2.3.11 マルチスケジューラ機能を使用したRPC

CUPからスケジュールキューを使うSPP(キュー受信型サーバ)にサービスを要求した場合,要求先SPPがあるノードのスケジューラデーモンが,いったんサービス要求メッセージを受信し,該当するSPPのスケジュールキューに格納します。スケジューラデーモンとは,スケジュールサービスを提供するシステムデーモンのことです。

長大なサービス要求メッセージは,一定の長さに分割してスケジューラデーモンに送信します。スケジューラデーモンは,サービス要求メッセージを組み立ててキュー受信型サーバのスケジュールキューに格納します。スケジューラデーモンは,OpenTP1システムごとに1プロセスです。そのため,分割されたサービス要求メッセージの受信処理が完了するまで,スケジューラデーモンはほかのサービス要求メッセージを受信できません。通信速度が遅い回線を使用して,長大なサービス要求メッセージを送信した場合,ほかのサービス要求のスケジューリングが遅延することがあります。また,システムの大規模化,マシンやネットワークの高性能化などに伴って,効率良くスケジューリングできないことがあります。この場合,従来のスケジューラデーモンとは別に,サービス要求受信専用デーモンを複数プロセス起動し,サービス要求メッセージ受信処理を並行動作させることによって,スケジューリング遅延を回避できます。この機能をマルチスケジューラ機能といいます。以降,従来のスケジューラデーモンをマスタスケジューラデーモン,サービス要求専門デーモンをマルチスケジューラデーモンと呼びます。

マルチスケジューラ機能の検討が必要なシステム構成については,マニュアル「OpenTP1 プログラム作成の手引」を参照してください。

<この項の構成>
(1) マルチスケジューラデーモンをランダムに選択する
(2) クライアント環境定義とサービス要求を送信するスケジューラデーモンの関連

(1) マルチスケジューラデーモンをランダムに選択する

マルチスケジューラ機能を使用することで,複数起動されているマルチスケジューラデーモンの中から,利用できるマルチスケジューラデーモンをランダムに選択してサービス要求を送信できます。

マルチスケジューラデーモンをランダムに選択して,ネームサービスを使用しないRPC,または通常のRPCを実行できます。

(a) ネームサービスを使用しないRPC

クライアント環境定義DCSCDDIRECTにYを指定してネームサービスを使用しないRPCを行う場合,クライアント環境定義DCSCDPORTを指定しているかどうかで次のような違いがあります。

(b) 通常のRPC

マルチスケジューラ機能を使用して,通常のRPC(ネームサービスを使用する)を行う場合について説明します。サービス情報を一時的に格納する領域に該当するサービス情報がない場合にネームサービスにサービス情報を問い合わせます。サービス情報を基にマルチスケジューラデーモンをランダムに選択してサービス要求を送信します。

(2) クライアント環境定義とサービス要求を送信するスケジューラデーモンの関連

マルチスケジューラ機能を使用した場合,サービス要求を送信するスケジューラデーモンはクライアント環境定義の指定によって異なります。

クライアント環境定義のオペランドの指定とスケジューラデーモンの関連を次の表に示します。

表2-2 クライアント環境定義のオペランドの指定とスケジューラデーモンの関連

クライアント環境定義のオペランドの指定サービス要求を送信するスケジューラデーモン
DCSCDMULTIDCSCDDIRECTDCSCDPORTDCSCDMULTICOUNT
YYランダムに選択したマルチスケジューラデーモン※1
DCSCDPORTに指定したポート番号で起動されているスケジューラデーモン
スケジュールサービス定義 scdmultiの最初に定義した,-pオプションに指定したポート番号を基にして決めた,マルチスケジューラデーモンからランダムに選択したマルチスケジューラデーモン※2
Nサービス情報を基にランダムに選択したマルチスケジューラデーモン※2
NYDCSCDPORTに指定したポート番号で起動されているスケジューラデーモン
マスタスケジューラデーモン※2
Nソケット受信型サーバ,またはマスタスケジューラデーモン※2
(凡例)
Y:オペランドの指定値がYである
N:オペランドの指定値がNである
○:オペランドに値を指定する
-:オペランドに値を指定しない
注※1
マルチスケジューラデーモンのポート番号は,次に示す範囲の値から選択します。
下限値:クライアント環境定義DCSCDPORTに指定したスケジュールサービスのポート番号の値
上限値:下限値 + クライアント環境定義DCSCDMULTICOUNT指定値 - 1
注※2
ネームサービスへの問い合わせが発生します。