ||
---|---|---|---|
dcscddirect | dcscdmulti | dcscdmulticount | |
Y | Y | ○ | ランダムに選択したマルチスケジューラデーモン※ |
- | TP1/Client/J環境定義のdchostオペランド,またはdcscdportオペランドに指定したポート番号で起動されているスケジューラデーモン | ||
N | 無効 | TP1/Client/J環境定義のdchostオペランド,またはdcscdportオペランドに指定したポート番号で起動されているスケジューラデーモン |
ネームサービスを使用したRPCの場合の,TP1/Client/J環境定義のオペランドの指定とスケジューラデーモンの関連を次の表に示します。
表2-2 TP1/Client/J環境定義のオペランドの指定とスケジューラデーモンの関連(ネームサービスを使用したRPC)
TP1/Client/J環境定義のオペランドの指定 | サービス要求を送信するスケジューラデーモン | ||
---|---|---|---|
dcnamuse | dcscdmulti | dcscdmulticount | |
Y | Y | 無効 | サービス情報を基にランダムに選択したマルチスケジューラデーモン※ |
N | マスタスケジューラデーモン※ |