TSCサービス識別子の構成

TSCProxyObjectを使用して利用するサービスの種類は，TSCサービス識別子によって表されます。TSCサービス識別子は，インタフェース名称とTSCアクセプタ名称から構成されます。

• TSCProxyObjectのインタフェース名称
  TSCProxyObjectのインタフェース名称は，TSCProxyObjectを使用して呼び出すサービスのインタフェースの種類を表します。
  
• TSCProxyObjectのTSCアクセプタ名称
  TSCProxyObjectのTSCアクセプタ名称も，TSCProxyObjectを使用して呼び出すサービスのインタフェースの種類を表します。ただし，同じインタフェースを提供するサービスで，実装内容の違いを識別するために使用します。したがって，TSCアクセプタ名称を設定しないで，"TSCアクセプタ名称なし"とすることもできます。
  

サービスの種類の表現方法

TSCProxyObjectによって利用するサービスの種類は，TSCサービス識別子によって表されます。TSCサービス識別子は，インタフェース名称とTSCアクセプタ名称から構成されます。

• TSCAcceptorにTSCアクセプタ名称が設定されていない場合
  TSCProxyObjectが呼び出すサービスのインタフェースの種類は，次のように表されます。
  

   
  TSCアクセプタ名称なしTSCサービス識別子
   

• TSCAcceptorにTSCアクセプタ名称が設定されている場合
  TSCProxyObjectが呼び出すサービスの種類は，次のように表されます。
  

   
  TSCアクセプタ名称ありTSCサービス識別子

サービスの種類の表現例

• TSCProxyObjectのインタフェース名称が"ABC"で，TSCアクセプタ名称がない場合
  次のように表される場合，TSCProxyObjectは，"ABC::"への要求メッセージを生成し，"ABC::"としてサービスを提供しているTSCObjectとTSCAcceptorを呼び出せます。
  

   
  "ABC::"
   

  サーバアプリケーション側で，TSCProxyObjectに"ABC::"と指定してサービスを呼び出した場合，その要求を受け付けるTSCObjectとTSCAcceptorは，次に示すどちらかです。
  
  • インタフェース名称"ABC:"だけ指定されたTSCAcceptor，およびそのTSCAcceptorに管理されるTSCObject
  • インタフェース名称"ABC"と任意のTSCアクセプタ名称が指定されたTSCAcceptor，およびそのTSCAcceptorに管理されるTSCObject
  つまり，TSCProxyObjectでインタフェース名称だけ指定して呼び出した場合，サーバ側では，同じインタフェース名称を持つTSCAcceptorに管理されるすべてのTSCObjectが，TSCアクセプタ名称の値に関係なく呼び出されます。
  
• TSCProxyObjectのインタフェース名称が"ABC"で，TSCアクセプタ名称が"abc"の場合
  次のように表される場合，TSCProxyObjectは"ABC::abc"への要求メッセージを生成し，"ABC::abc"としてサービスを提供しているTSCObjectとTSCAcceptorを呼び出せます。
  

   
  "ABC::abc"
   

  サーバアプリケーション側で，TSCProxyObjectに"ABC::abc"と指定してサービスを呼び出した場合，その要求を受け付けるTSCObjectとTSCAcceptorは，インタフェース名称"ABC"とTSCアクセプタ名称"abc"が指定されたTSCAcceptor，およびそのTSCAcceptorに管理されるTSCObjectです。
  つまり，TSCProxyObjectにインタフェース名称とTSCアクセプタ名称を指定して呼び出した場合，サーバ側では，同じインタフェース名称と同じTSCアクセプタ名称を持つTSCAcceptorに管理されるTSCObjectが呼び出されるため，TSCアクセプタ名称によって呼び出すTSCObjectを選択できます。
  

 
class TSCProxyObject
{
 public:
  const char* _TSCInterfaceName();
  const char* _TSCAcceptorName();
 
  TSCInt _TSCTimeout();
  void _TSCTimeout(TSCInt timeout);
 
  TSCInt _TSCPriority();
  void _TSCPriority(TSCInt priority);
 
  TSCContext_ptr _TSCContext();
};

 
#include <tscproxy.h>

●const char* _TSCInterfaceName()

項目	型・意味
戻り値	インタフェース名称

インタフェース名称を取得します。

インタフェース名称のメモリ領域の管理責任はTSCProxyObjectクラスにあるので，ユーザは削除しないでください。

●const char* _TSCAcceptorName()

項目	型・意味
戻り値	TSCアクセプタ名称

TSCアクセプタ名称を取得します。

TSCアクセプタ名称のメモリ領域の管理責任はTSCProxyObjectクラスにあるので，ユーザは削除しないでください。

●TSCInt _TSCTimeout()

項目	型・意味（単位）
戻り値	タイムアウト時間（秒）

タイムアウト値（呼び出し時の監視時間）を取得します。

このメソッドを複数のスレッド上から同時に呼び出した場合，結果は保証されません。

●void _TSCTimeout(TSCInt timeout)

項目	型・意味（単位）
引数	TSCInt timeout	タイムアウト時間（秒）
戻り値	ありません。
例外	TSCBadParamException

タイムアウト値（呼び出し時の監視時間）を秒単位で設定します。"0"を指定した場合，時間監視をしません。監視時間は，メソッド呼び出しごとに変更できます。

アプリケーションプログラムの開始時に-TSCTimeOutオプションを指定しない場合は，監視時間のデフォルト値は"180"（秒）です。-TSCTimeOutオプションを指定する場合は，監視時間のデフォルト値は-TSCTimeOutオプションの指定値になります。

このメソッドを複数のスレッド上から同時に呼び出した場合，結果は保証されません。

●TSCInt TSCPriority()

項目	型・意味
戻り値	プライオリティ値

プライオリティ値（メソッド呼び出し時の優先順位）を取得します。

このメソッドを複数のスレッド上から同時に呼び出した場合，結果は保証されません。

●void _TSCPriority(TSCInt priority)

項目	型・意味
引数	TSCInt priority	プライオリティ値
戻り値	ありません。
例外	TSCBadParamException

プライオリティ値（メソッド呼び出し時の優先順位）を設定します。

priorityに1〜8の値を指定することで，キューイング取り出し時の優先順位を変更できます。priorityに指定する値が小さいほど優先度は高くなります。プライオリティ値はリクエスト単位に変更できます。

アプリケーションプログラムの開始時に-TSCRequestPriorityオプションを指定しない場合は，プライオリティ値のデフォルト値は"4"です。-TSCRequestPriorityオプションを指定する場合は，プライオリティ値のデフォルト値は-TSCRequestPriorityオプションの指定値になります。

このメソッドを複数のスレッド上から同時に呼び出した場合，結果は保証されません。

●TSCContext_ptr _TSCContext()

項目	型・意味
戻り値	TSCコンテキスト

TSCContextを取得します。

戻り値のTSCContextのメモリ領域の管理責任はTSCProxyObjectクラスにあるので，削除しないでください。

なお，このメソッドを複数のスレッド上から同時に呼び出すことはできません。

マルチスレッド環境で，TSCProxyObjectクラスのインスタンスのメソッドを呼び出す規則を次に示します。

メソッド	複数のスレッド上からの同時呼び出し
_TSCInterfaceName	〇
_TSCAcceptorName	〇
_TSCTimeout()	○
_TSCTimeout(TSCInt)	×
_TSCPriority()	○
_TSCPriority(TSCInt)	×
_TSCContext	×
クライアント側からのオブジェクト呼び出し	×

（凡例）

○：できます。

×：できません。

TSCProxyObjectクラスのインスタンスがほかのクラスのインスタンスを内部参照（アクセス）する規則を次に示します。

メソッド	複数のスレッド上からの内部参照
_TSCInterfaceName	ありません。
_TSCAcceptorName	ありません。
_TSCTimeout()	ありません。
_TSCTimeout(TSCInt)	ありません。
_TSCPriority()	ありません。
_TSCPriority(TSCInt)	ありません。
_TSCContext	ありません。
クライアント側からのオブジェクト呼び出し	生成時に指定したTSCClient型のインスタンス