分散トランザクション処理機能 OpenTP1 運用と操作

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5.8 メッセージキューの滞留監視

入力キューに滞留するメッセージキューを一定の時間間隔で監視する機能を,メッセージキューの滞留監視機能といいます。この機能はユーザサーバ(MHP)だけで有効です。メッセージキューの滞留監視機能の概要を次の図に示します。

図5-3 メッセージキューの滞留監視機能の概要

[図データ]

  1. MCFサービスの開始後,入力キューに滞留するメッセージキューの監視が始まります。
    メッセージキューの滞留数だけを監視している時間を滞留数監視区間と呼びます。監視はMCFサービスが終了するまで行われます。
  2. 入力キューに滞留しているメッセージ数が,しきい値を超えた場合は,一定の時間間隔でMHPの処理能力を監視します。
    この時間を処理能力判定区間と呼びます。処理能力判定区間で,MHPの処理能力が期待件数に満たない場合,KFCA11820-Wメッセージを出力して処理を続行するか,またはKFCA11821-Eメッセージを出力してOpenTP1システムをダウンします。

なお,メッセージキューの滞留監視の開始後,監視対象として定義したサービスグループがMCFアプリケーション属性定義に定義されていない場合は,KFCA11822-Wメッセージが出力され処理は続行されます。

<この節の構成>
(1) 指定するオペランド
(2) 処理の流れ
(3) 処理の流れの例
(4) 注意事項

(1) 指定するオペランド

メッセージキューの滞留監視機能を使用するには,次に示すMCFマネジャ定義のmcfmsvg定義コマンドを指定します。

それぞれのオペランドの詳細については,マニュアル「OpenTP1 システム定義」を参照してください。

(2) 処理の流れ

メッセージキューの滞留監視の処理の流れを説明します。

  1. MCFサービスの開始後,滞留数監視区間が始まり,入力キューの滞留監視インタバル時間(mcfmsvg -w watchintで指定)の間隔でメッセージキューの滞留数の監視を開始します。
  2. 入力キューに滞留しているメッセージ数が入力キューの滞留監視数(mcfmsvg -w watchcntで指定)を超えた時点で処理能力判定区間に入ります。
    処理能力判定区間では,次に示す式によってMHPの処理能力が判定されます。
    MHPの処理能力判定式
    [図データ]
    判定後の処理を次に示します。
    • MHPの処理能力判定式が成立しない場合
      処理が続行されます。
    • MHPの処理能力判定式が成立し,MHPの処理能力の不足時にOpenTP1システムをダウンさせる指定をしていない場合(mcfmsvg -w abortにnoを指定)
      KFCA11820-Wメッセージが出力され,処理が続行されます。
    • MHPの処理能力判定式が成立し,MHPの処理能力の不足時にOpenTP1システムをダウンさせる指定をしている場合(mcfmsvg -w abortにyesを指定)
      KFCA11821-Eメッセージが出力され,OpenTP1システムをダウンさせます。
    入力キューに滞留しているメッセージ数が入力キューの滞留監視数(mcfmsvg -w watchcntで指定)よりも少なくなった場合,処理能力判定区間から滞留数監視区間に戻ります。

メッセージキューの滞留監視時の判定条件とMCFの動作を次の表に示します。

表5-2 メッセージキューの滞留監視時の判定条件とMCFの動作

判定条件 MCFの動作
前回判定時の区間 滞留数と監視数の関係 AとBの関係 AとCの関係 mcfmsvg -w abortの指定
滞留数監視区間 滞留数<監視数 判定しない 判定しない 判定しない 滞留数監視区間のまま処理を続行する。
滞留数≧監視数 判定しない 判定しない 判定しない 処理能力判定区間に遷移して処理を続行する。
処理能力判定区間 滞留数<監視数 判定しない 判定しない 判定しない 滞留数監視区間に遷移して処理を続行する。
滞留数≧監視数 A≧B A≧C 判定しない 処理能力判定区間のまま処理を続行する。
A<C 判定しない
A<B A≧C 判定しない
A<C yes KFCA11821-Eメッセージを出力して,MHPを強制終了し,OpenTP1システムをダウンさせる。
no KFCA11820-Wメッセージを出力して,処理能力判定区間のまま,処理を続行する。
(凡例)
A:MHPが処理したサービス要求数
B:MHPに期待するサービス要求の処理数
C:前回判定時に滞留していたサービス要求数

(3) 処理の流れの例

MCFマネジャ定義のmcfmsvg定義コマンドで次のように指定した場合のメッセージキューの滞留監視機能の処理の例を説明します。

MCFマネジャ定義のmcfmsvg定義コマンドの指定
  • 入力キューの滞留監視数(mcfmsvg -w "watchcnt=30")
  • 入力キューの滞留監視インタバル時間(mcfmsvg -w "watchint=5")
  • MHPに期待するサービス要求の処理数(mcfmsvg -w "expectcnt=24")
  • MHPの処理能力の不足を検出した場合,OpenTP1システムをダウンさせるかどうかを指定(mcfmsvg -w "abort=yes")

    図5-4 メッセージキューの滞留監視機能の処理の例

    [図データ]

入力キューの滞留監視数を30と指定しているため,この図でC2からC5の区間およびC8以降が処理能力判定区間です。それ以外は滞留数監視区間です。

入力キューの滞留監視を判定する時点でのメッセージキューの滞留数と判定結果を次の表に示します。

表5-3 メッセージキューの滞留数と判定結果

項番 前回判定時から引き続き滞留しているメッセージキューの個数
(Bn
前回判定時のメッセージキューの滞留数
(Pn-1
前回判定時から今回までのサービス要求処理数
(Pn-1-Bn
MHPに期待するサービス要求の処理数 判定結果
1 11 24 滞留数が監視数に達していないため,滞留数監視区間のままオンライン続行
2 9 18 9 24
3 25 28 3 24 滞留数が監視数に達したため,処理能力判定区間を開始
4 8 32 24 24 滞留数が監視数に達しているが,MHPが期待件数以上のサービス要求を処理できているため,処理能力判定区間のままオンライン続行
5 13 45 32 24
6 0 35 35 24
7 3 30 27 24 滞留数が監視数に達していないため,滞留数監視区間を開始
8 5 11 6 24 滞留数が監視数に達していないため,滞留数監視区間のままオンライン続行
9 15 17 2 24 滞留数が監視数に達したため,処理能力判定区間を開始
10 29 32 3 24 滞留数が監視数に達しており,MHPが期待件数または前回のメッセージ滞留数以上の要求を処理できていないため,オンライン停止
(凡例)
−:該当しない

(4) 注意事項