2.3.10 マルチスケジューラ機能を使用したRPC
CUPからスケジュールキューを使うSPP(キュー受信型サーバ)にサービスを要求した場合,要求先SPPがあるノードのスケジューラデーモンが,いったんサービス要求メッセージを受信し,該当するSPPのスケジュールキューに格納します。スケジューラデーモンとは,スケジュールサービスを提供するシステムデーモンのことです。
長大なサービス要求メッセージは,一定の長さに分割してスケジューラデーモンに送信します。スケジューラデーモンは,サービス要求メッセージを組み立ててキュー受信型サーバのスケジュールキューに格納します。スケジューラデーモンは,OpenTP1システムごとに1プロセスです。そのため,分割されたサービス要求メッセージの受信処理が完了するまで,スケジューラデーモンはほかのサービス要求メッセージを受信できません。通信速度が遅い回線を使用して,長大なサービス要求メッセージを送信した場合,ほかのサービス要求のスケジューリングが遅延することがあります。また,システムの大規模化,マシンやネットワークの高性能化などに伴って,効率良くスケジューリングできないことがあります。この場合,従来のスケジューラデーモンとは別に,サービス要求受信専用デーモンを複数プロセス起動し,サービス要求メッセージ受信処理を並行動作させることによって,スケジューリング遅延を回避できます。この機能をマルチスケジューラ機能といいます。以降,従来のスケジューラデーモンをマスタスケジューラデーモン,サービス要求専門デーモンをマルチスケジューラデーモンと呼びます。
マルチスケジューラ機能の検討が必要なシステム構成については,マニュアル「OpenTP1 プログラム作成の手引」を参照してください。
(1) マルチスケジューラデーモンをランダムに選択する
マルチスケジューラ機能を使用することで,複数起動されているマルチスケジューラデーモンの中から,利用できるマルチスケジューラデーモンをランダムに選択してサービス要求を送信できます。
マルチスケジューラデーモンをランダムに選択して,ネームサービスを使用しないRPC,または通常のRPCを実行できます。
(a) ネームサービスを使用しないRPC
クライアント環境定義DCSCDDIRECTにYを指定してネームサービスを使用しないRPCを行う場合,クライアント環境定義DCSCDPORTを指定しているかどうかで次のような違いがあります。
-
DCSCDPORTを指定する場合
DCSCDPORTを指定した場合,窓口となるTP1/Serverのネームサービスに問い合わせることなく,サービス要求を送信するスケジューラデーモンをランダムに選択できるため,通信回数が削減され,また,ネームサービスの負荷軽減にもつながります。
サービス要求を送信するスケジューラデーモンのポート番号は,次に示す範囲からランダムに選択します。
-
下限値:DCSCDPORTに指定したポート番号
-
上限値:下限値 + DCSCDMULTICOUNTに指定したプロセス数 - 1
DCSCDPORTには,マルチスケジューラデーモンのポート番号を指定します。マスタスケジューラデーモンとマルチスケジューラデーモンのベースとなるポート番号が連続している場合は,マスタスケジューラデーモンのポート番号も指定できます。
DCSCDMULTICOUNTには,TP1/Serverで起動しているスケジューラデーモンのプロセス数を指定します。DCSCDMULTICOUNTに指定するプロセス数は,DCSCDPORTに指定するポート番号の内容によって,次のとおり異なります。
DCSCDPORT指定値
DCSCDMULTICOUNT指定値
マルチスケジューラデーモンのベースとなるポート番号
マルチスケジューラデーモンのプロセス数と同値か,それ以下の値を指定する。
マルチスケジューラデーモンの任意のポート番号
「マルチスケジューラデーモンのポート番号の最大 - DCSCDPORTに指定したポート番号 + 1」の値か,それ以下の値を指定する。
マスタスケジューラデーモンのポート番号
マスタスケジューラデーモンとマルチスケジューラデーモンのベースとなるポート番号が連続している場合
「マルチスケジューラデーモンのプロセス数 + 1」の値か,それ以下の値を指定する。
上記以外
1を指定するか,または指定を省略する(マルチスケジューラデーモンは使用できない)。
なお,DCHOSTで指定した窓口となるTP1/Server間で,スケジュールサービス定義のscdmultiで指定した値を統一する必要があります。
-
-
DCSCDPORTを指定しない場合
クライアントユーザの認証を要求したあと,最初のサービス要求時に窓口となるTP1/Serverのネームサービスへ問い合わせて,サービス情報を得ます。この情報を基に,マルチスケジューラデーモンをランダムに選択してサービス要求を送信します。サービス情報は次のどちらかの時点まで有効です。
-
クライアントユーザの認証を解除(dc_clt_cltout_s関数の実行)
-
窓口となるTP1/Serverの切り替え
サービス要求を送信するマルチスケジューラデーモンのポート番号の範囲は,スケジュールサービス定義のscdmultiの最初に定義した,-pオプションに指定したポート番号を基にして決めます。そのため,スケジュールサービス定義の指定順序を考慮する必要があります。
-
(b) 通常のRPC
マルチスケジューラ機能を使用して,通常のRPC(ネームサービスを使用する)を行う場合について説明します。サービス情報を一時的に格納する領域に該当するサービス情報がない場合にネームサービスにサービス情報を問い合わせます。サービス情報を基にマルチスケジューラデーモンをランダムに選択してサービス要求を送信します。
(2) クライアント環境定義とサービス要求を送信するスケジューラデーモンの関連
マルチスケジューラ機能を使用した場合,サービス要求を送信するスケジューラデーモンはクライアント環境定義の指定によって異なります。
クライアント環境定義のオペランドの指定とスケジューラデーモンの関連を次の表に示します。
クライアント環境定義のオペランドの指定 |
サービス要求を送信するスケジューラデーモン |
|||
---|---|---|---|---|
DCSCDMULTI |
DCSCDDIRECT |
DCSCDPORT |
DCSCDMULTICOUNT |
|
Y |
Y |
○ |
2以上の値 |
ランダムに選択したスケジューラデーモン※1 |
1,または指定しない |
DCSCDPORTに指定したポート番号で起動されているスケジューラデーモン |
|||
− |
× |
スケジュールサービス定義 scdmultiの最初に定義した,-pオプションに指定したポート番号を基にして決めた,マルチスケジューラデーモンからランダムに選択したマルチスケジューラデーモン※2 |
||
N |
× |
サービス情報を基にランダムに選択したマルチスケジューラデーモン※2 |
||
N |
Y |
○ |
× |
DCSCDPORTに指定したポート番号で起動されているスケジューラデーモン |
− |
× |
マスタスケジューラデーモン※2 |
||
N |
× |
ソケット受信型サーバ,またはマスタスケジューラデーモン※2 |