2.5.1 文書配布機能とは

<この項の構成>
(1) 文書配布機能の概要
(2) 文書配布機能による文書の配布
(3) 配布された文書に対する操作

(1) 文書配布機能の概要

Document Managerでは,あるサーバで管理している一般文書の複製を別のサーバに配布することによって複数のサーバ間で共用できます。この機能を文書配布機能といいます。

文書配布機能では,圧縮した一般文書も配布できます。これによって,ファイルの転送時間を短縮できます。

文書配布機能の利点を次に示します。

(a) 特定サーバへのアクセスの集中を緩和できる

Document Managerでは,複数のサーバに複数のクライアントというシステム構成での運用が考えられます。それぞれのサーバには,利用目的ごとに文書が保存されています。このような状況では,特定のサーバにアクセスが集中することが考えられます。文書配布機能を利用して,アクセスが集中する文書を各サーバへ配布するとサーバの性能低下を防げます。

(b) 文書の更新は配布元のサーバだけで済む

複数のサーバ間で文書の共有ができなければ,必要な文書は各サーバで管理しなければなりません。文書が大量になる程,メンテナンスに使う時間は増え,資源も有効に利用できません。

しかし,文書によってはユーザ間での共有を目的としている文書,つまり参照するだけの文書があります。このような文書は,あるサーバで一括管理し,ほかのサーバには必要に応じて,文書配布機能を使用して配布します。文書配布機能を使用して各サーバに配布される文書は,配布元のサーバのコピーです。したがって,必要なときに配布元のサーバで1回文書を更新すればよいことになります。

(2) 文書配布機能による文書の配布

(a) 配布の仕組み

文書配布機能では,文書を配布する側のサーバを配布元サーバといい,文書を配布される側のサーバを配布先サーバといいます。

文書を配布するには,配布元サーバで管理している文書のうち,配布する文書をグループ化しておきます。このグループを文書配布対象グループといいます。

配布元サーバは,ある文書配布対象グループに対してユーザの配布要求があると,該当する文書実体ファイルとそれに関連するファイルをDocument Managerデータベースから抽出し,配布用のファイルを作成します。この配布用のファイルをエクスポートファイルといいます。エクスポートファイルは,メールシステムによって,配布元サーバから配布先サーバへと送信されます。

配布先サーバは,配布されたエクスポートファイルから文書実体ファイルを取り出し,配布元サーバ側と同じ名称の一般文書データベースに文書を格納します。同様に,配布元サーバ側と同じ名称のフォルダ及び分類索引にも文書を登録します。

サーバ間での文書配布の仕組みについて,図2-7に示します。

図2-7 サーバ間での文書配布の仕組み

[図データ]

(b) 配布の対象

文書配布機能によって配布できるのは,一般文書だけです。フォルダ,分類索引及び文書データベースなどの文書の分類体系及びフォーム文書は配布できません。

なお,一般文書は圧縮した状態でも配布できます。

前回配布要求したバージョン(版)より現在のバージョンの方が大きい場合,存在する最も新しいバージョン,かつ,前回配布要求したバージョンより大きいバージョンを配布します。

(c) 配布の単位

文書を配布する場合,文書配布対象グループが配布の単位となります。配布元サーバで管理している文書のうち,配布する文書を文書配布対象グループとしてグループ化しておきます。

文書配布対象グループは,1サーバ内に複数,作成できます。また,配布先のサーバは,文書配布対象グループごとに設定できます。

文書配布対象グループの作成は,次の2通りの方法があります。

(d) 配布対象にする文書の追加及び削除

配布文書追加・削除ユティリティを使うと,一般文書データベース,分類索引又はフォルダに登録されている文書を,文書配布対象グループに登録して配布できます。

文書配布対象グループに文書を追加又は削除するには,文書配布対象グループ更新用として作成した一般文書データベース,分類索引又はフォルダに文書を追加又は削除します。次に,配布文書追加・削除ユティリティを実行し,文書配布対象グループの更新及び文書の配布をします。

文書配布対象グループに文書を追加する例を示します。

  1. 「配布用文書」という分類索引をあらかじめ作成しておく
  2. 文書配布対象グループに所属するすべての文書を,先に作成した分類索引「配布用文書」にリンクする
  3. 文書配布対象グループに文書を追加する場合は,分類索引「配布用文書」に文書を追加する
  4. システム管理者が配布文書追加・削除ユティリティを実行する
  5. 文書配布対象グループに文書が追加され,文書が配布される

配布文書追加・削除ユティリティについては,「8.16 文書配布対象の追加又は削除(ISadddoc)」を参照してください。

(e) 配布対象の抽出とエクスポートファイルの作成

Document Manager Client又は配布文書追加・削除ユティリティを使った文書の配布要求があると,配布元サーバは該当する文書を文書データベースから抽出し,次のファイルで構成されるエクスポートファイルを作成します。×××の部分は,文書配布対象グループ名にタイムスタンプが付加された文字列です。タイムスタンプは,エクスポートファイル作成時の年月日時分秒がYYYYMMDDhhmmssの形式で付加されます。

エクスポートファイルは,一つの文書配布対象グループに対する1回の配布要求ごとに,1組作成されます。作成される場所は,配布元サーバの作業ディレクトリ(/usr/infoshare/replica/export/(文書配布グループのオブジェクトID))の下です。

なお,配布対象の文書中にバージョン管理されている文書が含まれている場合,最も新しいバージョンの文書を対象にエクスポートファイルが作成されます。また,エクスポートファイルを作成済みの文書配布対象グループに対して,再度配布要求をした場合,前回のエクスポートファイル作成時から更新された文書(※1)又は削除された文書(※2)だけが抽出されます。

注※1 編集モードで取り出し,登録した文書を指します。

注※2 バージョンのみの削除ではなく,文書実体ファイルと属性を含む文書の削除を指します。

(f) エクスポートファイルの配布

(g) 配布した文書の状態の表示

メールシステムと連携して文書配布を行う場合,文書の配布状態表示ユティリティを使用できます。

文書の配布状態表示ユティリティを使用すると,配布した文書(エクスポートファイル)の配布状態(配信中,取り込み成功,取り込み失敗)を配布元サーバから確認できます。文書の配布状態表示ユティリティについては,「8.17 文書の配布状態表示(ISrpstat)」を参照してください。

また,配布先でエラーが発生した場合,エラーの要因を取り除いた後に文書再配布ユティリティを使用すると,文書を再配布できます。文書再配布ユティリティについては,「8.18 文書の再配布機能(ISrprsnd)」を参照してください。

また,環境設定ファイルでの定義によって,文書配布が正常終了したことを確認した時点で,エクスポートファイルを自動的に削除できます。

環境設定ファイルについては,「5.7 Document Managerでの環境設定」を参照してください。

(3) 配布された文書に対する操作

文書配布機能によって,配布先サーバに配布された文書を配布文書といいます。これに対し,配布元サーバの文書をオリジナル文書といいます。

配布文書に対しては,次に示す操作だけを実行できます。

ただし,Document Manager管理者は,上記の操作以外に配布文書を削除することもできます。