3.2.2 OSI拡張機能のシステムパラメタ定義文

<この項の構成>
(1) 機能
(2) 定義条件
(3) 書き方
(4) オペランド
(5) 注意事項
(6) 定義文例

(1) 機能

OSI拡張機能で使用する共通情報を定義します。この定義は「OSI拡張機能のゲートウェイ定義」と同様に,テキストファイルにエディタ(viなど)で設定し,「OSI拡張機能のシステムパラメタ定義登録コマンド」で登録します。

この定義は省略できます。OSI拡張機能のシステムパラメタ定義文を格納したOSI拡張機能のシステムパラメタ定義ファイルの格納位置は任意です。

OSI拡張機能のシステムパラメタ定義登録コマンドについては,マニュアル「XNF/AS 解説・運用編」を参照してください。

なお,OSI拡張機能の共通情報は,XNF/AS構成定義のTPTCP_define文で指定することもできます。TPTCP_define文で指定する方法については,「2.2.27 TPTCP_define(OSI拡張機能用情報定義文)」を参照してください。

(2) 定義条件

OSI拡張機能のシステムパラメタ定義ファイルに対して,1回定義します。

(3) 書き方

[最大TPDU長]:[TS1タイマ値]:[Nagleアルゴリズム無効化]:[遅延ACK無効化]:
[受信バッファサイズ]:[送信バッファサイズ]:
[キープアライブ]:[キープアライブ再送回数]:[キープアライブ送信間隔]:
[キープアライブ再送間隔];

(4) オペランド

説明中で出てくるOSの設定については,AIXのマニュアルを参照してください。

(a) 最大TPDU長

~<10進数>((128,256,512,1024,2048,65531))《65531》

OSI拡張機能で使用する,最大TPDU長(バイト)を指定します。

このオペランドの指定値は,OSI拡張高信頼化機能でも有効になります。

(b) TS1タイマ値

~<10進数>((10~3600))《60》

OSI拡張機能で使用する,TS1タイマ値(秒)を指定します。

このオペランドの指定値は,OSI拡張高信頼化機能でも有効になります。

(c) Nagleアルゴリズム無効化

~((yes,no))《no》

OSの機能であるTCPのNagleアルゴリズムを無効にするかどうかを指定します。

OSI拡張高信頼化機能を使用する場合には,TPTCP_common文のtcp_nodelayオペランドの指定値が有効になります。

Nagleアルゴリズムは,小さなデータしか送信しない場合にデータをすぐに送信しないで,幾つかのデータを一つのパケットにまとめてから送信する機能です。Nagleアルゴリズムについては,AIXのマニュアルを参照してください。

yes:
Nagleアルゴリズムを無効にします。データをまとめないでそのまますぐに送信するため,送信済みデータが応答待ちの状態になっても,遅延させることなくデータを送信できます。ただし,通信時の送信効率が低下して,ネットワークのトラフィックが増加するおそれがあります。
no:
Nagleアルゴリズムを無効にしません。ただし,OSの設定でNagleアルゴリズムを無効にしている場合は,noを指定しても無効になります。
(d) 遅延ACK無効化

~((yes,no))《no》

OSの機能であるTCPの遅延ACKを無効にするかどうかを指定します。

OSI拡張高信頼化機能を使用する場合には,TPTCP_common文のtcp_nodelayackオペランドの指定値が有効となります。

遅延ACKは,受信バッファのサイズに対して受信したデータが小さいと,データを受信してもすぐにACKを返信しない機能です。遅延ACKについては,AIXのマニュアルを参照してください。

yes:
遅延ACKを無効にします。受信バッファのサイズに対して受信したデータが小さくても,データを受信すると直ちにACKを返信するため,レスポンスが向上することがあります。ただし,通信時の送信効率が低下して,ネットワークのトラフィックが増加するおそれがあります。
no:
遅延ACKを無効にしません。ただし,OSの設定で遅延ACKを無効にしている場合は,noを指定しても無効になります。
(e) 受信バッファサイズ

~<10進数> ((128~1048576))《OS設定値》

ソケットの受信バッファサイズ(バイト)を指定します。32768バイトが推奨値です。

OSI拡張高信頼化機能を使用する場合にはTPTCP_common文のreceive_buffer_sizeオペランドに指定した受信バッファサイズが使用されます。

(f) 送信バッファサイズ

~<10進数> ((128~1048576))

ソケットの送信バッファサイズ(バイト)を指定します。指定を省略した場合のデフォルト値を表3-3に示します。

表3-3 指定を省略した場合のデフォルト値

OS設定値(バイト)デフォルト値(バイト)
32767以下32768
32768以上OS設定値

OSI拡張高信頼化機能を使用する場合には,TPTCP_common文のsend_buffer_sizeオペランドに指定した送信バッファサイズが使用されます。

(g) キープアライブ

~((on,off))《on》

キープアライブ機能によるデータパケットを送信するかどうかを指定します。

OSI拡張高信頼化機能には,適用されません。OSI拡張高信頼化機能を使用する場合には,TPTCP_common文のpatrol_timeオペランドの指定値(パスの生存監視時間)で監視します。

on:
キープアライブ機能によるデータパケットを送信します。
off:
キープアライブ機能によるデータパケットを送信しません。
(h) キープアライブ再送回数

~<10進数>((1~255))《OS設定値》

キープアライブ機能によるデータパケットを送信後,応答がなかった場合に再送する回数を指定します。

OSI拡張高信頼化機能には,適用されません。

(i) キープアライブ送信間隔

~<10進数>((1~7200))《OS設定値》

TCP接続のセションが確立された状態で,通信しなくなったときからキープアライブ機能によるデータパケットを送信するまでの時間を秒単位で指定します。

OSI拡張高信頼化機能には,適用されません。

(j) キープアライブ再送間隔

~<10進数>((1~255))《OS設定値》

キープアライブ機能によるデータパケットを送信後,応答がなかった場合の再送間隔を秒単位で指定します。

OSI拡張高信頼化機能には,適用されません。

(5) 注意事項

  1. 障害などによって通信が切断された場合,ソケットのバッファに滞留されていたデータは破棄されます。ソケットの送信・受信バッファサイズを小さくすることによって,滞留するデータ数を減らせますが,小さ過ぎるとスループット性能は低下します。
  2. イーサネット・アダプタ特性項目の「TCP大容量送信オフロード」が有効になっている場合,ソケットの送信バッファサイズに65535バイト未満を指定しても,有効になりません。有効にするためには,「TCP大容量送信オフロード」を無効にしてください。イーサネット・アダプタ特性の設定を変更する手順については,AIXのマニュアルを参照してください。
    設定値は,"lsattr -El イーサネットデバイス名称 -a large_send"で確認できます。
    設定値が"no"になっている場合,またはlarge_send属性が存在しない場合は設定を変更する必要はありません。

(6) 定義文例

OSI拡張機能のシステムパラメタ定義の記述例を次に示します。